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    psychimma

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    psychimma

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    ワンドロのお題佐藤くんで書こうと思ってたけど鳥の話ばかりになってしまったので没になったもの 高3鳥+斉 なかよし話

    「……」
     休み時間。
     高3の春なんて人生で一番きらびやかであざやかで貴重なそのひとときをまったく無為に浪費しながら、廊下からじとりと教室の中を観察する男が一人。
     その一見すると非常に悪目立ちしそうな、けれどこの世界では普通過ぎてすっかり風景に溶け込んでしまう、けれどその実とんでもなく非日常な力を持った超能力者は、談笑する生徒の群れを眺めながら臍を噛んだ。
     その胸に宿るのはささやかで切なる願い。
    (……ああ、僕も佐藤君と話したい……!)

     それで次の休み時間。
    ――鳥束、相談があるんだが……。
     と神妙な顔して話しかけてきた斉木に、まくった袖からじゃらじゃらと数珠のアクセサリーを覗かせて、早弁しながらエロ本を読むという平然とルールを逸脱しまくった霊能力者は、ポロリと箸を取り落とした。
     だって……、
    (さ、斉木さんがオレに相談……!?)
     無敵の超能力者が、わざわざ自分に頼るこということは……!?
     考えるまでもなく、答えはすぐに導き出された。周囲を見渡してから、身体を伸ばして耳打ち。
    「……次は誰ヤっちゃったんスか……?」
     ちげえよ、というツッコミがいつもの鋭さをほんのすこしだけ翳らせていたのは、おそらく心当たりがなくもないからだったと思う。
     ……で、曰く。
    「なるほどあのフツー君と……確かにクラス一緒になれませんでしたしね~」
     誰を石化させたからでも身代わりをやれでもなく、飛び出してきたありきたりな名前と願いに、鳥束は食べかけの弁当の蓋を閉めて神妙な顔で腕組みした。
     椅子を借りるまでもなく隣の席の斉木は、手のひらを膝の上で握り締めながら、伏目がちに哀愁漂うテレパシーを流してくる。
    ――僕にとっての佐藤くんは憧れ……できれば最後まで変わらないでほしい……。むしろ僕と関わることで周りの変なヤツらに毒されて変わってしまうかもしれない……。だから今まで我慢していた……しかし、僕にはもう時間が……!
    「……。まあ卒業したらそれこそ会えませんしね」
    ――そうだ。あんなに普通な男とはもう一生会えないかもしれない……、ああ、普通ゴッド、佐藤君……!
    (普通ゴッドっで何だよ……)
     佐藤に関しては斉木も相当ヘンだけど、とは命が惜しいので鳥束は言わなかった。
     ……で、つまり。斉木はあの普通とベタの権化たる佐藤と話したくて仕方なくて、相談を持ちかけてきた。つまり間を取り持て……いうことなのだろうか? ……面白くなさそう。
     鳥束の表情がしおしおと萎びていく。ならまだ誰かに成り代わるほうがマシだったかもしれない。なんせ燃堂に成り代わった時はめちゃくちゃキレーなお姉さんとお食事ができたりしたわけだし……。
     それが何だって? 相手は平凡中の平凡の、しかもこともあろうにオレのひーちゃんにコナ掛けてるモブ男? うーん……。
     正直まったく気は乗らない。でも、まあ……、
    (……ま、斉木さんに借り作れるならいいか……最近気になってる女子いるしな〜!!)
     鳥束零太、『やり直し』も含めて六年くらい目の前の人に頭の中身をダダ漏れに読まれていたとは思えない思考回路だが、そのよく言えば飾らなさが彼の長所……なのかもしれない。
    ――だが、僕は最高のチャンスを手に入れたんだ。
    「えーー、エ!?」
     だし、今日ばかりはそのダダ漏れ脳内も斉木の耳には届いていなかったようで。
     続いた声に意識を戻して、次に口からこぼれたのはまぬけな驚きだった。
     だって! いつの間にか斉木の緑のめがねの中のいつも死んだような瞳は、なぜだか窓の外の萌えはじめの新芽のようにキラキラと輝いていたのだから……、え、ホントどうした!?
     そしてその瑞々しい瞳と共にポケットから取り出したのは……、
    「なんスか? 消しゴム……?」
     問えばああ、と頷かれる。
    ――前に一緒にバンドをやっていた男がいただろう、夢原さんの元カレの。
    「ああ、篠原?」
    ――篠田だ。彼の消しゴムだ。拾ったから返しに行く。それでお前の出番だ。
    「オレっスか?」
    ーーああ。まずは佐藤くんを呼ぶんだ。
    「ふむ」
    ーーそれで僕が篠田の消しゴムを拾ったと言って渡してもらう。どうだ、自然で完璧な作戦だろう?
    「なるほどなるほど……、……?」
     自信まんまんなテレパシーを聴きながらふむふむと上下していた頭が、ふと止まった。
    「……え、ソレ篠田の消しゴムなんですよね?」
    ーーそうだが。
    「や、なら直接篠田に渡しましょうよ。二人とも同じクラスでしょ」
    ーー何? 直接返したら佐藤くんと話せないだろう。
    「いやでもオレ篠田ともクラスメイトだったし……なんで人介すんだってなるでしょ。話すだけなら別に他のことでも……」
     それは彼にしては非常に真っ当なツッコミであった。がーー、
     目の前の斉木の顔は見る間に歪んで、挙句そのままふいと逸らされた鼻先から、チッと舌打ちまで足されてーー、
     なんだ? 知恵の実でも食べたか? 女子と話すでゴネると思ったからスルーして体育の後の休み時間にしようと思ってたのに……。などと続いたので、さすがに鳥束も「オレのこと原始人とか思ってます!?」と更なる突っ込みを入れざるを得なかった。
     はー。ガシガシと後頭部を掻く。まったく、この人はあの普通男が関わった時だけポンコツになるのだから……。
     チラ、視線を落とした先には机の上に転がるありきたりな形の消しゴム。
