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    夏五 Web展示作品
    親友を殺してから半年以上経ってようやくメンタルにきた悟がそれにあんまり気付かずにヤケ食いして昔した花火を思い出しつつ硝子と話しながら食中毒を反転で治す話。

    ##夏五
    #夏五
    GeGo

    花火の影を見る テーブルに並ぶ料理を眺めまわしながら、線香花火みたい、と思っている。
     いつかの七夕。ストロンチウムが燃えている。

     ▽

     あのヤニカスどもめ……と悟は呟いた。二対一で非喫煙者が少数派だと、煙草タイムを待つ羽目になる。悟と二人の時は傑は滅多に吸わないくせに、硝子と三人の時はごめんねとか言って吸いに行くから本当ムカつく。そういう、和を乱さないことを良しとするくせに悟のことは蔑ろにするところ、すっごい嫌い。悟と二人の時でも吸いたきゃ吸えばいいし、吸わないなら俺と二人で硝子を待ってくれればいいのに。嫌い!
     だから傑が「ごめんごめん、お待たせ」と現れた時、悟は開口一番に「おっせ〜よクズ共!」と叫んだ。煙草から帰ってきた人を出迎える時は、罵っていいって法律でも決まってる。俺が書いた。憲法にも書いた。
     傑は「はいはい、ごめんね」と再度言った。硝子は無視。無視っていうか、反転術式を行使中なのでちょっとぼーっとしている。こうして肺へのダメージを無にしているのだ。行使っていうか酷使。だから、この中で死に急いているのは傑しかいない。本音と建前を出し入れするのも傑しかいないし、ぜってえコイツが一番最初に死ぬわ。間違いない。
     ビルを出て炎天下の中を歩き出す。アスファルトから照り返す熱があっという間に汗を滝にする。「悟、髪眩しい」と言われてうるせーよと傑の頭に手を乗せると「あつッ!」あまりにも熱くて驚いた。なんで東洋人、髪を黒くしちゃったんだよ。熱すぎるだろ。悟の手はべちゃっと濡れた。うわ。汗やば。
    「おい。私の服で拭くな」
    「いや傑の汗だし」
    「悟が勝手に触って濡れたんでしょうが」
    「ウワ、卑猥ー」
    「は?」
    「五条、飴」
    「持ってねぇよ、溶けるもん」
    「は? 使えねー」
    「我慢しろよニコチン中毒」
    「ガムあるよ」
    「食べる」
    「はい」
    「スースーするやつ?」
    「うん」
    「じゃいらねー」
    「ハイハイ」
     ごおッと大型トラックが通って、熱風をくぐらせていく。道の真ん中ではミミズがくたばっている。踏まれて潰れて、蟻にすら見向きもされない。それを跨いで通り過ぎてはまた、熱風。舌打ちが漏れた。
    「なんかさー、」
    「うん」
    「この辺全部更地にした方がまだ涼しいんじゃね?」
    「なんの主義主張もないテロリストだね」
    「主義ならあるだろ、涼しくなりたい」
    「それは主義じゃない、唯我独尊」
    「あーあ、全部ぶっ壊せるのにしてない俺ってなんて理性的!」
    「オマエで理性的ならダニだって未就学児を避けるわ」
    「俺を罵る時途端に元気だよね硝子」
    「健康だろ」
    「健康カナー?」
     あついあついとそればかり言いながら、三人並んで歩いていた。左を向けば硝子がいて、そのさらに左には傑がいる。なんだか白昼夢のようだと思った。変なの、と思った。ウソみたい、と思った。友達というやつが。友達と、街中を、並んで歩いているということが。新品のバスタオルみたいな。変なの、と呟いた。うん?と傑が首をかしげた。変な前髪、と言った。「殺す」と即答。友達。
     「ちょっとタバコ」と硝子がドンキの中に吸い込まれていく。ドン・キホーテ。涼むついでに傑と続く。所狭しと物、物、物。音。色。呪。
    「いつ来てもうるせーな、ここ」
    「それが存在意義みたいなものだから」
    「うるさいのが存在意義?」
    「そう」
    「へー」
     裸眼で見ると愛憎ちかちかしてうるさいので、サングラスを深くかける。まつげがばしばし当たってうざい。手足もあちこちにぶつけそうになる。大量のカラー剤を横目に、髪なんか染めてどうすんだと通り過ぎた。俺も染めてみようかな? ゼブラ柄とかに。
    「似合わないからやめな」
    「思考を読むな」
    「何色にすんの? 蛍光黄緑? きもーい、って言われるよ女子に」
    「しねえよ、んな浮かれた色」
    「白髪も十分浮かれて見えるけどね」
    「ハ? 差別」
    「この時期でも焼き芋売ってんの? あっつ」
    「聞けよ話を」
     傑は結構いいかげんで、暑くなればなるほど話を聞かない傾向にある。暑さですぐ脳みそとろけるタイプ。かわいそ~。哀れ前髪星人。
    「あ!」
    「何?」
    「コンドーム!」
    「声がクソでかい」
    「0.02mmだって!」
    「ハイハイ」
    「これ何?」
    「TENGA」
    「なんて?」
    「オナホ」
    「これが?」
    「買ってく?」
    「……硝子がいるじゃん」
    「硝子はなんとも思わないよ多分」
    「それはそう」
     春の夜風よりも無益なことを話しながらダラリと店内を巡ると出口に着いてしまい、そのままなんとなく出る。再び抉るような暑さが全身を襲った。店先は店先でいくつも吊るされた風鈴どもが安っぽくちりちりとうるさい。納涼とデカデカと書かれたゴシック体が、かえって暑苦しく辟易とした。
    「あ、花火」
     と傑が言った。その時、悟は傑が何を見て花火と言ったのかわからなかった。手持ち花火という商品を全く知らなかったのだ。だから、傑の視線を追い、値札の『手持ち花火よくばりオールスター』の表記を見て初めて、手持ち花火という文化を知った。手で持つの? 危なくね? と純粋に思ったが、物を知らない男だと思われたくなくて、プライドから黙っていた。
    「花火かあ、久しくしてないな」
     と傑が言うので驚いた。花火って、するものなのか? 観るじゃなくて? 頭の中は疑問符でいっぱいだったけど、見栄を張って俺も久しくしてないなァ、という顔をしていた。
     それを知ってか知らずか傑が「する? 花火」と聞くので「する」と頷いた。それで、傑が適当に見繕った花火を持って店内に舞い戻り、レジに並んだ。すると会計を終えたらしい硝子がこっちを見つけて、手元のソレを確認すると、しかめっ面で「高い線香花火も買え」と言った。傑は「ええ?」と笑った後、「悟、持ってて」と悟に手持ち花火を持たせると、再び店外へ消えた。悟は産まれて初めて一人で、ドン・キホーテのレジに並びながら、線香花火って何だ? と考えていた。列が一歩、進む。天井からぶら下がるシーブリーズの広告に、頭をぶつけた。

