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    111strokes111

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    6/25に本にする時は合間合間に如何わしい場面が入る予定です。
    本編
    https://poipiku.com/IllustDetailPcV.jsp?ID=1455236&TD=8601273

    一晩目
    https://poipiku.com/IllustDetailPcV.jsp?ID=1455236&TD=8600856

    二晩目
    https://poipiku.com/IllustDetailPcV.jsp?ID=1455236&TD=8605684

    「願い骨」その後:三晩目 明日は両国の王から声明を出してもらう予定となっている。それが終わればベレトとクロードは東西に別れ、再びお互いになすべきことをなす。二人の肩の上には臣民の命と生活がかかっている。
     それと比べればフォドラとの国交樹立など趣味に過ぎない、と言うわけでパルミラの官吏たちの意図的な怠業が目立った。しかし和平条約締結が王命である、と自覚すれば彼らも少しは真面目にローレンツに対応するだろう。そんな大切な日を控えているにも関わらずクロードは昨晩もローレンツの部屋で王として無駄な時を過ごした。
     クロード自身の悲願でもあると言うのに何をやっているのか───昨晩は別れ際にそう言ってたしなめたが、彼はまた闇に紛れてローレンツの部屋を訪れている。もし再会できると分かっていたら茶菓も彼好みのものを用意できたはずだ。それが少し悔しい。
    「さらさらだな」
    「手入れを怠ったことはない。自分のためだからな」
     褐色の指が紫の真っ直ぐな髪を梳いた。一昨日と昨日は形式を守った瞬間があったが今晩は最初から並んで長椅子に座っている。それに二人とも気軽な部屋着に身を包んでいた。
    「俺のためだったらよかったのに」
     クロードの手に抵抗せずにいると顔を傾けさせられた。ローレンツの頬にクロードの唇が触れる。ついでに頬擦りもされた。貫禄をつけるために生やした頬髭は見た目ほど固くない。手入れに使っている香油が高級品だからだろう。
    「君はそれを不可能にしていた本人だろう」
     香りや味、それに肌触りの記憶は最後まで残るらしい。失われた記憶が当時、口にした茶菓を再び口にした際に蘇ることもあると聞く。一昨日のふれあいで数年の隔たりは一気に消滅した。
     クロードが音を立ててローレンツの頬に口付けをした。唇の柔らかさ、ついでにされた頬ずりの感触が隣国の王はクロードなのだ、と訴えかけてくる。
    「これからは可能になる」
     瞳の輝きも落ち着きのなさをローレンツから注意されていた学生時代と変わらない。更に言葉を重ねるならば殺さないでください、としか言えなかった子供の頃と変わらない。
    「君は諦めが悪いな……。いや、諦めが悪かったのはあの子か」
    「褒めてもらえて嬉しいね。あいつもきっと喜んでるさ」
     そう言いながらクロードが体を預けてくる。仕草に名前と挨拶しか覚えて帰らなかったあの子の面影があった。ローレンツの腕の中で眠ってしまったあの子がまた戻ってきた。また腕をすり抜けて知らぬどこかへ行ってしまうのだろうか。
    「君の記憶のことをどう扱えば良い?」
     同窓生たちは共に数日を過ごしたあの子供がその後どんな風に王宮で生き抜いたのかまだ知らない。健在だったと知れば喜ぶはずだ。だがフォドラの補助魔法に対する悪評を呼ぶかもしれない。細心の注意を払うべき時期に結果として風説を流布する羽目になってはクロードもベレトも困ってしまう。
    「もう少し落ち着いたらきょうだいや先生方には俺から言うよ」
    「分かったよ、クロード。万事を君に任せよう」
     秘密を暴くつもりはない、と示すためにローレンツは微笑んだ。
    「助かるよ、でも寝椅子にするか寝台にするかはローレンツに任せるから」
     向いていないのに格闘を学んでいたのは悪用するためだったらしい。クロードが寝椅子の座面にローレンツの身体を押し付けた。向いていないのにこんなことが成功するのは勿論、ローレンツが抗わないからだ。

