Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    サユリ

    @yurika_tamago

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 37

    サユリ

    ☆quiet follow

    彷徨う魂 ポプダイ?

    ハロウィンに突撃されるポプのはなし。

    ##ポプダイ

    彷徨う魂彷徨う魂


    「とりっくおあとりーと!」
     バッタンと大きな音を立てて研究室の扉が開かれる。視線を向ければ、カボチャ頭。顔は見えないが、くぐもった声でダイだとわかる。
    「あー、ハロウィンか」
    「いまは子どもじゃなくたって仮装するんだって」
    「あーね、姫さんが好きそうな祭りだわな」
     顔付きの大きなカボチャ頭に、仕立ての良さそうなシャツ、黒いマントに、燃えるランタン。彷徨う魂ジャックオランタンの仮装だろう。短パンから見える膝小僧が眩しい。凝った作りの衣装だ。きっと姫さんに着せられたんだろう。
    「ねえ、お菓子くれなきゃ悪戯するよ!」
    「お菓子、ねぇ……」
     楽しそうにころころ笑うダイを横目に視線を走らせる。ここはパプニカにあるポップの研究室だ。雑然と魔術書やらマジックアイテムやらが積み上がっている。どう考えてもお菓子があるような場所じゃない。ふむ、と考えていると、ダイがこっちを覗き込んでくる。
    「ねー、お菓子は?」
     けっこうぶかぶかのカボチャ頭のせいで顔は見えないが、ニヤニヤと笑いを含んだ声がする。
    「無いなら、悪戯しちゃうよ!」
    「……確信犯だな、オメー」
    「ふふ、バレた?」
    「てめ、」
     ふと閃いて、デスクの引き出しを漁る。奥の方から丸い缶を引っ張り出して、ダイに押し付けた。
    「これでいいだろ?」
    「……えー」
    「あんだよ、お菓子だろーがよ」
    「保存食のクッキーって……ちょっと酷いよ、これ」
     ダイに押し付けたのは、保存用のクッキーだ。研究中に食事の時間がもったいない時にたまーにつまむクッキーで、保存が効く分、ぶっちゃけあんま美味しくない。ダイも明らかに不満の声を漏らしているが、知らね。
    「広く言えばお菓子だろーが。缶ごとやるから、それでいいだろ」
    「ちぇっ!まあでも、しょーがないな。決まりだしね」
     ダイは、抱え込んだ缶の中からクッキーを摘み出し、カボチャの口に放り込む。次々とクッキーを放り込み、もぐもぐ口を動かしているのを見る。まあ、こういうお祭りは島育ちには珍しいだろう。来年は菓子くらい用意してやろうかな。今からでも、かわいい恋人の悪戯くらい聞いてやろうかなと思ったとき、カボチャの奥からポツリと呟きが漏れた。
    「命拾いしたね、お兄ちゃん」
    「えっ」
    「うわーん!ポップー!」
     バンと大きな音を立てて背後の窓が開く。聞き覚えのある声にとっさに振り向くと、空中に浮かんだダイがいた。ひゅっと息が呑む。
    「ひどいんだよレオナったら!仮装の日だからって、メイド服着せようとするんだ!逃げてもすっごい追っかけてくるし!ねえ匿って!!」
     ぴょんと窓枠を飛び越えて、いつもの服装のダイが飛びついてくる。子供体温のダイが抱きついてきて暑いはずなのに、冷や汗がした。
    「おまえ、仮装は」
    「してないよ!逃げるのに必死で……ポップ、どうしたの、顔色、悪いよ?」
     覗き込んでくるダイはいつものダイで、じゃあ、さっきまでの、アレは? ゾッと血の気がひいて、体が震えてくる。だって、あんなにそっくりで。震えたまま、恐る恐る扉のほうを振り返った。

     空っぽの缶がひとつ、床に取り残されている。カボチャ頭は、もう居なかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖😭💖💖💖💖💖🎃😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    サユリ

    DONEポダポ。はじめてのちゅーはレモン味がするとかしないとかいう話
    レモン味 ふたりっきりの部屋の中、ベッドの上で、はじめてキスをした。ちゅ、って軽い音がして、ポップのくちびるが離れる。ポップが頭を撫でてくれるから、その手に懐きながら口を開いた。
    「すっぱくないね」
    「うん?」
    「はじめてのキスって、レモンの味がするんだろ? でも、すっぱくなかった」
     首を傾げたおれに、ポップが笑いだす。
    「たとえだよ、たとえ。実際には味しなかったろ」
    「うん。ポップのにおいがしただけだった」
    「……くさいんか、おれは」
    「ちがうよー。おまえのにおい、おれは好き」
     そっと離れようとするポップに、ぎゅっと抱きつく。
    「いちばん近くにいけるから、いっぱいにおいするんだよ」
     ちょっと上の方にあるポップの顔に近づいて、頬を包んで、ちゅっとキスをした。ふに、って唇が柔らかいのを感じながら、すぅっと息を吸い込んだ。ポップのにおいが頭の中をぐるぐるする。ふらりと傾いだおれの頭を、ポップの手が支えてくれた。するすると髪を撫でてくれる手は大きくて、息ができなくて、はふ、と、唇を離す。それでもポップから離れがたくて、息が掛かるような近さで抱き合ったまま口火を切った。
    815

    recommended works