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    lv_mnm014

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    lv_mnm014

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    2/9 VRF 虎トウオンリーにて配布いただいたスリロマアンソロ(無配)を公開させていただきます。あろさん、お誘い頂きまして、本当にありがとうございました☺️

    バレンタインの2人のお話です。
    細かいところはご容赦ください!

    チョコレートの悪戯「今日はバレンタインなので」
     そう前置きをした錬金術師の助手が、ウキウキとした様子で木製の机に四枚の皿と同数分の白いカップを置いた。カップの中からは既にベルガモットの爽やかな香りが漂っており、どうやら「三時のおやつは絶対に紅茶」と主張する師匠に従い、アールグレイを用意したらしい。
     次の宿場町までの道程を地図で確認していたトラオは、その香りに誘われるように顔を上げた。四枚のツヤツヤとした皿の上にはキラキラという効果音が聞こえてきそうな程に見事なチョコレートケーキが乗せられており、さあ食べてくださいとでも言わんばかりであった。
    「今日はケーキか」
    「はい、バレンタインデーなので!」
    「……その、"ばれんたいん"ってのは何だ?」
    「え!?」
     部屋備え付けのキッチンに戻ったハルカが、手にフォークを握りしめて戻ってくるも、トラオの発言に有り得ないとでもいうように目を見開いた。その瞳は左右色が異なり、トラオ達が四人で旅をすることになった要因を思い起こさせてくる。
    「トラオさん、知らないんですか!?」
    「俺たちの村にそんなものはなかった」
    「ええー!?」
     そんなに非常識なことだっただろうか。四人の出会いの発端となる大事故の記憶が無いらしいこの青年の反応にトラオは眉を寄せると、睨みつけるようにじろりと視線を動かした。知らないのだから仕方がないのだと言ってやりたいが、なんだかそれは無知を認めたようで腹立だしい。
    「バレンタインは、チョコレートの日なんですよ」
    「ケーキじゃなくて?チョコレートを食えばいいのか?」
    「いや、そうじゃないんですけどぉ……。えぇっとー、そのぉ……」
    「…………」
     言い返したくなる気持ちをグッと抑えて聞いているのに、意気揚々と喋りだしたハルカの声は段々と小さくなっていく。自身より幾分か年若い青年を待つつもりで手元の地図をテーブルに下ろすも、真っ直ぐにトラオを見ていたはずのハルカの瞳はゆっくりと逸らされ、陶器のように白い肌が苺のように真っ赤になっていくだけであった。
    「ハルカをいじめないで」
     その状況がしばらく続き、あのそのえぇっと……を聞き続けたトラオが口を開いたのと同時に、ピシャリとした固い声がトラオの耳に飛び込んだ。
    「いじめてないだろ。ハルカから言い出したんだ」
    「せ〜ん〜せ〜〜!!」
    「あ。おい」
     別室で新しい術式をまとめると言っていたミナミが、いつの間にか部屋の中にいた。トラオは地図を畳みつつ、あまりにも見当違いなミナミの発言を訂正しようと振り返るも、こちらを睨む不機嫌そうな様子に口を噤んだ。どう見ても勝てそうにない。
    「俺は"ばれんたいん"とやらについて聞いてただけだ。ハルカが言い出したから」
    「あぁ、なるほど。バレンタインがない地域の方なんですね」
    「悪いかよ」
    「いいえ、別に」
     トラオから逃げ出すように飛びついたハルカの背中を、ミナミが宥めるように撫でている。全く、ハルカにだけ甘すぎる。どう考えても理不尽な態度を取ってくるミナミにトラオは舌打ちがしたくなるも、大人としてその気持ちを落ち着かせるため、未だ目の前でゆらゆらと踊る湯気を勢いよくあおった。
    「あっつ!!」
     ぐいっと一口。どうみてもまだ熱さが残っていた中身は、トラオの口内を熱してヒリヒリとした違和感を残していった。
    「ああ!トラオさん、猫舌なのに!!」
    「あら」
     そんなトラオを見た二人の反応は全く異なり、心配そうな顔で駆け寄ってきたハルカに対して、ミナミはゆっくりと左隣に座っただけであった。挙句の果てには、トラオを痛めつけたその熱い紅茶を優雅に嗜み始めている。
    「大丈夫ですか?」
    「〜〜ッ。だ、大丈夫だ。慣れてる」
     オロオロと眉を下げ、トラオを案じながら斜め前に着席をしたハルカに、トラオは左手を挙げてアピールをする。実際、舌がヒリヒリとするだけで上顎や頬の裏は無事なのだから大したことはない。
    「……バレンタインですけど」
     ハルカとトラオのやりとりが目に入っていないのか、いつのまにか皿の上に乗せられていたフォークを手に取ったミナミが、茶色い宝石にその先端を突き刺しながら口を挟んだ。相変わらず自分のペースで物事を押し進めてくる錬金術師はチョコレートにコーティングされたふわりとしたホイップを小さな口に押し込めると、興味なさげにトラオへと視線を移した。
    「チョコレートを渡して好きな人に想いを伝える日です」
    「は?」
    「まぁ、これは単純にハルカが食べたかっただけでしょうけど」
     そこまで一気に捲し立てたミナミはフッと口元を緩めると、視線をケーキに戻しながら、もう一度フォークを突き立てた。ミナミの言葉に「毎年この日は、チョコレートケーキを食べてるじゃないですか」だなんて呑気に笑うハルカの声が遠くに聞こえる。

