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    yoi__oskt

    @yoi__osktのぽいぽい
    供養や練習、エロを載せる予定です

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    yoi__oskt

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    散文も散文、ご都合設定です。「私」の名前も職業もフィクションです。
    書きたいとこだけ勢いに任せて書き殴りました。後からひっそり消すかもしれませんが、練習も兼ねてポイします。
    今書いてる話を一旦おいて書き始めるくらい衝撃うけた……タオル騒動じゃん……
    米騒動、オリンピック騒動、セーター騒動にタオル騒動………おさきたisリアルってことですね…

    #治北
    theNorthOfTheCountry
    #腐向けハイキュー
    haikyuuForRotten

    とある日のおにぎり宮にて 営業の仕事をしている私は、お昼を外で済ませることが多い。
     地方の営業所から赴任してきた三年前の春、なんとなく入ったお店がまさか行きつけになるなんて、あの時は思いもしなかった。
     あれは先輩と離れ、初めて一人で外回りをした時のこと。
     美味しいお店はおろか、地形や周りの建物すら把握しきれていなかった私が、会社から近いしとにかく何か胃に入れたい! と選んだお店が、このおにぎり屋さんだった。
     
     今や私はすっかりこのお店——おにぎり宮の虜となり、週に三回は足を運ぶような、立派な常連客となっている。
     ピリ辛胡瓜のおにぎりやってるかな。今日はなんの味噌汁だろう。だし巻き玉子とひじきの煮物も頼んじゃおうかな。
    「こんにちはー」
     わくわくしながら引き戸を開けると、普段は賑やかな声にかき消され、あまり聞こえないはずの音楽が良く聞こえてきた。腕時計に目をやると、開店時間とほぼ同時の時刻を示している。お昼時にしては少し早いので、どうやら私が一番乗りらしい。
    「お、いらっしゃい!」
     店内に漂う美味しそうな匂いと共に、朗らかな笑みを浮かべた男性が近付いてきた。人当たりの良さそうな彼は治さんと言って、この店の店長さんをしている。
    「今日も外回りですか? お疲れさんです」
    「そうなんです、最近外回りばっかで」
    「暑い中大変ですねぇ。せや、良かったらこれどうぞ」
     キンキンに冷えたおしぼりを差し出され、お礼を言って受け取る。断りを入れてから汗ばんだ首元を拭うと爽快感が駆け巡り、火照った身体がいくらか落ち着いたような気がした。
    「すみません、汚しちゃって」
    「気にせんといてください、これもサービスのうちやねんから。おっちゃんらなんか、はよおしぼり寄越さんかい! て言うてくるんすよ?」
    「ふふ、貰う気満々なんですね」
    「贔屓にしてもろてるし、ええ人らなんすけど、時々遠慮っちゅうもんを知らんのかいって突っ込みたなりますわ。いやほんまにむっちゃええ人らやし、大事なお客さんやからかまへんけど————」
     談笑しながら店内に目を向けると、カウンターの向こう側に見知った人がいた。ひょこりと顔を出している彼は、北農園という大きな農園の代表者さんだ。
     北さんは私に気付くと軽く頭を下げた。私も挨拶を、と頭を動かすと、北さんは口元に人差し指を置いて薄く微笑む。そうして、音も立てずに此方に向かってきた。
     あ、北さん悪戯しようとしてる。
     話を続ける治さんは、背後から手を伸ばす北さんに気付いていない。
    「おい、佐藤さんの貴重な時間なくなってまうで」
    「うわっ!」
     突然ぽん、と置かれた手のひらと、真っ直ぐ届くしゃんとした声。背中を叩かれた治さんの肩が大きく跳ねる。
    「ふ……おまえ、驚きすぎやろ」
     びくう! といった効果音がつきそうなほどの盛大なリアクションを見た北さんは我慢できなかったらしく、けらけらと楽しそうに笑った。
    「ちょお、普通に声掛けてくださいよ……心臓飛び出るか思ったんすけど!」
    「はは、すまんかった。せやけど、ほんまにはよせな。佐藤さんの時間どんどんなくなるで」
    「そうすよね、それはあかんわ。佐藤さんすんません、なんにします?」
     叱られた子犬のような表情で前掛けのポケットから小さなメモ帳とペンを取り出した治さんに、かえって私が慌ててしまう。
    「あっ、今日はこのまま直帰なので、ゆっくりで大丈夫ですよ!」
     顔の前で手を振ってみせると、治さんはほっとした様子で笑みを浮かべた。
     
