○と誠「うーんうーん」
「どうしたんです?さっきからずっと唸って…オオカミさんにでもなっちゃいましたか?」
珍しく難しい顔で唸っている子羊の眉間を、人差し指でぐいと突く。
「や、なんでも…」
「なんでもって顔じゃないでしょう」
「えっと…あの、」
「話しにくいことですか」
なら、と子羊の手を引いてベンチにともに腰掛ける。向き合って手を握ればまっすぐに見つめた。
「ほら、ちゃんと話してくれないとわからないでしょう?」
「いやその。なんというか…」
「いい加減になさい。朝からずっとソワソワして、私が気になるんですよ」
「その、僕、テメノスさんが……」
「……なんです」
もごもごと口を動かして言いかけたが、結局言葉が出てくることはなかった。
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