Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    MeltsXIV

    @MeltsXIV

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 24

    MeltsXIV

    ☆quiet follow

    Dragon's Song
    0.5話
    序章後半の少し前辺り

    鎮まらぬ憎しみはやがて悪しき竜を――ルフレ・スターレットの記憶「もうすぐ、人間のいない世界が始まる。ボクらを邪魔者扱いするやつらは、みんな、消えるんだ」 ――そうよ、私たちで人間たちを一掃するの。
     レガリアが完全に解放されれば、世界が滅びる。
     昔、母さんがそう言っていた気がする。
     でも――そんなことは、もうどうでもいい。
     母さんは、いつだって人間と仲良く暮らすことを願っていた。
     だから、ボクもそうしようと決めていた。
       なのに、それなのに。
    「ボクたちが"人間じゃない"、ただそれだけで……母さんは殺されたんだ」
    ――所詮、人間なんて愚かで、生きている価値などないのよ。
     だから――この世界に復讐してやるんだ。

    ――ルフレ・スターレットの記憶
     よく晴れた午後。ルフレは母の代わりに市場へ買い出しに出かけた。
    「挽肉、タマネギ、パン粉……うん、大丈夫」
     買い物袋をのぞき込み、メモと照らし合わせる。忘れ物はない。
     初めてのお使いが成功したのが、少し誇らしかった。
     鼻歌を歌いながら帰る途中、町外れの川で突然、子供の悲鳴が響いた。
    「……誰か溺れてる!?」
     考えるよりも先に、足が動いていた。
     川では少女が流され、岸辺では友達らしき子供たちが必死に叫んでいる。迷っている時間はなかった。
    「大丈夫! 今助けるから!」
     ルフレは荷物を投げ捨て、靴を脱ぎ、もう一つの姿を強く思い描く。
     すると、彼の体は狼へと変わった――ライカンスロープの特性だ。
     流れの中を泳ぎ、少女の襟元をくわえて必死に岸へ向かう。何とか助け上げた時、ルフレは少し安堵した。
    「だ、大丈夫?」
     しかし、その言葉に返ってきたのは――
    「ば、バケモノ……!」
     少女の声は恐怖に震えていた。
     ルフレは凍りついた。何が起こったのか分からない。ただ、子供たちの声でここに居てはいけないことは分かった。
    「そっちに行ったぞ! 絶対に逃がすな!」
     次に聞こえたのは、大人たちの怒声だった。
     全身が冷たくなった。理由なんてどうでもよかった。ただ、"彼らの目がそれを決めていた"。
    「人間のふりをする悪魔め!」
     石畳に叩きつけられる。蹴りつけられる。何度謝っても、何度泣き叫んでも、人々はやめてくれなかった。
    「ルフレ!」
     その時、母の声が聞こえた。
     彼女は大きな狼の姿になり、人々を蹴散らしながらルフレを救い出した。
    「かあさん、ごめんなさい……」
    「話は後、今は逃げるのよ!」
     裏道を駆け抜け、街の出口が見えた。その時、雷のような銃声が響いた。
     母の体がぐらりと傾ぎ、その場に倒れる。
    「かあさん?」
     震える手で触れると、血が流れ出した。
    「ルフレ……逃げなさい……」
    「で、でも……」
     母の目を見て、ルフレは涙をこらえ、走り出した。
    「そう、いい子ね……」
     母は静かに目を閉じ、二度と動かなかった。

     ルフレはどれだけ走ったのか分からない。
     気がつけば、岩場に座り込んでいた。
     母を奪われた。すべてを失った。
     憎しみが、胸を満たしていく。
     ――こんな世界、無くなってしまえばいいんだ。
    「だったら、壊してしまえばいいのよ」
     ふと、頭の中に誰かの声が響いた。
    「……誰?」
     周囲を見回しても、誰もいない。
    「ボクはルフレ、君は?」
    「――私はレガリア。私とあなたで、人間のいない世界を作りましょう?」
     その言葉に、ルフレは何の疑いもなく頷いた。
     歩き出すと、足元に硬いものが触れた。
     砂を払うと、大きな黒い水晶が姿を現す。
     水晶を手に取ると、レガリアの声がはっきりと聞こえた。
    「この中に封じられて十数年……私は、私の声が届く者を待っていた。そして、君が現れた。」
     ふと、ルフレの脳裏に"光を纏った竜と黒き炎の竜が戦う景色"がよぎった。
     「ルフレ、心は変わらない?」
    「もちろん。ボクらで復讐してやろう。人間たちに」
     夕陽に照らされながら、裸足の少年は黒い水晶を手に、冷たい笑みを浮かべていた――。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works