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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

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    黒スミ←真の話。

    日常のカケラはやけに鋭い。



    「あ、」

    カスミが珍しくそんな風に声を漏らしたから、どうしたの、のと声を掛けてみたんだけど。
    聞かなきゃ良かったなと思った頃には曖昧に笑うくらいしかできなかった。

    「大した事じゃないんスけど、牛乳切らしてたなって思って」
    「牛乳?」
    「朝、無いと機嫌悪いんスよね〜」
    「……そ、うなんだ」

    誰が、とかは言わないけど、丁度近くを通った黒曜をカスミが視線で追っていたのは何となく分かった。
    黒曜は特に気にした風もなくて、いつも通りに喫煙スペースのベンチに座ると、スマホを弄りながら煙草を探していた。
    それから直ぐにカスミのスマホが震えて、それをカスミが確認して。

    「……あ、」

    と今度は少し小さめの、だけど妙に嬉しそうな声を漏らしていたから、それは黒曜からのメッセージなんだろうと予測も出来た。
    だから、聞かなきゃいいんだけど。

    「今度はどうしたの?」
    「ふふ、牛乳買っといてくれるらしいッス」
    「よかったね」
    「はい〜」

    ニコニコと。
    いつも笑顔だけど、いつものじゃなくて、ホントに嬉しそうに笑うカスミ。
    ツキンと胸の奥に何か鋭いものが刺さったような気がして、無意識に胸の辺りの布を手でギュッと握りしめていた。
    それを見たカスミの心配そうな顔と声で少しだけそれは和らいだけど、指の先に刺さった棘を抜いた時、ほんのちょっぴりだけ先が残ってしまって、いつまでもイジイジとした感じがするような、そんな感覚は次の日の朝も消えなかった。

    「……牛乳、飲んでるのかな」

    部屋のカーテンを開けながら、ふとそう呟くと、棘の先っぽはぽろりと目から透明な雫になって溢れ落ちた。
    やけに滲む朝日。
    今日はいい天気な筈なのに、窓の外は大雨が降ってるみたいだった。


    end.
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