Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 290

    111strokes111

    ☆quiet follow

    #クロロレ春のこども祭り2021

    重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、見れば安心するかもしれないわね」

     そういうとマヌエラは寝台の幕を取り払った。クロードの向かいの寝台にはローレンツそっくりな子供が横たわっている。真っ白な顔まっすぐな紫の髪に紫色の瞳をして子供時代のローレンツはきっとこんな感じだったのだろうと思わせる子供だ。具合が悪いのかマヌエらに手渡された手桶に向かってえずいている。

    「そう、上手に吐けたわね。今日食べたものは全部出せた?」
    「はい、たぶんこれですべてだとおもいます。なんだクロードいしきがもどったのか?」

     子供は口元を拭うとマヌエラに渡された水で口を濯いだ。

    「え、あ、ローレンツ?」

     どう見ても大男に見えない。ローレンツはクロードより拳ふたつ分は背が高いのだ。それなのに目の前にいるのは声変わりも済ませていないような小さな少年だ。だがマヌエラには彼が本来の姿を保っているように見えるらしい。

    「どうした、めまいをおこしているのか?」

     眩暈を起こしていたが治まったつもりだった。しかし目の前の涙目になって胃の中身を吐いていた少年がどうやらローレンツであると知ったクロードは再度眩暈を起こしそうになった。眩暈ではなく戸惑いの理由は副作用が落ち着いたのかとことこと寝台に横たわっているクロードの元にやってきて小さな白い手でクロードの瞼を閉じた。

    「ぼくもらくばしてあたまをうったときめまいをおこしたことがあるのだ。しやがまわってつらいときはめをとじておくといい。そのままねむってしまうのもてだ」
    「いやそんな簡単には眠れないよ」

     どこでもぐっすり眠れるローレンツとは違ってクロードは不眠気味だ。

    「ではめをとじるだけでいい。ひつじでもかぞえようか?ひつじがいっぴき……ひつじがにひき……」

     そんな子供騙しの方法で眠れるわけが………。

     翌朝、クロードが医務室で目覚めると付き添っていたのかローレンツが医務室の机の上で長い腕を組んで眠っていた。強く頭を打ったせいか回復魔法の副作用か分からない現象は終わった。

    「ローレンツ、おはよう。付き添い、ありがとうな」

     そうクロードが声をかけるとローレンツがむくりと起き上がって驚いた様な顔をした。

    「え、あ、あぁ、おはようクロード。もう大事ないようだな」
    「どうした?何かあったのか?」
    「いや、何でもない。おかしな夢を見ただけだ」

     そういうとローレンツは大欠伸をして失礼、と言った。いつでも礼儀正しくありたいらしい。硬いところで縮こまって眠って肘を痛めたのか伸びをした拍子に呻いていた。

    「硬いところで寝たから腕を痛めたんじゃないか?」
    「多分そうだろうな。固まると厄介だから動かさなくては」

     訓練場に行くよと言って去る大きな背中におかしな夢について質問を投げかけたが聞こえていない様だった。

     後日、改めて聞くとクロードが子供になっていて目眩が酷く歩けないので修道院中を抱き上げて歩き回る夢を見た、と教えてくれた。

     頭を打つと色んな現象が起きるものだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺👍👏❤❤❤☺☺☺😭🙏☺👏👏👏☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    111strokes111

    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

    recommended works

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
    2086

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
    2123