Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    塚原でした

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 97

    塚原でした

    ☆quiet follow

    たぶん今年の書き納め

    不確定未来「仁王くん、聞きましたよ。あなた、また女生徒を泣かせたそうですね」
    俺はこいつが嫌いだ。
    「無理に付き合えとは言いませんが、断り方にもマナーというものがあるでしょう?」
    俺の行動に母親のように小言を垂れるこいつが。
    「あなたは素っ気なさ過ぎるんです。勇気を振り絞った告白なんです。きちんと向き合って上げるのが礼儀というものでしょう?」
    先達のように得意気に講釈を垂れるこいつが。
    「私もそれなりに女生徒お付き合いしてきましたが、一度として相手を泣かせたことはありませんよ。お別れをするときも、きちんと誠心誠意お話をして円満に道を別ってきました」
    無意識に他人を侮るこいつが。
    「あなたも相手を慮って、自分を想ってくれる人がいることに感謝すべきです」
    虫酸が走るほど嫌いだった。
    「聞いているんですか、仁王くん?」
    「チッ、うるさいのう」
    傲慢なその鼻っ柱をへし折ってやりたくて、俺はネクタイを乱暴に引き寄せ、口の減らないこいつの唇をキスで塞いで黙らせた。
    「っ!」
    見開かれた目は動揺を晒し、止まった言葉が成功を示す。これで立場がはっきりした。俺は唇を離し、嘲りの笑みを浮かべて見せた。
    「どうせ、キスの一つもしたことないんじゃろう?んなガキみたいな付き合いで、随分と御高説を垂れてくれたもんじゃ──」
    瞬間、柳生の右手が勢いよく俺の頬へと飛んできた。激情に任せた平手打ちだ。寸前でその手を掴んでやれば、らしからぬ苛立ちの視線が厚いレンズの向こうから放たれた。
    「おお怖い。紳士が暴力か?」
    「あなたにはデリカシーというものがないんですか」
    「ハッ。その言葉、そっくりそのままお前さんに返してやるぜよ」
    こいつの涼やかな化けの皮が剥がれる瞬間が、唯一共に居て愉しいと思えるところか。
    「あなたとダブルスなんて、本当に信じられません」
    「そいつだけは同感ぜよ」
    そんな俺達の関係性が180度変わるまで、あとXX日──。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works