スイート・スイート・マイ・ハニー ボックスから取り出して口に咥える。左手で風を遮りながらライターを点け、先端に近付ける。二度三度短く強く吸って火を点けたらたっぷり五秒かけて口腔内を煙で満たす。
素朴で深みのある香ばしさと柔らかな甘み、ひんやりとしたメンソールの風味が舌の上に広がって、唇からそれを離した彼は深呼吸をするようにその煙を肺に入れた。
人差し指と中指の間で薄らと白煙が立ち上る。肺の中の煙をゆっくりと吐く。
アメリカン・スピリット特有の匂いが風に乗って流れていくのを、炭治郎はぼうっと眺めている。
彼の通う大学の、三階建ての講義棟の最上階の更に上。滅多に人の立ち入らないこの屋上は彼のお気に入りの場所だった。
構内には他にも喫煙所はあるが、どこも副流煙が充満していて鼻の利く炭治郎が長居するには少々きつい。やや寂れてはいるがこれくらい風通しの良い方が落ち着いて一服できるものだ。
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