(指切りげんまん 嘘ついたら 針千本飲ます) 指切りをした。
夕方の海だった。全部終わってひと段落ついて、どうやってこの先も縁を繋ごうかなと考えていた矢先の事だった。約束をしたからと、今後ともおつきあいをと、誘われたのだ。律儀だなと思ったのは本心だが、なによりもこの機を逃してはならないと思った。
思わず指切りの提案を退けるようなことを言ったのは、まだ少し残っていた逃げ癖だったかもしれない。だけどあいつはすると言った、俺を受け入れた。潔癖のくせに、いつもつけてる手袋を外して――素手にまでなった。
ほっそりとした長い指が俺を待っていた。
もう逃げないと決めた、ここが俺の在り処だ。