持ち帰りで、みっつ 空手着の少年が、ダンと床を踏み鳴らした。
磨きこまれた床は瞬時に音を轟かせるも、すぐさま音を吸いとって何ごともなかったかのように静まりかえる。
稽古中の少年少女がみな一様に蹴りの姿勢でピタリと止まり、音の発生元へ惜しげもなく視線をそそいでいた。
そこへもうひとつ、少年は足を叩きつけた。
「もうヤだ!」
空色の目に涙を浮かべて、身体の両脇につくった拳をフルフルと震わせている。
「はあ? もう終わりかよ」
ダン!
「うっせ! もうやりたくねえ!」
万次郎は床に膝をついて、少年の着崩れた空手着を直し、やおら立ち上がった。
「できねえからってキレんな。ほら、もう一回かまえてみ?」
少年の両手を取り、構えの位置に誘導するも、少年はブンと振り払った。
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