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    psychimma

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    psychimma

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    過去にモブ空描写ありの信空、空の語る三大欲求などの話、書きかけの散文、R15くらい。全体的にどんよりとしています。でも続きは明るいのでは…まことくんがでてくるので…(信頼)

    #信空
    shinkong

    食欲も、睡眠欲も、性欲も、生まれつきこの身のうちには存在しないようなものだった。まるで赤ん坊の時にコウノトリが運ぶ袋の中からそれだけ取り落としてしまったみたいに。
    だけど僕は知っている。人間はコウノトリが運んでくるわけでもキャベツ畑から発見されるわけではないことを。
    まあ、あんまり両親とは似てないから、生まれてすぐの記憶がなかったら血縁関係は疑ってしまっていたかもしれないけどね。
    食欲は、とりあえず。ママの作る食事を残すのは悪かったし、別になんだって嫌いなわけではないのだ。ただすこし夢中になると優先順位が低くなってしまうだけで。でも人間だって結局動力のいる機関だから、必要な分は摂っていた。
    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
    睡眠欲は。これは僕の体質が幸いして、あまり問題にはならなかった。いわゆるショートスリーパーというやつ。とはいえもちろん全く寝なくても大丈夫というわけではないけどね。え、平均十七分?あ〜あれはちょっと平均を取られたのが開発の佳境だっただけで、普段はもう少し寝てるよ。
    だけど暇があったら眠りたい、とか、朝ベッドから出たくないとか、そんな気持ちは僕にはよくわからなかった。
    だって、ほら。時間は有限なのだから、無駄にしているの勿体無いじゃない?
    僕が食欲も睡眠欲も放り出して執心していたのは、ここでわざわざ言及する必要もないけれど、そう、あの人智を超えた力を持った忌々しい弟に対してであった。彼に勝ちたい、勝ちたい。初めはほんの些細な対抗心だったけど、いつの間にやらそれは僕の全てになっていた。
    いや、全てというか。他のことがそれよりも優先すべき理由がないというか、そういう感じで。
    最後に、性欲。これこそまるで無縁のものであった。生物は生きている限り等しく生存本能を持つ。種の存続の原始的な欲求のために性衝動があり、男はより多くの女を求め、女はより優れた男を選ぶ。だけどそれも、弟を倒すという目的とはとんと結びつかなかったから。言い寄る女性たちの飢えたハイエナのような瞳は、僕の本能をゆさぶることはついぞ無かった。
    なかった、けど。
    『きみは本当にきれいだね、お伽噺に出てくる妖精のようだ。ああそう、彼女があの子に向かって絵本を読み聞かせてくれた時は、皆仲が良くてーー』
    言いながら、むきだしの肩の横に投げ出された指に、指が絡む。せわしない上下運動で僕の身体を掘削しながら、けれど名も知らぬ彼の瞳は僕を見てはいない。
    全部を投げ打って、全部を使ったけれど、結局天才のその光には爪の先ひとつ掠めることができなくて。僕は平凡な凡人だけど、自分の精神がその辺の常人が共感できるものではないことはうすうす分かっていた。だけど、いくらしつこくとも、飽きなくとも、他の何よりこれが楽しいことだとしても、ぶつかり続けていれば精神の鋼は磨耗していくのだ。それがある日ぽきりと折れて、それからはもう転落人生。白旗あげてケンブリッジへ逃げ込んで、研究に逃避する毎日。
    自暴自棄だった。なにもかもがどうでもよかった。自分の無能さに嫌気がさして、ぞんざいに扱いたくてたまらなかった。
    ……と、今なら振り返って思うけれど、実際はもっと無に近かった。ぬけがらのようだったのだ。まだこの国でも許されるまえから酒を浴びるほど飲んで、そうしないと眠れなかった。朝と夜の境目も、自分と外側の切れ目も、もうほとんど見えないようなそんな時に、声をかけてきた身なりの整った男に、気づけばホテルで押し倒されていても、僕の心はやはりすこしも揺らがなかった。
    彼は僕に何も聞かなかったけれど、僕を抱くたびに自分のことをべらべらと話した。
    性欲は種の保存の本能が生み出したもの。そう思っていた僕は、社会的地位もありそうなこの四十がらみの男が、馬の骨も知らぬ同性の子どもに執着するかがわからなかった。別に乱暴にされるわけでもない。ただ僕を丁寧に丁寧に、もういいってほど丁寧に高めて、最後は思い出を見ながら吐精した。
    それから僕は前触れもなくテレパスキャンセラーの理論に思い至って、そこからはもう空気が入ったみたいに、飲み歩く時間がもったいなくて研究室に篭りきりになってしまったので、彼とはそれっきりだったけど。
    確か、彼は最後から数えて2度目の乱れたベッドの上で、乱れた僕の髪を梳きながらこう言った。
    『人はね、コウノトリがママの眠る出窓に赤ん坊を落とす時、どこかにひび割れができるんだよ。それを埋めるために生きているんだ。だけどやっと見つけたその欠片を、取り落としてしまう愚か者もいる。そういう時にせめてひととき、ひび割れの痛みを忘れられるのが人肌なんだよ』
    『ふうん……』
    ひび割れね。しつこく求められて、夢うつつで僕は低い声を聴く。それなら僕は随分とヒビだらけの背中をして、あいつはさぞツルツルの身体でいるんだろう。
    『つまり、さびしいんだ、おじさんは』
    『そうだね、きみは賢いな。きみのひび割れが、いつか満たされることを、僕は願っているよ』
    結局本名も知らぬまま一方的に消息を絶った僕のラボチームに、匿名の多額の寄付があったのは、それからすぐのことだったりするのだけれど……。
    つまりだ。つまり、僕の身体にヒトらしい三大欲求などはどうにも見つけられなくて、
    だから。傷を舐め合うような、そばにいるくせしてずっと背を合わせて手が届かぬ違う星を眺めているような、そんな関係のはずの僕たちに、
    「待て、今日、泊まっていかないか」
    顔なんかもちろん、浮いた鎖骨も、袖口から伸びる、僕の服の裾を掴んだ骨ばった指先も、どこもかしこも毛の先までよくできた造形をしているこの男が、らしくもなく顔を真っ赤にして。
    演技も何もないつんのめった声でそう言った時にも、僕の心には驚くほど何のさざなみも立たなかったのだ。
    失望した、わけでもない、多分。だって、失望するほど期待もしていなかったから。
    ああでも、なあんだ、そうなの。きみもやっぱりおんなじなんだね。
    ーーいいよ。
    瞬きひとつで受け入れれば、ラピスラズリの瞳が星空のように輝いた。
    手が伸びる。肩を押されて、ベッドに沈む。え、ちょっと、いいとは言ったけどちょっと性急すぎない?
    たちまち降ってきたキスを受け取って、仕方ないので唇を開いて腕を首に回す。
    なんだろうね。本能でもないのにね。
    さすがのきみもやっぱり、一人で生きるには寂しかったのかな?
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    psychimma

