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    さいか

    @saika0527ss

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    POIPOI 76

    さいか

    MOURNING翼と宗介/10年後
    やあ、ご機嫌如何かな、教祖様?この小さな世界でてっぺん取った気分はどう?あの頃みたいに「悪くねえ」って言うんだったら俺はもう何も言わないけどさ、そうじゃないだろ?どーせ組織の維持管理とか人間関係とかいろんなしがらみに取っ捕まって身動きとれなくなってつまんないだけだろ?どこに行ったって一緒だよね、そーゆーの、カミサマが解決してくれるわけじゃないんだから。なあ、お前の神様ってお前に何してくれたの?や、別に否定したいわけじゃないっつーか、なんか掬い上げられて神様みたいに思っちゃうのは経験的にわかる部分もあるっつーか、ほら、俺にとってはお前がそれだったからさ。うん?言ったことなかったっけ?じゃあもっかい言うけど、俺はお前に自分の人生の軌道を変えられたと思ってるんだよ。お前に出会ったから進学先変えて、当然親からは反対されて喧嘩して、思い通りにならない子供と思われて……あー、今考えるとあの辺で亀裂が表面化したんだな、爆発したのはもうちょっとあとだったけど。ああうん、こっちの話。ごめんごめん。でもまあ、自分の判断が間違ってたと思ったことはないんだよ。楽しかったからね。お前だってそうだろ?うん、だからいま結構怒ってるよ。お前は俺の、俺らの人生変えといて何やってんだーってさ。なあオイ、そこにいてもつまんないんだろ。だったらもういいだろ。全部捨てちゃえよ。できないんだったら俺がぶっ壊してやったっていいよ。本気だよ。わかるだろ?似合わないし、らしくないんだよ。いい加減、お前が立つべき場所に立てよ。バンドやろうぜ。俺たちは、ブレイストはまだ、天下取ってないだろ?
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    さいか

    MOURNINGらぶらぶハッピー自給自足
    i犬みたいだと笑われることがあるけどそう言う自分だって小さな動物みたいじゃないかと思いながら見下ろしている。ベッドに押し倒して好き勝手して、そんな無体を易々と受け入れる恋人の頭を、耳を、頬を、撫でるたびにそう思っている。悩ましげに寄っていた眉間が緩んでぼんやりとした目の色が覗く。言葉に成りきらない甘えた声を微かに漏らす唇が笑む。ぐりぐりと、掌へじゃれつく仕草。柔らかい髪がくしゃりとからまる感触。たぶん、いま、顎の下を撫でたらごろごろっていうんじゃないだろうか、なんてからかうような軽やかな気持ちと裏腹に胸が詰まって、喉の奥は熱くて、なんだろうこの感覚、と思っている間になぜか涙が出そうになる。訝しむ瞳に名前を呼ばれるより先に動いて、呼吸ごと抱き締めて誤魔化した。衝動的にそうしたいと思ったことも、身の内に湧く暖かい何かだってたぶん愛と呼んでもいいもので、どうにかしてそれを明け渡したくてもどかしい。でも、目の前の恋人が求めているのは本当にそんなものなのか、いまいち自信が持てないでいる。自分の中にあるのが不純物だと知っている。だって、与えることだけを望むのは、どうしてもずっとできずにいるんだ。
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    MAIKINGレイセファと翼くんと家族の話「レイさんはオシリスのことを家族みたいに思うことってあります?」
    そう聞かれて顔を上げたら翼は笑ってオレを見てたけど、一瞬前までちょっと違う表情をしてたんじゃないかとなんとなくそう思う。でもそんなの別に追及するようなことでもないからオレは、うーんって意味なく唸って質問を咀嚼して「家族とはちょーっと違うかな」なんて尤もらしく答えてからタピオカ入りのミルクティーをストローで吸い込んだ。空は青くて雲は白くて日差しは強くて、首筋に張り付く髪を払って横断歩道を目前に立ち止まって、一回ばっさり切っちまおうかなーとか考えながら隣を見る。翼の髪型は翼に似合っているけどオレに似合うかというとどうだろうなあと首を傾げずにはいられない。なんかあるんだろ? 頭の形が良いとか悪いとかそーゆーのがさ。
    「進は子供のときからずっと居るから家族みたいなもんだけど京や真琴はそういう感じじゃないっつーか、猥談付き合ってくれる分お前や吉宗のほうが家族っつーか兄弟って感じ? まこっちゃんも酒の席でならたまに話してくれるけど」
    「え、まじすか。真琴さんの猥談超聞きたい」
    「だろ? お前らも早く大人になれよなー。飲もうぜ一緒に! 713

