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    花月ゆき

    @yuki_bluesky

    20↑(成人済み)。赤安(コナン)、虎兎(タイバニ)、銀神(銀魂)、ヴィク勇(YOI)好きです。アニメ放送日もしくは本誌発売日以降にネタバレすることがあります。

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    花月ゆき

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    ツンツンな降谷さんのデレが見たい赤井さんの話。

    #赤安ワンナイト・ドローイングアンドライティング
    #赤安

    お題「♡」 交際をはじめてからの降谷は、ずっとツンツンだ。ツンデレではない。デレがないので、ツンツンである。
     赤井は降谷から届いたメッセージを見て、思わず微笑んでいた。
    『たまたまその日は空いているので、いいですよ』
     これは、赤井が送ったデートの誘いに対する降谷の返事である。
     赤井がデートに誘うと、降谷は、“たまたま空いていたから”という言い訳を枕詞にして返事をしてくる。もちろん、それは嘘だ。多忙な彼がたまたま暇になることなど、まずあり得ない。その証拠に、降谷の部下である風見から、「赤井さんとの約束を守るために、降谷さんは鬼のように仕事してますよ」と、たびたび密告がある。
     自分に対する言葉、態度とは裏腹に、降谷は自分とのデートの時間も大事にしてくれようとしているのだ。そんな降谷の様子を、彼の周囲にいる人間から聞くたびに、赤井は嬉しくてたまらなくなる。と同時に、なぜ、自分の前ではツンツンした様子しか見せてくれないのだろうかと、疑問に感じてもいた。
     素直ではない彼も、とてつもなく可愛らしい。だが、たまには、素直な彼の姿も見てみたい。
     少しでいい。次のデートで、その片鱗でも見せてはくれないだろうか。そんな期待も込めながら、赤井は降谷にメッセージを返した。
    『ありがとう。楽しみにしているよ』
     