    REHABILIトランプネタかんがえてるときに出てきた鳥斉 あんまりトランプネタ関係なくなっちゃった…いつものように付き合ってだいぶ経ってます「じゃあトランプで決めましょう、斉木さん!」
    ーートランプ?
     言い返す僕の眉根があんまりにも寄ってしまったことに、元気に提案した鳥束は「そんな嫌そうな顔しなくても……」と笑みをほろ苦く変えて頬をかいた。
     休日の昼下がり。簡単なランチを終えて、これから家で映画を見るにあたってコンビニにお茶請けを買いに行くが、どら焼きのあんこはつぶあん派かこしあん派か、などということから始まった実にくだらない論争だった。二人で暮らし始めて半年、こんなのは実にありふれた趣味嗜好の差で、僕らにとっては本来言い争いのうちにも入らないレベルのものだ。だって僕たち成人男子だし、どら焼きなんかひとりひとつ買えよって感じなのに、分ける前提で話しているのがその証拠、単なるじゃれあいの延長で。
     いつもなら鳥束が折れる。ことスイーツに関して僕の方が一家言あるのは明らかだったし、向こうはそもそもそんなに拘りがないので。それがいつもよりすこし長引いたのは相手が和菓子で腐っても寺の息子だったのかということと、そして、おそらくこちらがメインだが……トランプをするよう誘導すること自体が彼の目的だったとそういうことだろう。
     …… 1978

