初めて彼を見た時、敵ながら思わず目を奪われた。
寒いのは昔から嫌いだった。
着込めば対策出来るというけれど、貧乏人の僕は着込めるほどの洋服を持ってなかったし、寒さは懐のひもじさをより一層際立たせる。翌朝の労働のために早起きしなければいけないのに、凍てつくような酷寒の日は隙間風が容赦なく吹き込んで体温を奪っていくものだから到底寝付けやしない。嫌なことばかりを思い出す。例えば、自分はただ眺めているだけだったショーウィンドウの先のプレゼントを手にした同い年くらいの子どもの、如何にも幸福そうな笑顔、とか。
だから、荘園で行われるゲームで通称"レオの思い出"と呼ばれるそのマップに対して、ノートンは常日頃から苦手意識を持っていた。ステージの演出である夜闇は、照らされる満月のおかげで多少はマシといえど視界は常に不良だし塵肺症の自分が咳き込む度に冷気が肺を刺していつも以上に苦しい。
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