     ――チョコレートを渡して好きな人に想いを伝える日。

     それってつまり。
    「告白をする日ってことか?」
     和やかなおやつタイムを始めた錬金術師たちを無視して、トラオは素っ頓狂な声をあげた。ようやくハルカが口を割らなかった理由がわかったが、それはあまりにも初心すぎるのではないだろうか。
    「そう言ってるじゃないですか」
    「ハルカはこんなことでモジモジしてたのか」
    「別に良いじゃないですか!恥ずかしかったんです!!」
     ニヤニヤと笑いながらようやく湯気が消えた紅茶のカップを持ち上げると、トラオの言葉にまた顔を真っ赤にしたハルカが反論してくる。ミナミはアレだが、ハルカは揶揄いがいがあってなかなかに可愛らしい。そんなことを思いながらプンスカと頬を膨らませているハルカを横目に紅茶を啜ると、ちょうどよい温度の爽やかな柑橘系のフレーバーが口の中いっぱいに拡がり、トラオはほっとしたように喉奥へと流し込んだ。
    「あ」
    「どうした?」
    「トウマさんは?」
    「……あぁ」
     おやつの時間ももう十分近くが経過しようとしているが、四人席のうちの一つは未だ空白のままであった。少し心配そうな顔をするハルカにつられ、トラオはトウマがいるであろう寝室へと視線を移すと小さく溜息を吐いてカップを置いた。全く来る気配がないとは思っていたが、そんな心配するような状態でないことは自分が一番わかっているのだ。
    「多分、まだ寝てる」
    「えっ」
    「久しぶりの大きな町に大喜びしてたからな」
     今回の宿は大きな宿場町にあるということで、昨晩は四人で食事をした後にトウマと二人で賭場に行って酒を飲みながら遊んだのだった。トウマはその町ごとに訪れる出会いをとても楽しみにしているから、酒を流し込んではポーカーに勤しみ、そこで初めて顔を合わせた相手と肩を組んで満面の笑みを浮かべていた。
     トラオはそんな彼の様子を思い出すと、固い木の椅子から腰を上げた。昨晩はトウマよりも早く眠気が訪れてしまったから先に宿に戻ったのだが、賭場に置いてきた彼が寝室に帰ってきたのはトラオが朝起きた十時頃だったのだ。
    「起こしてくる」
    「分かりました!あ、でも起きないようでしたら、そのままでも大丈夫ですよ。ケーキは冷蔵庫に入れておくので」
    「わかった」
     丸々と残った二つ分のチョコレートケーキ。トウマが来てから一緒に食べようと思っていたから、トラオは一度もフォークをつけなかった。トウマを起こして、二人でこの宝石を堪能したい。そう思ったトラオは錬金術師とその助手へひらりと手を振ると、相棒が眠る寝室へと足を向けた。