    「てかそもそもその消しゴム、名前とか書いてないしその辺で売ってるやつですよね。サイコメトリーしたんでしょうけど、それ説明しないでこれ篠田のって言うのは無理ありません?」
    ーーいや、それは大丈夫だ。
     またそれも、非常に真っ当なツッコミだった。
     しかしそれには動じずに、斉木は消しゴムを拾っておもむろに紙製のカバーを外していく。
     そして……、
    「ゲッ」
     そこに現れたサインペン製の『夢原知予』の文字に、鳥束の頬に冷や汗が流れた。
     れ、令和のこの世にもまだ残っていたのかよ、このベタベタなおまじない……!
     ワア……。言葉を失う鳥束に、超能力者は我が意を得たりとばかりに笑ってみせた。
    ーーお前は夢原さんと篠田が付き合っていたことも知っているしな。僕が見てしまって鳥束に相談し、察して届けてやったとなれば筋が通っているだろう?
    「いやじゃあますますヒト介すの鬼畜じゃないっスか! どーやってそっから篠田に回すんスか! 知っちゃったオレもなんか気まずいし! いつも通り名前を出さないヒーローとしてアポートとかしてやってくださいよ!」
     知予があの中二君にゾッコンなのは知っている、自分相手ならともかく篠田に脈はなさそうだし、その上人を介すことで他人にバレるリスクが増えるとか流石に可哀想である。ていうか友達の恋のおまじない事情とか知りなくなかったし……。
     さすがの正論だった。『う』とにぶいテレパシーのあと、斉木は押し黙ってしまった。
     消しゴムをいじいじと触っていた指が、ぎゅっと丸まる。顔が上がって。
     お、なんだ、次は逆ギレか? と、また心中を読まれていたら本当にキレられそうなことを思いかけた、その時。
    ーーで、でもそれじゃ、また佐藤君と話せないじゃないか……!
     見えた顔は、ポーカーフェイスの超能力者の名折れ、眉根が寄って不安げな、彼らしくもないものだった。
    (……あ、もうこれ、完全に好きな先輩との接点をなんとしてでも欲しがる女子じゃん……)
     そんな相談を女子から受けたことはなかったが、本能的に鳥束は理解した。
     ……。
     ……はー。
    「!」
     彼はかしこい男だ。自分の言っていることがちょっとばかり筋が通らないことは自分でわかっているのだろう。ため息をつけば、ピク、と肩が震えた。
     そんなビクつく超能力者は、ちょっと面白いけれど。
    「わかりました」
    ーー……何がだ?
     置き去りにされた消しゴムを拾い上げながら言えば、さらに瞳が揺らぐ。それを見ながら、手のひらの上に乗せて、差し出して。
    「やっぱりこれはアポートしてやってください。可哀想なんで」
    「……」
     じっと目を見てらしくもなくまじめに言えば、けして人の心がわからない人ではないのだ、超能力者はぐぬぬとためらったあとで、けれど、『わかった……』と頷いてくれた。
     よし。となればあとは思いつき通りだ!
    「ありがとうございます。でも! 代わりに斉木さんには貸しがひとつできました」
    ーーえ?
     急に明るい声を出した鳥束に、メガネの中の瞳がキョトンと丸まるがお構いなしだ。
    「篠田はバンドもしたし一瞬とは言え同じ相手に恋した、いわば戦友みたいな存在ですからね。篠田への貸しはオレの貸しも同然っス」
    ーー名前忘れてたくせに……。
    「男の名前は覚えないんですよ!! で!」
     痛いツッコミもお構いなしだ! 代わりに立ち上がって、びし、と指をさす。
    「だから斉木さんに借り返します。さ、立って。行きますよ」
    ーーは、……!
     言われたままに立ち上がって、踵を返した鳥束を追って歩を進めながらえ、どこに? みたいな顔していた超能力者が、ついに前をゆく男の脳内を読みとって、はっと立ち止まった。
    「そーです! 佐藤の所っス。なんか適当に用作れば話すくらいはできるでしょ。オレが話しかけてやりますからその後は頼みますんで」
     それで、チャラってことで。振り向いてニッと笑う。
     その行動は、結構この作中でクズとかゲスとか言われまくっていた鳥束にしては珍しいものだった。当初の目的だった貸しを作るからむしろ逆になっているし。たとえ篠田が恥ずかしい思いをしようとも、面倒だから別に言う通りにしてしまえばよかったのだ。
     だけど、今日はそうしなかった。今だって勉強より人付き合いより睡眠と三度のメシのが遥かに好きで、それより性欲と女の子の方が比べるべくもなく勝っている彼だけど、篠田とは繰り返す世界の中でなんだかんだ一緒に行動することは多かったし、目の前の超能力者に至っては、コミックスで26巻ぶん、エピソードにはこと欠かないわけで……。
     まあ、今日くらいは付き合ってやるか。そんな気まぐれが起きるくらいには、もしかしたら鳥束にも変化があったのかもしれない。
     などと、微笑みながらだいぶんさわやかな気持ちでいたのだけれど。
    ーーい、嫌だ。
    「はあ?」
     返ってきたのはまさかの非承諾だった。見れば斉木は見たことない真剣な表情をしていた。さらに、怯えたようにちいさくなって。
    ーーて、適当な用って……簡単に言うがそれが佐藤くん的に普通じゃなかったらどうするんだ!? ただでさえ2度目の佐藤くんχで下校時にちょっと変って思われてるんだし、これ以上変って思われたり、あまつさえ避けられたりしたら生きていけない……!
     そしてそのまま頭を抱えてしゃがみ込んでしまったので……。この唯我独尊男にここまでさせる佐藤という男、実はラスボスなんじゃないか?
    「……。じゃあやめますか?」
     爽やかだった心にピシリとヒビが入っていくのを感じつつ、見下ろしながら問う。
     視線の先で、ピンクの頭がふるふると振られる。
    ーーそれもヤダ……。
    「じゃどーすんスか!」
    ーー友達居ない僕にわかるか! お前が考えろ!
    「は〜ここで逆ギレっスか!?」
     め、め、めんどくせえ〜!
     ちょっと男の友情も悪くないかな……とか思っていた鳥束は、数分でその認識を改めることになったのであった。