     デートの約束の日。
     約束の時間までには、まだまだ時間のある昼下がり。
     待ち合わせは、十八時。降谷がポアロでの仕事を終えた後、二人で食事に行く予定になっている。
     今日はたまたま夕方までのシフトだと言っていたが、降谷のことだから、自分とのデートに合わせて時間を調整したに違いない。彼のそんなところが、いつも愛おしい。
     夕方になれば降谷に会えるとわかっていながら、赤井は待ち合わせの時間までおとなしく待つことができなかった。気づけばマスタングを走らせ、喫茶ポアロの前にいた。
     ポアロでバイトをしている彼は、降谷零ではなく、安室透である。安室を演じる彼の前に姿を見せれば、降谷は演技をおざなりにして、自分を睨みつけてくるかもしれない。
     そうは思ったが、それはそれで見てみたい気もして、赤井はポアロのドアを開いた。
    「いらっしゃいま……」
     入口に向かって微笑んでいたはずの彼の表情が、みるみる険しいものへと変わってゆく。
    「ひとりなんだが」
     あくまでも客として彼に接すると、降谷はすっと表情を変えて、カウンター席へと案内してくれた。ホットのコーヒーを頼み、店内をゆったりと見渡していると、スマホのバイブ音が鳴る。今、目の前で働いているはずの降谷からメッセージが届いていた。
    『なんで来たんですか』
    『君に会いたくて』
     すぐに返事を書いて送る。降谷は素早くスマホを見てポケットにしまうと、自分に背を向けてしまった。
     しばらくすると、降谷がコーヒーをトレイに乗せて運んでくる。すぐに去っていった彼を名残惜しく思いながら、赤井はカップを傾けた。コーヒーは普段から愛飲しているが、やはり降谷の淹れてくれるコーヒーが一番美味い。
     ランチの時間は過ぎているので、店内には数人客がいるだけだ。その客もひとり、またひとりと減っていく。
     会計後、降谷が客ひとりひとりに何か手渡しているのが気になったが、今は静かな空間と美味しいコーヒーを楽しむことにした。コーヒーのおかわりを頼んだタイミングで、店内にいる客が自分ひとりだけになる。すると、降谷が手のひらサイズの小袋を持ってやってきた。透明なラッピングの中にはクッキーがひとつ入っている。
    「これ、どうぞ」
    「……これは?」
    「持ち帰り用のお菓子として、クッキーの試作品を作っているんです。今、お店に来てくれた人に配っているんですよ。本当は会計後に渡すんですが、あなたには今、渡します。このクッキー、コーヒーとよく合うので」
    「ありがとう」
     ラッピングの上には、油性マジックで『またのお越しをお待ちしてます♡』と書かれてある。ただ試作品を渡すだけではないところが商魂たくましい。とはいえ、語尾に“♡”を入れるのはどうなのか。まじまじとその記号を眺めていると、降谷が首を傾げた。
    「……どうかしましたか?」
    「この♡は……」
    「ああ、それは梓さんの案です。文字だけだと味気ないらしいので……」
     降谷が自ら書くとは思えない記号だが、ポアロの女性店員の案だったらしい。
    「意図は理解できるが、あまり感心はできんな。勘違いする人間がいるかもしれん」
    「勘違い? それはないですよ! これはリップサービスみたいなものなので」
     降谷は無邪気な笑みを浮かべた。
     降谷は、自身が周囲からどんな目で見られているのかをよくわかっていないらしい。女だけではなく男も、彼に惹かれる人間は山のようにいる。そんな人間が、彼から♡付きのメッセージをもらったら、どんな気持ちになるのか。もしも、カフェの店員がカップに電話番号を書くのと同じ類のものと受け取られてしまったら。勘違いする人間が出てもおかしくはない。
     だが、もし勘違いする人間が出たとしても、彼はそれを巧みにかわしてゆくのだろう。それが“安室透”という人間でもある。
    「他の人間の案とはいえ、君がこんなことをするとはな」
    「今の僕は安室透ですからね」
    「では、降谷零だったら?」
     そう問いかけると、降谷は目を瞬かせたあと、眉を吊り上げた。
    「は……絶対しませんよ、こんなこと!」
     降谷の返事に、赤井は思わず笑みを零す。
     彼の言う通り、降谷零がこういうことをするのは想像ができない。だが、見てみたい気もする。もちろん、他の人間に対してではない。自分に対してだけ、こういうことをする降谷が見てみたいのだ。
    「俺にはしてくれないか。たまにでいいから」
     俺は君の恋人だろう? そう続けると、降谷の顔がみるみる赤くなってゆく。
    「で、できませんよ、そんなこと!」
    「なぜ?」
     その問いかけに、降谷は明らかに困ったような顔をした。「なぜって……」そう呟く彼の瞳は、ゆらゆらと困惑の色を浮かべている。
     話題を変えるべきかと考えていると、降谷が小さな声で心の声を打ち明けた。
    「恥ずかしいじゃないですか……」
    「……」
     降谷の言葉に、赤井の中で衝撃が走った。顔を赤らめて顔を背けた彼から、赤井は目を逸らせない。
     これは初めての“デレ”ではないのか。
    「そ、それより、コーヒーのおかわり淹れますね」
    「あ、ああ……」
     降谷が逃げるように自分のもとを去っていく。
     それから彼と目が合うことはなかった。しかし、心が満たされているからだろう。クッキーはもちろんのこと、おかわりのコーヒーも、さらに美味いと感じた。
     その後。店の中は再び客で満たされ、降谷と会話することはかなわなかった。
     降谷のシフトが終わるタイミングで赤井は店を出て、マスタングを店の前に停める。店から出てきた降谷は、首に巻いたマフラーに顔を埋めて、もじもじとしていた。
     赤井は目を見張った。彼と出逢ってもう何年も経つというのに、こんなに初々しい態度を見せてくれるとは。
     これから食事に行くというのに、赤井は今すぐ二人きりになれる場所に降谷を連れ去りたくなった。