    psychimma

    DOODLE過去にモブ空描写ありの信空、空の語る三大欲求などの話、書きかけの散文、R15くらい。全体的にどんよりとしています。でも続きは明るいのでは…まことくんがでてくるので…(信頼)食欲も、睡眠欲も、性欲も、生まれつきこの身のうちには存在しないようなものだった。まるで赤ん坊の時にコウノトリが運ぶ袋の中からそれだけ取り落としてしまったみたいに。
    だけど僕は知っている。人間はコウノトリが運んでくるわけでもキャベツ畑から発見されるわけではないことを。
    まあ、あんまり両親とは似てないから、生まれてすぐの記憶がなかったら血縁関係は疑ってしまっていたかもしれないけどね。
    食欲は、とりあえず。ママの作る食事を残すのは悪かったし、別になんだって嫌いなわけではないのだ。ただすこし夢中になると優先順位が低くなってしまうだけで。でも人間だって結局動力のいる機関だから、必要な分は摂っていた。
    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
    睡眠欲は。これは僕の体質が幸いして、あまり問題にはならなかった。いわゆるショートスリーパーというやつ。とはいえもちろん全く寝なくても大丈夫というわけではないけどね。え、平均十七分?あ〜あれはちょっと平均を取られたのが開発の佳境だっただけで、普段はもう少し寝てるよ。
    だけど暇があったら眠りたい、とか、朝ベッドから出たくないと 2656

    psychimma

    MOURNINGワンドロのお題佐藤くんで書こうと思ってたけど鳥の話ばかりになってしまったので没になったもの 高3鳥+斉 なかよし話「……」
     休み時間。
     高3の春なんて人生で一番きらびやかであざやかで貴重なそのひとときをまったく無為に浪費しながら、廊下からじとりと教室の中を観察する男が一人。
     その一見すると非常に悪目立ちしそうな、けれどこの世界では普通過ぎてすっかり風景に溶け込んでしまう、けれどその実とんでもなく非日常な力を持った超能力者は、談笑する生徒の群れを眺めながら臍を噛んだ。
     その胸に宿るのはささやかで切なる願い。
    (……ああ、僕も佐藤君と話したい……!)

     それで次の休み時間。
    ――鳥束、相談があるんだが……。
     と神妙な顔して話しかけてきた斉木に、まくった袖からじゃらじゃらと数珠のアクセサリーを覗かせて、早弁しながらエロ本を読むという平然とルールを逸脱しまくった霊能力者は、ポロリと箸を取り落とした。
     だって……、
    (さ、斉木さんがオレに相談……!?)
     無敵の超能力者が、わざわざ自分に頼るこということは……!?
     考えるまでもなく、答えはすぐに導き出された。周囲を見渡してから、身体を伸ばして耳打ち。
    「……次は誰ヤっちゃったんスか……?」
     ちげえよ、というツッコミがいつもの鋭さをほんのすこ 4868

    psychimma

    MAIKING分裂ネタのらくがき(鳥斉)「斉木さん!!!一生のお願いがあるんスけど!!!」
     久々に聞いたなソレ。いつもの返しした方がいいのか? お前の一生は……、
    「これをやって欲しいんスけど!!」
     お前の一生は、いったい何度あるんだ。
     ……という、お決まりの台詞すら言い切らせないせっかちさで、僕の目の前に差し出されたのは開かれた雑誌であった。えーと、なになに……、
     それはまあ、鳥束が持っている本の形をした物といえば誰もが想像つくようにエロ本であり、そしてそこには尋常じゃない短さのスカートの学生服を着た女生徒が仁王立ちになって尻餅をついた気弱そうな少年を見下ろしている図が描かれていたのだが……、
    (……ん?)
     凝視する眉根が寄る。立ちはだかる女性は2人いて、それは別にいいのだが、その顔が全く同じだったのだ。え? 何これ? 双子? クローン? どういう性癖?
    「分裂! ってヤツっスよ! 2人に増えちゃった彼女に迫られてタジタジ……っていうの、男冥利に尽きません!? でー、斉木さんならできるなって思ったんスよ!」
     思ったんスよ! じゃねえ。拳を握りしめていい顔で言うな。
    「え? できないんスか?」
     いや、できなくは 2004