    「斉木と鳥束って意外と仲良いよな。やっぱ部活繋がりか?」
    「いや、部活はほとんど活動してないけど……」
    「そーなのか? まあでも、ダチっつーのは良いもんだよなぁ」
     そんなふたりのやりとりを、ほのぼの見られていることには気づかぬまま……休み時間という短い青春の1ページは、無情にもチャイムによってエンドマークがつけられてしまったのであった。

    おしまい!
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    psychimma

    REHABILIトランプネタかんがえてるときに出てきた鳥斉 あんまりトランプネタ関係なくなっちゃった…いつものように付き合ってだいぶ経ってます「じゃあトランプで決めましょう、斉木さん!」
    ーートランプ?
     言い返す僕の眉根があんまりにも寄ってしまったことに、元気に提案した鳥束は「そんな嫌そうな顔しなくても……」と笑みをほろ苦く変えて頬をかいた。
     休日の昼下がり。簡単なランチを終えて、これから家で映画を見るにあたってコンビニにお茶請けを買いに行くが、どら焼きのあんこはつぶあん派かこしあん派か、などということから始まった実にくだらない論争だった。二人で暮らし始めて半年、こんなのは実にありふれた趣味嗜好の差で、僕らにとっては本来言い争いのうちにも入らないレベルのものだ。だって僕たち成人男子だし、どら焼きなんかひとりひとつ買えよって感じなのに、分ける前提で話しているのがその証拠、単なるじゃれあいの延長で。
     いつもなら鳥束が折れる。ことスイーツに関して僕の方が一家言あるのは明らかだったし、向こうはそもそもそんなに拘りがないので。それがいつもよりすこし長引いたのは相手が和菓子で腐っても寺の息子だったのかということと、そして、おそらくこちらがメインだが……トランプをするよう誘導すること自体が彼の目的だったとそういうことだろう。
     …… 1978