     
     立たせっぱなしでほんますんませんでした、いつものとこでええです? と小上がりの奥に通され腰を下ろすと、程なくしてお冷を持った治さんが現れる。その後ろから北さんも現れて、今ちょっとええですか? と声を掛けられた。
    「これ、もろて欲しいんです」
     テーブルの上に、ご挨拶、と書かれた熨斗が掛けられたタオルが二つ並べて置かれる。うち一つはこのお店のもので、もう一つは北さんが営んでいる農園のものだった。
    「それと、これも」
     今度は治さんから、縦長の箱が差し出される。開けてみてくださいと促され箱を開けると、紅と白の大きな饅頭が二つ入っていた。
    「わぁ、ありがとうございます。お祝い事ですか? もしかして、二店舗目が出るとか?」
     尋ねると、二人は顔を見合わせる。なんだろうと思い二人を見ていると、照れ笑いを浮かべた治さんが口を開いた。
    「実は俺たち、ついこの間籍入れまして……」
    「え! そうなんですか!?」
    「はい。籍入れたっちゅうか、宣誓書を提出したっちゅうか……」
    「どちらにしてもおめでたいことじゃないですか。すごいです、おめでとうございます……!」
    「ふふ、ありがとうございます」
     治さんが帽子を取って頭を下げると、北さんも続いて頭を下げる。私も二人に倣って頭を下げた。
     この二人がお付き合いをしていることは知っていたし、心から応援していた。だから、まるで自分のことみたいに嬉しくて。
     むずむずとした気持ちのまま二つ並んだタオルに再び目線を落とすと、あることに気が付いた。
     あれ? 水引が蝶結びだ。なんでだろう。
     不思議に思いながら眺めていると、それが表情に出ていたのか、治さんがにこにこと笑みを浮かべる。
    「こういう報告て、ほんまは結び切りとかあわじ結びなんやろうけど、今日初めてうちに来てくれはる人も居るやろうから。皆さんとの縁が途切れることなく続いていきますようにって意味で、蝶結びにしたんですわ」
     一回きりの報告やし、結び切りでもええやないですかって俺は言うたんですけどね、と笑う治さんの脇を北さんが軽く小突いて窘めた。あほ、こないなとこで惚気んな、と苦い顔をする北さんの耳が赤い。
     ああ、なんだかんだで北さんも照れてるんだろうなぁ。
    「そういう意味も込められてるんですね。素敵です、ほんとに。なんかもう…お二人のことずっと仲良いなぁ、お似合いだなぁって思ってたから嬉しすぎて……」
    「こじつけっぽくなってまうかなぁ思てたんすけど、大丈夫かなぁ」
    「こじつけとか思わないですって、皆さんきっと喜んでくれますよ」
    「そうやとええけど……」
    「私が保証するんで! 大丈夫!」
    「ふふ、随分きっぱり言い切るやないですか」
    「佐藤さんに言われたら心強いわ、おおきに」
     二人から笑われて、途端に恥ずかしくなる。気を取り直して注文をお願いすると、すぐお作りするんで、ゆっくりしとって下さい、と治さんが厨房に入っていく。北さんも治さんの後に続いた。
     
     少しすると、がらら、と引き戸が開く音がして、お客さんが店内に入ってきた。厨房で調理をする治さんの代わりに北さんが接客をするのも、もうすっかり見慣れた光景だ。
     私はその様子をぼうっと眺めながら、ずっと二人のことを考えていた。色々なことを思い出して、思わず転げ回りたくなってしまう。
     いや待って、こんなのどうしたってにやけちゃう。だってだって、あの二人が!

    ⿴⿻⿸

     おにぎり宮に通うようになって一年半を過ぎたあたりから、私たちは色々な話をするようになった。歳が近いこともあって、話の内容には困らない。
     とはいえ二人の邪魔をしていないか、すごく心配だった。正直にそのことを打ち明けてみると二人が笑いながら否定してくれたので、安心して話をすることが出来ている。
     二人が恋愛関係にあるというのを知ったのもそのくらいの頃で、お互いに対するちょっとした悩みや惚気(主に治さんの)を聞いたりすることがあった。
     そんな中、治さんからとある話をされたのは、去年の夏のことだった。

     お店のランチタイムも終わりかけ、一旦閉店する時間帯にギリギリで駆け込んだ私以外には、お客さんがいなかった。
     いつものように小上がりの奥でおにぎりを食べていると、片付けやら夕方分の仕込みやらを終えた治さんが此方に来て、お冷のお代わりを持ちながら向かい側に腰を下ろす。
    「俺ね、北さんにプロポーズしたことあるんです」
     突然の爆弾発言に、私は驚かなかった。爆弾を浴びるのは二回目だったからだ。けれど驚いた風を装って、「ええ! それで、北さんはなんて?」と先を促す。
    「や、返事は貰われへんかったんです。ちゃんとしたプロポーズやなかったし、しゃあないかもしれんけど。……自分の店持つって腹括った時から、米も野菜も北さんとこの使わせてもらおう思てて。やから生産契約結んでくれませんかって、言うたんです。俺は遠回しにプロポーズしたつもりやってんけど、北さんには伝わらんかったみたい」
     私はその話を聞いて、いつか伝わるといいですね、とだけ言った。
     治さんは恥ずかしそうに耳の後ろを掻きながら、
    「もっとええ男なってから、改めてプロポーズします。北さんにふさわしい男にならな、恥ずかしくて言われへんから」
     と笑った。
     いや、北さんに伝わってますよ。喉元まで出かかったのを必死に飲み込む。気を抜いたら口からぼろっと出てしまいそうなくらい、言いたくて堪らなかった。けれどそこまで出しゃばったらいけないと思って、ぐっと堪えた。
     治さんより先に、北さんから話を聞いていたということは、私の中だけにしまっておくことにした。