    ◆◆◆


     ガチャリ。ドアを開けて二人の寝室へ足を踏み入れると、予想通りベッドの上に丸まっている相方を見つけた。こんな時間まで寝てしまっては、また寝られなくなるだろうに。そんなことを思ったトラオは小さく溜息を吐きながらこんもりと盛り上がった布団の横に腰を下ろすも、規則正しく上下する肩とほんの少し開いた口元にクスリと笑みを浮かべた。

     ――犬みたいだ。

     ミナミの依頼だった賢者の石を投げ捨ててから、何故だかトウマに対する想いが変わったような気がするトラオは、ソワソワとする胸元をぎゅっと握りしめると、深呼吸をする時のように深く息を吸った。幼馴染として兄弟のように思っていたはずなのに、最近はなんだかむず痒い気持ちにさせられる。
    「トウマ」
     正直ずっと眺めていたいが、ハルカに戻ると伝えてしまった以上起こさねばならない。トラオは吸い込んだ息を吐き出すようにトウマの名を呼ぶと、目の前のベッドに腰を下ろして、掛布団に包まるその肩をゆさゆさと揺らし始めた。
    「とーおーまー」
    「ん〜〜〜〜」
    「ったく。起きろって」
     何度揺すっても起きる気配のないトウマが、トラオの指を掴んだ。起こされているという事実は理解しているらしく、にゃむにゃむと動く口は必死に抵抗の言葉を吐き出している。
    「やめろぉ……」
    「だめだ、起きろ」
     寝入ったトウマがなかなか目を覚まさないのはいつものことだが、昨日は自分が遅くまで遊んでいたのだからいい加減にすべきだ。緩く掴まれた指を抜いて、今度はこちょこちょと顎の下を擽ってやると、「うう……」と小さく唸ったトウマがようやく重たい瞼を上げた。
    「……な、にぃ」
    「もう三時だ。いい加減にしろ」
    「さんじ……」
    「あぁ、ハルカがケーキを用意してたぞ」
     とろんとした瞳を虎於に向けたトウマはゆっくりと瞬きをすると、「けぇき」と掠れた声で呟いた。どう考えてもまだ覚醒までは程遠く、状況把握はできてなさそうである。
    「……けぇきってなに?」
    「ケーキはケーキだろ。チョコレートケーキ」
    「ちょこれぇと、けぇき……」
     受け答えとは言い難いが、トラオの言葉を反芻するその姿にそっと目を細めて、ゆるりとトウマの輪郭を撫でる。懐かしい。十年以上前から続くこの見知った光景は、あの時も今も全く変わることがないらしく、「もっと」と言うように突き出される無意識な顎にトラオはふふっと口元を緩ませた。
    「バレンタインだからって言ってたぞ」
    「ばれん、たいん……」
     どうせ分からないと思ってつい先程覚えた"バレンタイン"というワードを出してみると、予想通りトロトロとした舌足らずな声で同じ言葉が繰り返される。