    psychimma

    DOODLE過去にモブ空描写ありの信空、空の語る三大欲求などの話、書きかけの散文、R15くらい。全体的にどんよりとしています。でも続きは明るいのでは…まことくんがでてくるので…(信頼)食欲も、睡眠欲も、性欲も、生まれつきこの身のうちには存在しないようなものだった。まるで赤ん坊の時にコウノトリが運ぶ袋の中からそれだけ取り落としてしまったみたいに。
    だけど僕は知っている。人間はコウノトリが運んでくるわけでもキャベツ畑から発見されるわけではないことを。
    まあ、あんまり両親とは似てないから、生まれてすぐの記憶がなかったら血縁関係は疑ってしまっていたかもしれないけどね。
    食欲は、とりあえず。ママの作る食事を残すのは悪かったし、別になんだって嫌いなわけではないのだ。ただすこし夢中になると優先順位が低くなってしまうだけで。でも人間だって結局動力のいる機関だから、必要な分は摂っていた。
    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
    睡眠欲は。これは僕の体質が幸いして、あまり問題にはならなかった。いわゆるショートスリーパーというやつ。とはいえもちろん全く寝なくても大丈夫というわけではないけどね。え、平均十七分?あ〜あれはちょっと平均を取られたのが開発の佳境だっただけで、普段はもう少し寝てるよ。
    だけど暇があったら眠りたい、とか、朝ベッドから出たくないと 2656

    psychimma

    MOURNINGワンドロのお題佐藤くんで書こうと思ってたけど鳥の話ばかりになってしまったので没になったもの 高3鳥+斉 なかよし話「……」
     休み時間。
     高3の春なんて人生で一番きらびやかであざやかで貴重なそのひとときをまったく無為に浪費しながら、廊下からじとりと教室の中を観察する男が一人。
     その一見すると非常に悪目立ちしそうな、けれどこの世界では普通過ぎてすっかり風景に溶け込んでしまう、けれどその実とんでもなく非日常な力を持った超能力者は、談笑する生徒の群れを眺めながら臍を噛んだ。
     その胸に宿るのはささやかで切なる願い。
    (……ああ、僕も佐藤君と話したい……!)

     それで次の休み時間。
    ――鳥束、相談があるんだが……。
     と神妙な顔して話しかけてきた斉木に、まくった袖からじゃらじゃらと数珠のアクセサリーを覗かせて、早弁しながらエロ本を読むという平然とルールを逸脱しまくった霊能力者は、ポロリと箸を取り落とした。
     だって……、
    (さ、斉木さんがオレに相談……!?)
     無敵の超能力者が、わざわざ自分に頼るこということは……!?
     考えるまでもなく、答えはすぐに導き出された。周囲を見渡してから、身体を伸ばして耳打ち。
    「……次は誰ヤっちゃったんスか……?」
     ちげえよ、というツッコミがいつもの鋭さをほんのすこ 4868

    psychimma

    MAIKING分裂ネタのらくがき(鳥斉)「斉木さん!!!一生のお願いがあるんスけど!!!」
     久々に聞いたなソレ。いつもの返しした方がいいのか? お前の一生は……、
    「これをやって欲しいんスけど!!」
     お前の一生は、いったい何度あるんだ。
     ……という、お決まりの台詞すら言い切らせないせっかちさで、僕の目の前に差し出されたのは開かれた雑誌であった。えーと、なになに……、
     それはまあ、鳥束が持っている本の形をした物といえば誰もが想像つくようにエロ本であり、そしてそこには尋常じゃない短さのスカートの学生服を着た女生徒が仁王立ちになって尻餅をついた気弱そうな少年を見下ろしている図が描かれていたのだが……、
    (……ん?)
     凝視する眉根が寄る。立ちはだかる女性は2人いて、それは別にいいのだが、その顔が全く同じだったのだ。え? 何これ? 双子? クローン? どういう性癖?
    「分裂! ってヤツっスよ! 2人に増えちゃった彼女に迫られてタジタジ……っていうの、男冥利に尽きません!? でー、斉木さんならできるなって思ったんスよ!」
     思ったんスよ! じゃねえ。拳を握りしめていい顔で言うな。
    「え? できないんスか?」
     いや、できなくは 2004

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    「分裂! ってヤツっスよ! 2人に増えちゃった彼女に迫られてタジタジ……っていうの、男冥利に尽きません!? でー、斉木さんならできるなって思ったんスよ!」
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    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
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