     王国と帝国をレスター諸侯同盟に組み込めなかったのはいくつか理由がある。どちらも共和制が馴染まない文化圏であったことが最も大きな理由だ。しかしどこまで闇に蠢く者たちに汚染されているのかまだ分からないこともクロードが躊躇した理由の一つだった。レスター諸侯同盟において領主は自治権を認められている。だから親帝国派と反帝国派に分裂してしまうところだった。
     そこを考慮せずに闇に蠢く者たちに協力する領主、彼らに成り代わられた領主に自治権を与えてしまえば制度を悪用されるのは火を見るよりも明らかだ。彼らを根絶したくとも自治を認めている限りは限界がある。
     ガルグ=マクを引き払い、彼らの影響があまりないデアドラをフォドラ統一国家の首都にするためベレトも含めて東奔西走していた時期のことだった。グロスタール家はデアドラに上屋敷を持っている。しかしローレンツは仕事が長引いたと言ってリーガン邸にそのまま泊まってしまうことが多い。そしてそれは勿論、客室ではなかった。
     上屋敷の使用人たちは若様が主寝室でクロードと共寝をしていることを知らない。もし発覚していたらエドギアの本家まで巻きこんで蜂の巣を突いたような騒ぎになるはずだ。
    「レスター諸侯同盟は統一王国の発足を以て解散だ」
    「安全を優先するのか。確かに先生は鬼神のごとき強さだが独身で家族の縁も薄い」
     ベレトなくしては統一王国は瓦解してしまう。彼を守るために闇に蠢くものたちを根絶する必要があった。百年後には王都があるレスターはやたらと自治領が多い、という扱いになるだろう。
     似たような形でリーガン家断絶の危機を救ったクロードは寝台に横たわっていても思いつけば仕事について語り出す。職場である政庁と今、一糸纏わぬ姿で滞在しているリーガン邸が隣接しているからかもしれない。その遠慮のなさがローレンツは嫌いではなかった。
    「僕だから良いものの未来の奥方相手にそんな態度は取らないことだ。愛想を尽かされてしまうぞ」
     枕に顔を埋めたままローレンツはそう返した。リーガン領の領民たちのためにも早くこのぬるま湯から出なくてはならない。ローレンツにとって好きなだけ肉に溺れても子が出来ないクロードは都合が良すぎた。リーガン家ただ一人の生き残りであるクロードと違ってローレンツは無分別に種を撒き散らすわけにいかない。
    「でもお前と今、一緒にいるのは俺だぞ。俺と今、一緒にいるのはお前!」
     そう言いながら白い背中にクロードが覆い被さってきた。暑くて背中をさらけ出していたはずなのに何故か背中に感じる熱が心地よい。
    「念入りに繰り返さずともそんなことくらい分かる」
     先ほども散々舐られた耳元にクロードが口を寄せて来た。
    「いいや、分かってないね。こっち向いてくれよ」
     真っ直ぐに顔を見て懇々と説得されるのが嫌なのかこういう時のクロードはローレンツの身体の向きを変えさせてもすぐに口を塞いでしまう。勿論、ローレンツが抵抗しないからだ。

     そんなやりとりをしてから数日後、ローレンツは手がかりを探すため彼の私室に入り込んだ。何の整理もされておらず、五分後にでも忘れ物を取りにひょっこりと戻って来そうな状態になっている。あの時やたらと嫁取りを否定したのはこうする、と決めていたからだろうか。

     フォドラのセイロス教徒たちは闇に蠢くものたちをこの上なく凶悪だと思っている。だが余所者のクロードからすれば態度が悪いという理由で幼子も含めて皆殺しにされればその生き残りがセイロス教の女神を恨んでも不思議ではないような気がした。彼らは前の世代から託された宿願を達成するためにどんなことでもする、ただそれだけだ。
     一方でパルミラの呪い師は研究のためならどんな残酷なことでもやってのける。正確にいうならば生活費と研究費の捻出、だが研究と依頼内容が重なる者も多い。
     面紗と扇で顔を隠してはいるものの雇い主である妃とその侍女がカリードの前に姿を現したことは心底意外だった。抵抗された時に捻じ伏せる力のない者が毒や呪いに頼る。自分だけは安全な場所にいたいという浅ましい思いが投石機や弓矢それに黒魔法を発展させてきたのだ。
    「お前が息を吸う間に最も大切なものを奪う」
     小柄な呪い師は鈴を転がすような声で床に転がっているカリードにそう告げた。報酬次第で彼らはどんなことでもする。無力な子供を拐かして呪うことなど朝飯前だろう。カリードは手足を縛られ猿轡をされているがそれだけでは足りないと思ったのか身体を起こすことを禁じる呪いをかけられた。目に見えない大きな塊がのしかかり肩から下は潰されそうになっている。
     そんな有り様では不吉と疎んじられる緑色の瞳で彼女たちを睨みつけるしかなかった。例え苦しさと恐怖のあまり涙目になっていても抗う意志だけは示したい。
    「成功したらこの瞳はもらっても構わないのだな?」
     どうやら凡百の者たちと違い呪い師は緑の瞳を高く評価しているようだ。死後、悪用されることを思えば全く嬉しくないが。
    「早く済ませなさい」
     妃ではなく侍女が呪い師に命じると呪い師が微かに眉間に皺を寄せた。呪い師はその身に秘めた力以外の全てが───見た目も声もまやかしだ。だが眉を顰める仕草を見てカリードは初めて呪い師に人間らしさを感じた。そのくらい自分で言え、と思ったのかもしれない。
    「最後に念のため、確かめておく。この年頃の子供は母と己の分離が不十分だ。望んだ結果が得られるとは限らないぞ」
    「どちらが死んでも構わないわ」
     呪い師は妃の言葉に頷くとカリードをじっと見つめた。
    「恨むがいいさ」
     そう声をかけられ誰を、と思った時には黒い渦がカリードの身体を包んでいた。圧倒的な力が頭の中、心のうちを全て暴いていく。最も大切なものとはなんだろうか?自分の命なのか母の命なのか。左手の傷が疼き、走馬灯の一環なのかフォドラで過ごした数日間の思い出が一気に蘇る。
    ───ころさないでください───
     自分でも大きなため息を吐けたことが意外だった。妃と侍女も意外だったらしい。彼女たちはティアナの死を確認するためカリードを放置して足早に部屋を去った。
    「やれやれ、その年で自分の命よりも母の命よりも大切なものがあるとはな」
    「母さんは無事……なのか?」
    「左手の傷跡はどうしてついたか覚えているか?」
    「こんな悲惨な日常を送ってるんだ。いちいち覚えてなんかいられるかよ」
    「では、お前を書き換えた者たちに敬意を表して瞳はそのままにしておいてやろう」
     カリードにそう告げると小柄な呪い師は指を鳴らした。呪いが解け、身体を起こせるようになったら殴ってやるつもりだったのに煙すら残っていない。仕方ないのでカリードはじっくりと左手の甲を眺めてみたが、どんな風に怪我をしたのか全く思い出せなかった。
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    111strokes111

    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

    2068

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
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