     トウマだけが知らない少し浮かれた馬鹿みたいな日。ロマンチックな彼が知れば、目を輝かせることは間違いないのだが、自分だけが知っているという状態に謎の優越感を感じてしまっていたトラオはふふんと鼻を鳴らすだけで、それ以上言葉を続けることはなかった。しかし――。
    「……バレンタイン?」
     数秒後、直前までぼやぼやとしていたトウマが、ハッとしたように言葉を呟きながら目を見開いた。その双眸はどう考えても"バレンタイン"という言葉に反応したようで、驚いたトラオはぱちぱちと目を瞬かせた。
    「トラオ!」
    「な、なんだ?」
    「バレンタイン!!」
     勢いよく飛び起きたトウマが、トラオの膝上に身を乗り出してキラキラとした顔を寄せてくる。かわ……じゃなくて近い。トラオは反射的に出てきた浮ついた感想を急いで打ち消すと、逃げるように身体を真後ろへと仰け反らせて、困惑した表情を浮かべた。
    「なんだって?」
    「だーかーら!バレンタイン!!」
     トラオの行動に一切の疑問を抱くことがなかったらしいトウマが、裸足のまま荷物が置いてある部屋の隅へと駆け出していく。
    「おい」
    「待って」
     一体何が起こっているのか分からない。トラオは、遊びに行く時用の小さなポシェットをごそごそと漁り始めたトウマの背中をじっと見つめると、眉根を寄せて唸るような低い声を出した。
    「トウマ」
    「待てって」
     どう考えても苛立ちを押し出した声だったが、ぶつけられた本人は何とも思っていないらしく、振り向くこともなければ、ポシェットの中を探索する手を止めることもなかった。寝起きにも関わらず、トウマはまるで昨日の夜の続きのようにはしゃいでいるから、トラオは仕方なく口を閉じる。
    「……あった!」
     ようやく探し物を見つけ出すことができたらしい相棒は中から小さな箱を取り出すと、ポシェットを乱雑に戻してこちらを振り返った。その顔は何かをやりきる前に見せる小さい頃のトウマそのもので、興奮したようにほんのりと赤く染まった頬にトラオの心が擽られる。
    「トラオ!バレンタイン!!」
    「……は?」
     トラオの名を呼びながら嬉しそうに戻ってきたトウマは、鍛え上げられたトラオの広い胸元にその小さな箱を押し付けると、誤魔化すようにニカッと牙を見せた。小首を傾げて少し恥ずかしそうに視線を揺らすトウマは、トラオの反応を伺っているらしく、くんっと顎を引きながらこの後に続けられる言葉を待っている。
    「バレン、タイン……?」
    「あ、トラオは分かんねぇよな」
     先程まで凪いでいたはずの鼓動が早くなり、平常心を保っていた頬が勝手に熱くなってくる。バレンタインの日にチョコレート。数刻前、共有スペースで聞いたミナミの言葉がゆっくりと頭の中を駆け巡ったトラオは、ぽかんと開いてしまった唇をきゅっと引き締めた。