     それは、治さんから話を聞いた、ふた月前のことだ。
     残業を終えて、夜遅くに訪ねた日。治さんは他のお客さん相手に忙しそうにしていて、珍しくカウンターに通された私は、飲みに来ていた北さんとたまたま隣になった。
     最初の方は当たり障りのない話をしていたのに、北さんは顔色ひとつ変えずに日本酒をハイペースで呷りながら、当たり障りのない話の延長とでも言うように、それはそれは大きな爆弾を落としてきた。
    「俺、治からプロポーズしてもろたことあるんです。あいつが店やるて決めた時やから、もうだいぶ昔の話なんやけど」
     え!? と思い話を遮る。
    「ま、待ってください北さんそれ、私が聞いていい話なんですか」
    「佐藤さんならええかなて。惚気やと思って、聞いてくれへん?」
     流し聞きでええから、と言われて頷くと、北さんはおおきに、とまた日本酒を流し込む。
    「……生産契約結んでくれて言うだけやのに、あいつ死ぬんちゃうかて心配になるくらい、真っ青な顔しとって。そんなん見せられたら別の意味があるんちゃうかって、思うやないですか。生産契約を結ぶっちゅうことは、仕事においてももっと密接な関係になるっちゅうことやし、そう簡単に切れるもんでもないし」
    「それで、プロポーズだと思ったんですね?」
     思わず口を挟むと、北さんが笑いながら頷く。
    「けど俺、わざと気付いてないフリしてんねん。お前のすごいとこもっと見せてくれ、俺の自慢やてもっと胸張らせてくれって、思うてて。……あ、今言うたこと治には内緒にしといてな、」

    ⿴⿻⿸
     
     やばいやばい、思い出したらまた興奮してきた。もどかしいって思いながら見てた二人がついに…! これは絶対にお祝儀包まなきゃ。いくら包めば良いんだろう。
     興奮を抑え物思いに耽っていると、美味しそうな匂いが漂ってきてはっとする。
    「すんません、お待たせしましたー!」
     治さんの明るい声と共に、握りたてのおにぎりや日替わりの味噌汁、お祝いのつもりで多めに注文した小鉢数種類が運ばれてきた。匂いを吸い込むと空腹を思い出し、急いでおにぎりにかぶりつく。
     美味しい。いつも美味しいけど、今日は一段と美味しい。
     黙々と頬張っているうちに、無意識に鼻を啜っていた。視界もぼやけている。ぼやけた視界のままで周りを見ると、店内には沢山のお客さんが居た。
     各テーブルには熨斗付きのタオルと紅白饅頭が置かれており、店内は二人の発表による祝福ムードで、いつもより賑わいを見せていた。

     
     食事を終えて会計を済ませ店を出ようとすると、あ! と小さく叫んだ治さんに呼び止められる。ちょお待ってて、と慌てて厨房に引っ込む治さんを見送って、会計をしてくれた北さんと一緒に、治さんが戻ってくるのを待つ。
     治さんはすぐに戻ってきた。「これ持ってって」と手に持っていた袋を差し出される。中を覗くとパックが二つ入っていて、どちらにもぎっしりとお惣菜が詰められていた。
    「ちょっと治さん! こんなに沢山いただけないです。今日は私がお祝いしなきゃいけないのに……」
     財布を取り出そうとすると、治さんの手がそれを阻んだ。
    「ええんです。佐藤さんには色々話聞いてもろてたし……ずっと俺らんこと見ててくれはったでしょ? せやからこれはほんの気持ちです。受け取ってください」
     言われて、じわ、と込み上げてくるものがあった。大きく頷いてお礼を言うと、治さんがにっこりと笑う。
    「また食いに来てくださいね」
    「…っ、はい」
     改めてお祝いの言葉を述べ、深く頭を下げて店を出る。二人は何も言わなかったけれど、私はきっと涙目だった。
     
     夜になって、帰り際に渡されたお惣菜を食べながら店でのことを思い出して、私はまた泣いた。
     どんな時でも感謝の気持ちを忘れない二人。自分たちの努力があってこそ成し遂げられたことでも、二人はまず一番初めに、周りへの感謝を口にする。ただ思うだけじゃなくて、その思いをきちんと伝えることが出来る二人。今日だってそうだった。
     そんな二人が、周りから愛されないわけがない。

     祝福の言葉が飛び交う大賑わいの中、小上がりの奥で一人こっそりと泣きながら食べたおにぎりの味を、私はきっと生涯忘れないだろう。
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