あの日少年だったあなたは 12月31日に人をだめにする系のクッションに寝転びながら冷蔵庫の唸る声を聞いていると、なんだか、たまらなくみじめに思えてきて、フローリングに横たわっていたイケアの鮫に手を伸ばして抱き寄せた。かれは今日も変わらず、ギザギザの歯の先っぽにちいさな毛玉をくっつけていた。
この巨大な喪失感を抱えて、どうして生きてなんていられるだろう。
背中に片割れの体温を感じる。でも、それだけだ。菜々子は、わたしの一部。すきとかきらいとか、考えたこともない。必要とか、必要じゃないとか、そういう次元じゃない。右手に好意を抱く左手はいないだろう。私たちは、同じだ。
だから、あのひとさえ失わなければいい、と思っていた。
世界で一番好きで大事で必要なあのひとがいない。
841