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    DOODLE過去にモブ空描写ありの信空、空の語る三大欲求などの話、書きかけの散文、R15くらい。全体的にどんよりとしています。でも続きは明るいのでは…まことくんがでてくるので…(信頼)食欲も、睡眠欲も、性欲も、生まれつきこの身のうちには存在しないようなものだった。まるで赤ん坊の時にコウノトリが運ぶ袋の中からそれだけ取り落としてしまったみたいに。
    だけど僕は知っている。人間はコウノトリが運んでくるわけでもキャベツ畑から発見されるわけではないことを。
    まあ、あんまり両親とは似てないから、生まれてすぐの記憶がなかったら血縁関係は疑ってしまっていたかもしれないけどね。
    食欲は、とりあえず。ママの作る食事を残すのは悪かったし、別になんだって嫌いなわけではないのだ。ただすこし夢中になると優先順位が低くなってしまうだけで。でも人間だって結局動力のいる機関だから、必要な分は摂っていた。
    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
    睡眠欲は。これは僕の体質が幸いして、あまり問題にはならなかった。いわゆるショートスリーパーというやつ。とはいえもちろん全く寝なくても大丈夫というわけではないけどね。え、平均十七分?あ〜あれはちょっと平均を取られたのが開発の佳境だっただけで、普段はもう少し寝てるよ。
    だけど暇があったら眠りたい、とか、朝ベッドから出たくないと 2656

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    「これをやって欲しいんスけど!!」
     お前の一生は、いったい何度あるんだ。
     ……という、お決まりの台詞すら言い切らせないせっかちさで、僕の目の前に差し出されたのは開かれた雑誌であった。えーと、なになに……、
     それはまあ、鳥束が持っている本の形をした物といえば誰もが想像つくようにエロ本であり、そしてそこには尋常じゃない短さのスカートの学生服を着た女生徒が仁王立ちになって尻餅をついた気弱そうな少年を見下ろしている図が描かれていたのだが……、
    (……ん?)
     凝視する眉根が寄る。立ちはだかる女性は2人いて、それは別にいいのだが、その顔が全く同じだったのだ。え? 何これ? 双子? クローン? どういう性癖?
    「分裂! ってヤツっスよ! 2人に増えちゃった彼女に迫られてタジタジ……っていうの、男冥利に尽きません!? でー、斉木さんならできるなって思ったんスよ!」
     思ったんスよ! じゃねえ。拳を握りしめていい顔で言うな。
    「え? できないんスか?」
     いや、できなくは 2004

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    DOODLE過去にモブ空描写ありの信空、空の語る三大欲求などの話、書きかけの散文、R15くらい。全体的にどんよりとしています。でも続きは明るいのでは…まことくんがでてくるので…(信頼)食欲も、睡眠欲も、性欲も、生まれつきこの身のうちには存在しないようなものだった。まるで赤ん坊の時にコウノトリが運ぶ袋の中からそれだけ取り落としてしまったみたいに。
    だけど僕は知っている。人間はコウノトリが運んでくるわけでもキャベツ畑から発見されるわけではないことを。
    まあ、あんまり両親とは似てないから、生まれてすぐの記憶がなかったら血縁関係は疑ってしまっていたかもしれないけどね。
    食欲は、とりあえず。ママの作る食事を残すのは悪かったし、別になんだって嫌いなわけではないのだ。ただすこし夢中になると優先順位が低くなってしまうだけで。でも人間だって結局動力のいる機関だから、必要な分は摂っていた。
    ただべつに、時間をかけたり味を楽しむ必要性はあまり理解できなかったくらいで。
    睡眠欲は。これは僕の体質が幸いして、あまり問題にはならなかった。いわゆるショートスリーパーというやつ。とはいえもちろん全く寝なくても大丈夫というわけではないけどね。え、平均十七分?あ〜あれはちょっと平均を取られたのが開発の佳境だっただけで、普段はもう少し寝てるよ。
    だけど暇があったら眠りたい、とか、朝ベッドから出たくないと 2656