     ――チョコレートを渡して好きな人に想いを伝える日。

     こんなの期待しない方が難しい。トウマのことは本当に手離したくない大切な相棒だと思ってはいるが、今トラオの中心で爆発しそうな程に暴れ狂う心臓はそれだけではないのだということをはっきりと示して、本心を浮き彫りにしてくる。
    「えぇっと……」
     ありえない、とでもいうように目を見開いてトウマを凝視していると、思い出したかのように目を逸らしたトウマがポリポリと頬を掻きながら口を開いた。その頬はまだ少し紅潮しているように見えて、トラオはごくりと唾を飲む。
    「今日は、お世話になってる人にチョコレートを渡す日だって聞いてさ」
    「へ?」
    「昨日飲んでたおっちゃん達が言ってたんだ。朝、チョコを買って、ちゃんとあのイケメンに感謝を伝えるんだぞーって。……あれ?トラオ?」
     トウマの言葉に全身の力が抜けたトラオは、へなへなとベッドへと倒れ込むと、大きな溜息を吐きながら目の前でグチャグチャになっている掛け布団を掻き抱いた。なんだかよく分からないが、盛大な肩透かしを食らったような気がして、勝手に瞳が潤み始める。
    「トラオー?」
    「……」
    「なーあー、トーラーオー?」
    「……」
    「チョコ、食わねぇのー?」
    「……」
    「なーあー!!」
     トウマからのプレゼントを受け取ることもせず、トラオはただ嗅ぎなれた相棒の残り香を吸い込むと、混乱する頭を整理するため脳みそをフル回転させた。このかき乱された気持ちの答えはどう考えても一つしかない。認めたいような認めたくないような、そんな曖昧な感情が胸の辺りを渦巻いてどうしようかと考えていると、昔よりは遥かに低くなったしょんぼりとしたハスキーがトラオの鼓膜を震わせた。
    「……トラくんのために、買ったのに?」
     ぽつりと寂しげに呟かれたトウマの言葉に、トラオは反射的に顔を上げて振り返った。やってしまった。つい自身のことばかり考えてしまったせいで、一つ年下の幼馴染は痺れを切らしてしまったらしく、幼少期の頃と全く同じ表情を見せて、その場に立ち尽くしていた。
    「トウマ」
    「…………」
    「ありがとう。……俺のため、なんだよな?」
    「さっきからそう言ってるだろ」
     "トラくん"だなんて、いつぶりなのか分からない。
     幼少期にしか呼ばれたことのないあだ名を使う相方は、チョコレートの小箱をもう一度トラオへ押し付けるとスイッと目を逸らした。片手に乗りそうな程に小さな黒い箱には、ワインレッドの鮮やかなリボンが掛けられており、まるでトラオの心を縛って離さないとでもいうかのようであった。
    「悪かったって。ほら、拗ねるな」
     ぎゅっと片手で服の裾を握って唇を尖らせる姿は、あの頃から全く変わっておらず、箱を受け取りながら立ち上がったトラオは言い聞かせるようにむくれた頬をツンとつついた。
    「トウマ、これは後で食べよう」
    「今じゃねぇの?」
    「ハルカがチョコレートケーキを買ってきてるって言ったろ?」
    「……聞いたっけ?」
     やはり寝惚けていた時の会話は全く覚えていないらしいトウマが、首を傾げて不思議そうな顔を見せた。昔からそうなのだが、トウマの拗ねモードは長くは続かない。その諸悪の根源が取り除かれ、次の話題に移ってしまえばあっさりと終わってしまうのだ。
    「言った。ほら、さっさと行くぞ」
    「わわ!俺、裸足だって」
    「今更だろ」
     心配するくらい単純なトウマが愛しくて、つい表情筋が緩みそうになったトラオは誤魔化すように目の前の腕を掴み、そのまま寝室の出入口まで歩いて行った。これからどうしてやろうか。ミナミから頼まれた賢者の石は別として、スリルも、お宝も、巷の話題も全てかっ攫ってきたトレジャーハンターのトラオが、今回の獲物も逃すはずがないのだ。
     バンッと開いた扉の先で、おやつを終えた二人が寛いでいた。まずはこのチョコレートをハルカに自慢して、「好きな奴からもらった」とか言いながらケーキをつまんでもいいのかもしれない。あの純粋無垢な青年であれば、トウマの知らないバレンタインの意味を叫んで、どういうことだと詰め寄ってくれるだろうから、その時のトウマの反応を伺って次の一手を考えればいい。


    ◆◆◆


     そんな少しだけずるい計画を立てているトラオの真後ろで、トウマが顔を上げたミナミに向けて、内緒だとでもいうように人差し指を唇の前に立てた。

     ――二月十四日は愛しい人へ告白をする日。

     ハルカとミナミと一緒で出なければ知る由もなかった秘めたる想いを伝えられるこのロマンチックなイベント。実はトウマも前日、ミナミからこの日について教えてもらっていたのであった。
     はぁ、と呆れたように目を逸らすミナミにトウマは満足気に自身の顔の前から手を下ろした。危うく命を落としかけたあの時に気が付いたかけがえのない大切な人。おそらく頭の中で自身へ向けた色んな計算をしているであろうその横顔を見上げたトウマは、悪戯っ子のような笑みを浮かべると、今度はその腕を引っ掴んで、ハルカが用意した茶色い宝石が待つテーブルへと向かっていった。
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