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    どむさぶのクル監、進捗

    1900文字ぐらい

    #クル監
    wardenOfABuddhistTemple

     デイヴィス・クルーウェルには悩みがある。
     そう口にすれば、憎たらしい学園長が厭味を放つので、絶対に口にしないと就職前、学生の頃から決めている。付き合いが長いとそんなものだ。
     そんな学園長はさておき、クルーウェルは今日も今日とて悩んでいる。まあ簡単に言えば、可愛い仔犬が懐かない点である。
     嫌われていないのは確かだが、懐いてもいない。良くも悪くも普通、と見て分かる。こっちは本気で好きなのに、愛が一方通行なのは悩ましい話だった。
     と、唯一『頓珍漢』なことも『厭味』も言わない上に、同僚ではあるが立場が違う人物、サムに言えば、充分懐いていると思うと返された。 違う。尊敬しているのは嬉しいが、他の教員と同じなのは悲しい。

     「いや、クルーウェル先生、欲が強すぎないかい?」
     「上を目指さなくてどうする」
     「方向性がなー」

     そんな話をしていると、客が近寄ったらしく、クルーウェルは急いで隠れた。別にクルーウェルがいたとしても問題はないのだが、生徒たちに嫌そうな顔をされるのは避けたい。
     まあ、それにクルーウェルも学生の頃、プライベートに教師に会うのは嫌だったので気持ちは分かる。

     「サムさん、こんにちは」
     「やあ、小鬼ちゃん! 何か欲しいモノでもあるのかな?」

     声で、先程話していた生徒――監督生だと分かった。監督生はいくつかの商品を見ていて、サムが時折突拍子もない商品を口にすれば、しっかりと断っていた。

     「小鬼ちゃんは、オレのお勧め買ってくれないね」
     「お金があったら買いたいモノばかりですよ」

     と言っているが、実際にはお金は学園長からしっかり貰っていた。ただ単に、面倒なのでそう答えている。

     「例えば?」
     「そうですね。メイク道具とか?」
     「そう言えば小鬼ちゃんはメイクしないね」
     「メイクしたこと無いので」

     あったとしても色つきリップですかね、と苦笑する監督生。
     それを聞いた男が黙っているわけがなかった。

     「初耳なんだが!?」
     「きゃ――――っ!? ど、ど、どこにいるんですか!?」
     「カウンターの下」
     「そういうことではなくてですね……」

     これが全く交流の無い男だったならば気絶していた。いや、知り合いでも十分気絶しそうだが。が、オーバーブロット事件に巻き込まれている少女は、ちょっとだけ我慢できた。

     「ここの化粧品は質が良いわけじゃないからな……」
     「そりゃ緊急用として置いてるだけだからね。質の良いのが欲しいならネット通販を利用して欲しいな」
     「何故メイクの話になっているんですか?」

     腰が抜けたので、サムに起こしてもらいながら、ご尤もな疑問を口にする。

     「メイクは……む……? なんだ、このモチモチの肌!」
     「米のとぎ汁で洗顔してるだけですけど……」
     「若さとは羨ましいことだな……日焼け止めは?」
     「してませんけど」

     むにむに、と頬を掴む。セクハラと言いたい気持ちはあったけれど、そんなつもりではないのは目を見れば分かるので放置する。どうせ飽きたら放してくれるだろう。

     「サム! 今から言う材料を準備しろ!」
     「いつものだろ? IN STOCK NOW!」

     サムは分かっているようだった。が、唐突な展開に監督生は理解できない。

     「いや、可笑しい。なんで当事者が蚊帳の外なんですか?」
     「この後は空いてるな。今すぐ俺の部屋に行くぞ」
     「訳が分からなくて逆に笑う」

     と言いながら、監督生の目は死んでいた。

     「クリームとスプレー、どっちが良いだろうか……俺としてはクリームを推奨する」
     「私、日焼け止めならスプレー派なのですが」
     「だが、ベースのことも考えると……ふむ、まずは監督生の肌質も考えて……」
     「あ、これ聞くつもり無いですね」

     監督生はその日、何度もクリームとスプレーをかけられたせいで、全身がベトベトすると思いながら寮に帰る事になる。

     「化粧水も作ってやるから安心しろ」
     「米のとぎ汁を無駄に捨てろと言うのですか」
     「皿洗いにでも使っておけ」

     後日、化粧水はとぎ汁だと聞いたポムフィオーレの生徒が監督生に説教するのだけど、それは別の話だ。


     *


     サブドロップすることが減ってから、そして様々な抱えていることが無くなってからか、監督生は性格が明るくなっていた。前の彼女なら、エースと組んでいるからと言ってクルーウェルに勝負を仕掛けなかったことから、恐らく今の彼女が、本来の明るさなのだろう。
     ちゃんと知識を与えられて育っていたならば、彼女は明るい女の子だったはずだ。
     そして、この閉鎖空間で、明るい女の子に恋をする生徒がいてもおかしな話ではなかった。

     「あの、そ、卒業したら僕とパートナーになってくれませんか!」
     「私、Dom好きじゃないから無理です、ごめんなさい」

     監督生にとってDomはトラウマだ。多少平気になったとしても、トラウマである。
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    DOODLEどむさぶのクル監、進捗

    1900文字ぐらい
     デイヴィス・クルーウェルには悩みがある。
     そう口にすれば、憎たらしい学園長が厭味を放つので、絶対に口にしないと就職前、学生の頃から決めている。付き合いが長いとそんなものだ。
     そんな学園長はさておき、クルーウェルは今日も今日とて悩んでいる。まあ簡単に言えば、可愛い仔犬が懐かない点である。
     嫌われていないのは確かだが、懐いてもいない。良くも悪くも普通、と見て分かる。こっちは本気で好きなのに、愛が一方通行なのは悩ましい話だった。
     と、唯一『頓珍漢』なことも『厭味』も言わない上に、同僚ではあるが立場が違う人物、サムに言えば、充分懐いていると思うと返された。 違う。尊敬しているのは嬉しいが、他の教員と同じなのは悲しい。

     「いや、クルーウェル先生、欲が強すぎないかい?」
     「上を目指さなくてどうする」
     「方向性がなー」

     そんな話をしていると、客が近寄ったらしく、クルーウェルは急いで隠れた。別にクルーウェルがいたとしても問題はないのだが、生徒たちに嫌そうな顔をされるのは避けたい。
     まあ、それにクルーウェルも学生の頃、プライベートに教師に会うのは嫌だったので気持ちは分かる。

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