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    MOURNING貴方はやまつばで【 あなたの罪を数えて待つよ 】をお題にして140字SSを書いてください。というお題だったのにどうしても140字に収まらず途中から開き直ったやつ。「お前が俺を好きになったことは間違いだよ、大和。罪だと言ってもいい」「異議あり!内心の自由は憲法で保障されてるぞ?」理不尽に感情を否定されても即座に冷静なリアクションが打てるのは美徳だな。電話越しの声の普通さに感心して俺はひとり頷いた。まあ大和の良いところなんてもっとたくさん知ってるし、指折り数えて列挙して愛してやってもいいくらいなんだけど。思うに、俺の好きな東雲大和っていうのは要するに偶像で、特定個人を特別に愛したりなんかしてほしくなくって、だからやっぱり付き合うとか付き合わないとか全部まとめて白紙にしようっていう、これはそれだけの話なのだ。節度と距離を取って適切に愛とか恋とかしていこーぜ。とか何とか考えてるうちに電話の向こうでがたがたと物音がしていることに気付く。声を掛ける。「なに、なんかそっち騒がしくない?」「うーん、よくわかんないけど今からそっち行くから」ガチャンと扉を閉じる音の次、ごお、と聞こえてきたのは多分風の音。遠く、電車の走る音。スマホを耳に当てたままの大和が着の身着のまま外へ飛び出す映像が嫌でも脳内再生される。「……会いたくないから電話してるんだけど」だなんて心にも無 807

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    MAIKING猫と暮らすその猫は抱き上げられるのを嫌がった。人が嫌いなのか俺のことが嫌いなだけなのか、そもそも猫という生き物が全般的にそういうものなのか、何もわからないまま俺は、這い蹲って腕を伸ばしてどうにかその柔らかな胴体を捕まえる。両の手のひらに収まる温度はほんの少しの力で握りつぶせてしまいそうで怖くて、かといってそのままじゃまた逃げられてしまうから「ごめん」とか「大丈夫」とか「怖くないから」とか言い聞かせながら持ち上げる。短い手足が床から離れて空を掻く。噛みつかれる。ああきっとまた手の甲に傷が増える。でも床とか壁とか傷つけたら母さんが怒るだろうしなあとぼんやり考えてから、どうでもいいやと打ち消した。今ここに居ない人のご機嫌を伺う必要なんかないじゃんか。目の前のことで手一杯だよずっとさ。なあ、それってつまりお前のことなんだけど、わかってる? 問いかけた先、手の中の猫は抵抗を諦め始めている。呼吸に合わせて微かに膨らんだり凹んだりする腹の感触を、俺はやっぱり恐ろしく感じている。
    「こっちの部屋は、入っちゃダーメ」
     俺に触られるのが嫌なら俺の言うことを聞いてくれないか。話し合いで解決していこうじゃないか。俺だ 1757

    さいか

    CAN’T MAKE『Knightsの瀬名泉』凛月ちゃんは剣に例えていた。「セッちゃんは折れない剣」なんだって。いつでも気怠そうで人に興味ないような素振りをしているくせに本質とか核心を容易く言葉にしてくるから、のんびりとしたその声にハッとさせられるたび、ああなんだちゃんと見ているんじゃないってアタシはなんだか安心する。そして想像する。きっとその剣は細くしなやかに、一点の曇りもない色で光っている。
    『王さま』は月と言っていた。そう聞いた。月はアンタでしょって泉ちゃんは即座に言い返したのだとか。きっと『王さま』は笑ったのでしょうけれど、泉ちゃんはもっとちゃんとその言葉を聞いてあげなさいってアタシは考える。月。美しさ。儚さ。夜空を見上げればいつもそこにある光。それってアナタが常に欲しがっている言葉なんじゃないのかしら。美の象徴だし、ストレートな愛の言葉にしか聞こえないのだけれど。
    銀色。それが泉ちゃんの色だと思う。ゴージャスで眩い金色じゃないけれど、しんと静かな夜に埋もれずに輝く上品な色。モデルとして、アイドルとして、いつもアタシの歩く先に在った光。導いてくれた、なんて認めるのは少し悔しいからまだ言わないけれど。
    「ねえ、司ちゃんにとっ 863