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    クロロレ。ェュ前提なのでご注意下さい。
    紅花ルート

    有情たちの夜13.「枠の外へ1_5」 せっかく手に入れたデアドラを闇に蠢くものたちに荒らされたくなかったヒューベルトは後事を軍務卿であるベルグリーズ伯に託した。自領を長男に任せられるとは言え、それでも多忙な彼は親帝国派の諸侯の領地には殆ど立ち入っていない。故に領主が親帝国派であった場合、その土地の平民の暮らしは戦前と全く変わらなかった。そのことを親帝国派の領主たちは誇っても構わない、とヒューベルトは思う。
     ベルグリーズ伯は元よりアミッド大河を挟んで、領地が隣り合うグロスタール家とは長年の消極的な交流があった。そんな蓄積のある彼から見たグロスタール伯エルヴィンは信頼に足るようで、リーガン領はほぼ全域がグロスタール家預かりになりつつある。戦わずして豊かな地域を手に入れたグロスタール家、戦時中に掴んだ商機と利権をいまだに手放さないエドマンド家は妬まれていた。
     嫉妬に駆られたものたちと闇に蠢くものたちの思惑が絡みあった結果、再びヒューベルトが自ら取り調べをする羽目になっている。五年前と同じ館を使っているが、使っている部屋も待遇も何もかも違う。端的にいって明るくて心地が良い。一番の違いは弁護人が同席していることだ。キッホルの紋章保持者は親友であるローレンツの隣に座り、珍しく黙っている。
    「貴殿が静かにしていると些か調子が狂いますな」
     だがヒューベルトはフェルディナントの外聞を気にしないところが好きだ。必要だと思ったら躊躇しないところが自分とよく似ている。正反対と言われながらも彼に惹かれたのはそういうことだろう。
    「揶揄わないでくれたまえ」
    「事実を申し上げたのみです。ではローレンツ殿、まず……フェイルノートに嵌っていた紋章石の行方について心当たりはおありですかな?」
     ヒューベルトの言葉を耳にしてもローレンツは顔色ひとつ変えなかった。英雄の遺産や神聖武器を手に入れるため、闇に蠢くものたちは戦闘終了後にデアドラに乗り込んでいる。だが結果は芳しくなかった。
    「私の親友をクロードの身代わりに仕立て上げようという動きは看過できない」
     フェルディナントはそう言うが、グロスタール家が先んじて確保していたと言う噂もある。



     クロードがローレンツの知らぬ何かを仕掛けてからフォドラを去ったことは、想像に難くない。遅効性の毒が今頃になって効果を発揮したということだろうか。そう言うことなら、ローレンツはクロードに代わってヒルダを守らねばならない。最後まで彼と共にいたヒルダが知らぬうちに悪巧みに巻き込まれている可能性がある。
    「他家が保管しているものについて、僕は関知していない」
     グロスタール家はテュルソスの杖以外にもいくつかの神聖武器を管理していた。クロードから帝国相手に総力戦はしない、と言われていたが独自に爪と牙を研いでおく必要はある。ローレンツはフェルディナントが淹れてくれた紅茶に口をつけた。彼は同じ湯で先にヒューベルトのためにテフを淹れたのできっと安全だろう。
    「フェイルノートとフライクーゲルをエーデルガルトから取り上げたのはアランデル公自身ではないか」
     素直なフェルディナントの声には苛立ちが混ざっている。武具に詳しくキッホルの紋章を持っている彼がデアドラが陥落した際、武装解除を担当していた。彼以外にフェイルノートとフライクーゲルに触れるのはリンハルトとエーデルガルトしかいない。両名とも戦闘終了後はやることが山積みだった筈だ。自然な役割分担と言える。
    「フェルディナントくんが検分した時は特におかしな点はなかったのだろう?」
     デアドラ育ちでないとしてもクロードはあの水の都を愛していた。デアドラを守るための戦いで、彼が死力を尽くさなかったとは考えがたい。だが───
    「そのように見受けられた。だがエーギル家には残念ながら英雄の遺産や神聖武器の類は伝わっていない」
    「それでは確かに知識不足は否めませんな」
    「二人ともクロードが作り出した奴自身の虚像に惑わされている。君たちはデアドラで奴に勝ったのだ」
     ローレンツは思わず声を荒げた。二人とも相手がクロードでなければとっくに結論に辿り着いている筈だ。
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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    16.鷲獅子戦・下
     ローレンツがグロンダーズに立つのは二度目だ。一度目はローレンツの認識からすると五年前でベレト率いる青獅子の学級が勝利している。敗因は堪え切れずに飛び出してしまったローレンツだ。更に危険な実戦で囮をやらされた時に堪えられたのだから今日、堪えられないはずはない。

     赤狼の節と言えば秋の始まりだが日頃山の中の修道院にいるので平原に下りてくると暖かく感じた。開けた土地は豊かさを保証する。グロンダーズ平原は穀倉地帯でアドラステア帝国の食糧庫だ。畑に影響が出ない領域で模擬戦は行われる。模擬戦と言っても怪我人続出の激しいもので回復担当の学生はどの学級であれ大変な思いをするだろう。

     ベレトが持ってきた地図を見て思うところがあったのかクロードは慌ててレオニーとラファエルを伴って教室から駆け出し書庫で禁帯出のもの以外グロンダーズに関する本を全て借り上げてきた。皆に本を渡し地形描写がある物とない物に仕分けさせた。この時、即座に役に立たない本だけを返却させている。情報を独占し他の学級に無駄足を踏ませた。クロードのこういう所がローレンツは会ったこともないべレスから疎まれたのかもしれない。
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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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