！！！？かっちゃんお疲れ様！

ペットボトルの水を手渡す

おー
と短く返事が返ってくる。

思ったよりも時間かかっちゃったね。

かっちゃんと一緒にヒーロー事務所を立ち上げる。
僕の長年の夢だった。きっとかっちゃんも。
事務所はオールマイトと一緒の場所…
は、まだちょっと無理だったけど５階建てのビルの一室、将来的には六本木に、と2人で話し合って決めた場所になった。

荷物を運んでやっと片付いたオフィスの一室。
かっちゃんが、事務所に置くのはこれにする。
と即決したソファに並んで座る。
明日からいよいよ僕たちのヒーロー事務所が起動する。

かっちゃんの隣に座る。

今はこうして横に座っても、あからさまに嫌な顔をされなくなった。
嬉しさで口の端が上がってしまいそうになる。

風邪ピピッと体温計の電子音が鳴る。
画面を見るとそこには38.0℃の表示

熱が出るなんて何年ぶりだろうか。
今朝、目が覚めると妙に頭が重く、最近使ってなかった体温計のを探し出すのに少し時間がかかった。

ピンポーン

インターホンの音が鳴った

もう、そんな時間か

壁の時計を確認すると約束の時間きっかり午前10時だった。
今日はデクが来る日だ。
週末は必ずと言っていいほど勝己の家に遊びに来る。今日もその予定だった。

急いで玄関に向かうと足がふらついた。
さっきより体調が悪化している気がする。

ガチャッと玄関のドアを開け、デクの姿を確認する。

デクは、俺の姿を見てぱっと笑顔になったかと思うとそれが一瞬で曇り、驚いた顔に変わる

どうしたのかっちゃん！？

おにしょた2かっちゃん、キスしたことある？

なんだ突然

勝己の最近の休日の過ごし方といえば、デクを自分の部屋に招いてデクの好きなヒーローのDVDを流しながらまったりと過ごして、他愛もない話をする事だった。

いつもならデクはヒーローの話題が大半で、目をキラキラさせて楽しそうに話している。俺はそれを眺めるのが好きだった。

それなのに今日はやたらとソワソワして落ち着かない表情、いつもと様子が違う

淹れたコーヒーの味が一瞬分からなくなるほど驚いた。

あのね僕、昨日…キス、させてくれない？
って言われて…

飲みかけたコーヒーが気管に入る

ゴホゴホと咳き込む勝己

かっちゃん！？大丈夫！！？


ハァァア！？

つい大きな声が出る

それにびっくりするデク

おにしょた夕方の公園

鼻を啜る音が聞こえる

デクがベンチに座って声を抑えて泣いている

デクの足元に大きな影が伸びる

また泣いてんのか

見下ろしてくる男

その男を見上げてびっくりして

な、泣いてない…！

と、デクは一生懸命、服の袖で涙を拭く

誰にやられた

デクの顔の傷を見て男が静かな怒りを含めて言う

……

デクは返事をしない

小さく息をついてデクの正面にしゃがみ込む

なんでやり返さねぇ

この前教えたろ

拳を作って胸にトン、とぶつける

その拳を小さな手がつかんでよける

皆がかっちゃんみたいに強いわけじゃない

俯いて言うデク

…そうかよ

どうしたい？

やり返すか？

勝己にそう言われてデクは
ブンブンと首をふる

勝己はそれを静かに見つめて

てめぇはそういうやつだよなァ

おやすみ。かっちゃんと一緒に暮らしはじめて1年になる。
でも仕事ですれ違いになることも多く、
ここ最近、何日もかっちゃんに会っていない。
僕も今日は夜勤明けでやっとベットに入った。眠たさが限界に近い。

するとかっちゃんが帰ってきた。

かっちゃ〜ん…！久しぶり！

僕はベッドの中から挨拶する

おぅ、

と短く返事が返ってくる

大変だったね…テレビで見たよ

あぁ

かっちゃんも眠そうだ。

明日は？

非番。

そっか、僕も。一緒に寝る？

そう言うと

その前にフロ、入っくる

と返事が返ってくる

あ、うん、そうだね

先寝てろ

うん。

ウトウトしていると、かっちゃんもお風呂から出てきたのか布団にもぐりこんできた。

かっちゃんは僕と目が合うと背中を向けて寝始める。

せっかく久しぶりに会ったんだから顔が見たいのに。

告白久しぶりにA組の皆で集まっての飲み会。
出は別の席に居たけど、勝が酔ってしまったからと送っていく事になる。
（皆の図らいで）

かっちゃん酔いがさめて僕が横にいたら嫌だよな…と思いつつマンションまで送っていく。

ようやく勝の部屋のソファまで辿り着いてそっと座らせる。自分も横に座る。覗き込むと、勝はまだ酔っているのか、顔が少し赤い。

かっちゃん、お水いる…？
と声をかけるが返事はない。
目は開いている。寝ている訳ではなさそうだ。

何か会話を…と思い、皆元気そうだったね！と当たり障りのない話題を選ぶ。

しーん。として、それ以上会話が続かず静まり返る部屋。気まずい空気。

突然、勝が口を開いて
てめェ好きな奴いンのか
と話し始める。

告白2僕は何を言われたのかすぐに理解できなかった。
数秒考えたあと、

そ…それって…かっちゃんは僕が好きって事…？
と尋ねた。

…そう言っとる。

静かに言われ
抱きしめられる力が強くなった。

信じられなかった。
かっちゃんが、あのかっちゃんが僕を好きなんて
そんな訳ない。

かっちゃんは…僕の事ずっと嫌いだと思ってた…

…嫌いだったわ…ずっと。

と、勝が静かに話しはじめる。

だから俺はてめェの事考えねぇようにしようとしたし、距離を取ろうとした。

…でもそうすりゃする程、てめェの事がどんどん頭から離れんくなって…
てめェの事で頭が一杯になって、
ずっと、ずっと嫌だった…

かっちゃん…

かっちゃんの苦しい告白にこちらも苦しくなる。

…雄英卒業して、てめぇの顔見なくて済むんだと思ったら正直ほっとした