     翌週。赤井は再び降谷をデートに誘った。
    『今度の日曜はどうかな?』
    『大丈夫ですよ』
     降谷からはすぐにメッセージが届いた。いつものように“たまたま空いていたから”という言い訳はない。
    『では、君の家に迎えに行くよ』
     そう返事を送り、しばらく待つ。彼からの返事はない。
     多忙な彼のことだ。もう仕事に戻ったのかもしれない。そう思っていると、再びスマホのバイブ音が鳴った。画面をタップすると、降谷から返事が届いている。
    『ありがとうございます。楽しみにしています♡』
     見間違いではないかと、赤井は目を見開く。驚きなのか、歓喜なのか。心臓が激しい音を立てている。混乱の最中、続けて降谷からメッセージが届いた。
    『打ち間違えました。先程のメッセージは破棄してください』
     まるで業務連絡のようなメッセージだ。きっとまた、彼のツンツンの源である“恥ずかしさ”が顔を出したのだろう。
     赤井は笑みを堪えきれないまま、スクリーンショットを撮り、メッセージに保護をかけた。
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    花月ゆき

    DONE秀零の日。
    記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸に一緒に住んでいる設定(たまにコナン君が遊びに来る)です。
    ①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
    ⑤https://poipiku.com/1436391/9895567.html
    記憶は心の底に④コナンSide

     一月十日。コナンは阿笠邸を訪れていた。目的は、赤井と降谷の解毒薬の進捗を聞くためだ。
    「……30%ってところかしらね」
    「……そうか。やっぱり、俺たちが飲まされた薬とは違うのか?」
    「ええ。成分は似ているけれど、同じものではなさそうよ。ああ、それから、薬によって記憶が失われたどうかはまだわからないわ」
     赤井と降谷は毒薬によって身体が縮み、今は中学生として日常を送っている。
     身体は健康そのものだが、なぜ、FBIとして、公安として、職務に復帰できないか。それは、二人が大人だった頃の記憶を失くしているからだ。
     コナンの脳裏には、“あの日”の光景がよみがえっていた。
     今すぐにでも倒壊しそうなビルの中。炎と煙で視界を遮られながらも、赤井と降谷とコナンは、組織が残したとされる機密データを探していた。このデータさえ手に入れることができれば、組織壊滅のための大きな足掛かりになる。なんとしてでも、この場で手に入れておきたいデータだった。
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    DONE入れ替わっている赤安(あかいさんがふるやさんに、ふるやさんがあかいさんに変装してます)と、二人が入れ替わっていることを知らされていないコナン君のお話。

    あかいさんがふるやさんに変装するときに体格の問題が出てくると思うのですが(大→小にするのは難しい)、細く見えるように加工済です(でもよく見たらバレバレ)
    お題『変装』-コナンSide-

     組織は壊滅したが、残党は世界中に散らばっている。その残党集団は日本でも暗躍し、先日、あろうことか日本に滞在しているFBIの捜査官を拉致した。その残党集団のリーダーと思われる男は、変声機で声を変え、日本警察へ電話をしてきた。「ヘンリー捜査官を返してほしければ、ライを寄越せ」と。
     その残党の本当の狙いは、ライ――赤井秀一だった。赤井を確実に捕らえるために、赤井と親交のあるFBI捜査官に狙いを定めたのだろう。
     警察庁の一室には、コナンと降谷と赤井の三人だけで、他には誰もいない。
     つい先程まで、日米合同の捜査会議が行われていたが、捜査の割り振りを行いすぐに散会となったらしい。会議後、コナンは降谷に呼ばれて、会議室のような休憩室のような、用途がよくわからないこの場所へと連れて来られた。中に入ると赤井の姿もあったので、この三人だけで話したいことがあるのだろうとコナンは理解した。
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    「お雑煮ですか」
    「ああ、正月ぐらいに」
     剥いていたみかんをひとつ、僕の口に放り込む。しっかりと熟れたそれはとても甘くていい食べ頃だ。机の上のカゴから僕もひとつ拝借すれば、ティッシュの箱が近くに寄せられる。
     正月。そうだクリスマスは終わって、今年も残り数日だ。約半年前、赤井は「君の味噌汁の味が忘れられない」なんていうくだらない理由を建前にしてこの家に転がり込んできた。そして紆余曲折……と言っていいのかはわからないが色々あり、僕たちは同居から同棲に、友達から恋人になった。そんな二人で初めて過ごすお正月だ。クリスマスもそうだったが、赤井はこちらも楽しみらしい。
    「お雑煮か……何を入れて欲しいです?」
    「ん? 何か違うのか?」
    「地域によって味付けや具材も違うんですよ。東の方はすまし仕立てですが、西の方は味噌ですし、 5464