寒い日 凍えるように寒い日は、暖炉に火を焚べる。毛足の長いラグの上に大きなクッションを並べて、そこに並んで座るんだ。お盆に温かい飲み物をなみなみ注いだマグカップ。部屋があたたまるまで、隣にいるお前を抱きしめる。島育ちで筋肉質な育ち盛りの身体はぽかぽかと温かく、さながら湯たんぽのように身体を芯まで温めてくれるのだ。「しょうがないね」って笑って、おまえはおれの腕の中。ころころと笑いながらあまいココアをちびちび飲み込む。おまえのマグカップが空になるまで、ぎゅうぎゅうと抱きしめて揺れていた。
しばらくすると部屋は十分に温まり、おまえは空になったカップから唇を離して、外を見ていた。ちらちらと雪が舞いはじめている。びゅーびゅーガタガタ窓枠が揺れていた。ひゅうと隙間風が吹き込んでくる。
「まだ寒いね」
「運動すればあったくなるんじゃねーの?」
「運動?」
「そ」
不思議そうに見上げてきたおまえの唇に吸い付いた。あまいあまいココアの味。口の中ぜんぶ舐めてやって、ぷは、と口を離した。
「……おまえ、ほんとしょうがないね」
呆れたようにくすんと笑うおまえの手からカップを取り上げて、隅に追いやる。ラグの上にころんと転がしてやれば、もう熱い息を吐いて物欲しげにこちらを見上げてくるのだからたまらない。ちらちらと欲の炎がおまえの瞳の中で燃えている。期待に応えるように唇を落とした。
寒い夜には、火を焚べる。おまえの欲に火をつける。
寒い日には熱い夜。