最強の噂「ねぇ、おじいちゃん。おじいちゃんが呪術師になった時に、めっちゃ強い六眼と無下限呪術の男の人が五条家の当主だったんでしょ?どんな人だったの?当主なら、子どもは?生まれなかったの?」
「憂花は知りたがりだね」
「だって、ものすごく強かったんでしょ?興味あるに決まってる」
「おじいちゃんとおばあちゃん、パンダの先生だったんだよ。先生をしながら、特級呪霊の跋徐任務をこなして、その大変さを微塵も感じさせない人だった。頭も良くてね、術式だけでなくて、フィジカル面も強かった。あれほどの人は滅多に生まれてこないだろう。実際、六眼と無下限呪術の抱き合わせは400年ぶりだったらしい」
「ふぅん?おじいちゃんよりも強かったの?」
「強さの定義にもよるが、強かったよ」
「じゃ、おじさん、おばさんの中に五条悟の子どもがいるんだ?」
この言葉におじいちゃんは困ったように笑った。
「五条悟に子どもはいなかったよ。少なくともおじいちゃんは知らない」
「結婚する前に新宿で亡くなったんだね」
「そういうことかな」
「あ、呪霊がこっち見てる!ちょっと祓ってくるね!」
やれやれとでも言いたげに憂太は駆けていく憂花の背中を見送った。
「あなた。どうされました?」
「あ、真希さん。憂花が五条先生のことを知りたがってね。五条家の中に五条悟の子どもがいるのじゃないかと思っているらしいよ」
「それは、返事に困りますね。まさか、男性のパートナーがいたとは言えませんし…あの子たちがもう少し大きくなって、同性愛について理解ができそうになったら、私の方から七海さんについては話します。私の方が渋谷で一緒に戦いましたし。どんなにまともで、五条悟と共に生徒たちを若人として扱ってくれた数少ない人だったかということを誰かに知っておいてほしいですからね」
***
「おじいちゃーん!あの、いつも嫌なこと言うおじちゃんが、五条悟のことホモだって!オカマだって言った!男に抱かれて喜んでたって!違うよね?!五条悟は最強だったもんね?!」
「最強であることと愛した人が男性だったこととは全く別な話でしょう?おじいちゃんは先生のことを信頼してる。七海さんについてはあまり存じ上げないけど、五条悟を支えて、そのために命を落とした。一級という強い呪術師だったんだよ。憂花がもう少し大きくなるまでおばあちゃんが健在だったなら、きっと話してくれただろうけど。素敵な人だったらしいよ。憂花は誇っていい」
「…よくわからないけど、おじいちゃんがそう言うなら…」
「憂花にもわかる時がくる。それほど遠くない未来に。呪術高専時代の二人の記録や写真もあるはずだから、見せてもらうように頼んでおこう」
「ありがとう!おじいちゃん!もう、嫌なやつの言うことなんて気にしない!」
乙骨憂太は微笑んで、可愛い孫娘を泣かした男に一言申すべく、背筋を伸ばして母屋へ向かって歩いていった。