【シナリオ】不思議の国のシルヴィーシルヴィーは毎晩悪夢にうなされます。
謎の少年は「キミの罪を教えてあげる」とシルヴィーに囁き、去ってしまいます。
シルヴィーは少年の言葉が気になって仕方がありません。
少年の後を追うと、ハートの女王の軍がシルヴィーを待ち構えています。
トランプ兵たちはシルヴィーを拘束。
謎の少年は「ハートの女王様、どうか賢明なご判断を。」
ハートの女王「この罪人の首をはねよ!」
シルヴィー「お、お願いです…やめて…!誰か助けて!!」
すると、1人の青年が飛び出し、一瞬にしてレイピアでトランプ兵を切り裂き、シルヴィーを助けます。
ハートの女王「無礼者!貴様も首をはねられたいか!?」
いかれ帽子屋「お初にお目にかかります女王陛下。私の名は『いかれ帽子屋』。『何でもない日のパーティ』を主宰しております。そして彼女は私の大切なお客様。彼女を害するなら。女王陛下とて容赦致しません。」
ハートの女王「なんだと貴様…」
ハートの王「もうやめてくれ…」
ハートの女王「し、しかし陛下…!くっ…!皆の者引けぇ!」
ハートの王はシルヴィーを一瞥すると、女王連れて退散します。
シルヴィーはハートの王が気になって仕方がありません。
いかれ帽子屋「お怪我はありませんか?お嬢さん」
シルヴィー「あ…助けてくださりありがとうございます…。」
いかれ帽子屋「大切なお客様にお怪我をさせるわけにはいきませんからね。」
シルヴィー「でも私『なんでもない日のパーティ』なんて…」
いかれ帽子屋「『何でもない日のパーティ』なんてふざけたパーティですよ?『何でもない方』を大切なお客様としてお招きしても良いはずです。さぁパーティ会場へ向かいましょう」
シルヴィー「で、でも…」
いかれ帽子屋「いつ女王があなたを襲いに戻ってくるかわかりませんよ?僕といた方が安全では?僕なら女王からキミを守れる」
シルヴィー「……」
いかれ帽子屋「さ、どうします?」
シルヴィー「……お、お邪魔します…」
いかれ帽子屋「はい♪」
『なんでもない日のパーティ』はとても華やかでした。
サーカステントの中で開催され、サーカスと演劇を融合した素晴らしいショーがシルヴィーのためだけに開催されていました。
シルヴィーはショーの美しさに胸が躍りました。
先ほどの恐ろしい出来事を忘れ去ってしまう程に素晴らしいショーでした。
いかれ帽子屋「我々のパーティはお楽しみ頂けましたか?」
シルヴィー「はい…はいとても!こんなに素敵なパーティ生まれて初めてです!」
いかれ帽子屋「お気に召したようで何よりです!ねぇシルヴィー…」
シルヴィー「!」
いかれ帽子屋はシルヴィーにグッと近づきます。男性に免疫のないシルヴィーは、ハンサムないかれ帽子屋に照れてしまいます。
いかれ帽子屋「ずっとここにいて…。キミがここにいてくれたら、僕達はキミのためにいくらでも楽しいショーを見せてあげる。美味しいお茶とお菓子もたくさんあるよ。それに…」
「キミをずっとハートの女王達から守ってあげられる。」
シルヴィーは咄嗟に返事をすることができませんでした。
シルヴィーは長年悪夢に悩まされてきました。
でもここにいれば、安全で楽しい事しか起こらないのです。
シルヴィーにとっていかれ帽子屋の大変魅力的なものでした。
しかし…シルヴィーの頭に白うさぎとハートの王の事がよぎりました。
シルヴィーは彼らの事が気になって仕方がないのです。
三月うさぎ「こんな最高の提案に戸惑うなんて、変な子」
いかれ帽子屋「黙ってろ、三月うさぎ」
三月うさぎ「迷うって事は、この子にはこんな最高なパーティよりも大切な事があるって事でしょう?」
シルヴィー「『大切な事』…?」
三月うさぎ「心当たりがるみたいね?」
いかれ帽子屋「シルヴィー、選択を間違うな。ここにいる事が君にとって最良の選択だ!」
三月うさぎ「それはアンタにとっての『最良の選択』でしょ?」
いかれ帽子屋「……ッ!」
三月うさぎ「ねぇ、毛虫さんはどう思う?」
毛虫「オレは…彼女の事情はよく分からない。でももしかしたら、チェシャ猫が力になってくれるかもしれないよ。チェシャ猫のところへ行ってごらん。」
いかれ帽子屋「やめろ!彼女に余計な事を吹き込むな!」
シルヴィー「帽子屋さん」
いかれ帽子屋「!」
シルヴィー「あなたにはいくら感謝しても足りません。助けてくれて、素敵なパーティに誘ってくれて、素敵な提案までしてくれて、本当にありがとう。でも」
いかれ帽子屋「よせ…やめてくれ…」
シルヴィー「私、知りたい事があるの。ううん、知らなきゃいけない事がある。だから行かなくちゃ。」
いかれ帽子屋はシルヴィーからそっと離れます。
いかれ帽子屋「毛虫、チェシャ猫のところへ彼女を案内してやってくれ。」
シルヴィー「帽子屋さん…!」
いかれ帽子屋「でも、シルヴィーこれだけは忘れないで。僕らはずっとここで君を待ってる。だからいつでも戻っておいで。」
シルヴィー「ありがとう、帽子屋さん」
シルヴィーは毛虫に導かれ、チェシャ猫のところに到着します。
シルヴィー「あなたが…チェシャ猫さん?」
チェシャ猫「あぁその通り。」
シルヴィー「ねぇ、チェシャ猫さん。私知りたい事があるの。不思議な男の子とハートの王様…あの2人の事が何だかとても気になるの。自分でもどうしてこんなに気になるのかわからないけど…知らなくちゃいけない気がするの。協力してくれる?」
チェシャ猫「君が望むならね。でも良いのかい?キミが2人に辿り着く前にハートの女王やトランプ兵が君の行く手を阻むだろう。もしかしたら、2人に辿り着く前に命を落とすかもしれない。仮にその2人に辿り着いたとしても、2人は君の心を壊してしまうかもしれない。」
シルヴィー「それは『私の罪』のせい…?」
チェシャ猫「……さあな。でも、今なら帽子屋のところへ引き返せるぞ。」
シルヴィー「私ね…『この悪夢』からずっと逃げてきたの。怖くて怖くてずっと逃げてきた。でも、今回は帽子屋さん達が現れて助けてくれた。そうしたらね、なんだか勇気が湧いてきたの。『この悪夢』に立ち向かう勇気が。だから…私はもう逃げない。何があろうと立ち向かう。協力してくれる?チェシャ猫さん」
チェシャ猫「……そこまで言われたら、協力しないわけにはいかないな。さぁおいでシルヴィー。『真実』を迎えに行こう。」