     ▽

     賞味期限一ヶ月過ぎた豆腐ってやばい? って硝子に聞いたら「やばい」と即答が返ってきた。窓の外からは生徒たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。呪力有りガチンコドッジボール大会するとか言ってた。ほどほどにねー、と毒にも薬にもならないことを言って、呪具のボールを貸し出した。まさか彼らが程々で済ますとは思っていないが。夏だ。
    「えーもう食べちゃったよ」
    「君が? 珍しいな。料理したの?」
    「うん。麻婆豆腐」
    「へえ。好きだっけ?」
    「食べ物の好悪はないよ」
    「あっそ」
    「ショーコちゃんもたべる?」
    「残ってんの? 捨てなよ」
    「ひどーい、ワタシの真心を」
    「キショ」
     硝子を見ていると、自分も歳取ったなあと思う。生憎、鏡を見て実感できる加齢はないので。己がアラサーだという自覚は全然ないけど、硝子を見るとアラサーだわ……と思い出す。伊地知と七海はよくわかんない。オマエらいくつなの?
    「そもそもなんで豆腐なんか買ったんだ」
    「なんでだっけな。忘れちゃった」
    「気まずいことはすぐ記憶喪失のフリする。そんな都合のいい脳ミソしてないくせに」
    「……見透かすなよ、照れるだろ」
    「もう十年なんだ。うんざりだよこっちだって」
    「ええ、僕らズッ友でしょ?」
    「ハッ」
    「今鼻で笑った? え、硝子さん、今鼻で笑いました?」
    「あー、うるせー」
    「うわー傷ついちゃおっかな……」
    「勝手にしろ」
    「ひどーい」
     勿論。
     勿論なんで豆腐を買ったのかくらい、覚えている。
     ひと月前に食べ物をたくさん買った。
     納豆、ピザ、みりん、醤油、にんじん、からあげ、卵、牛乳、ネギ、アジフライ、トウガラシ、小麦粉、寿司、味噌、鮭、炭酸水、じゃがいも、ぎょうざ、桜エビ、ひじき、冷凍ピラフ、みょうが、ブロッコリー、ニラ、レモン、豆板醤、イチゴジャム、煮豆、エビ天、キムチ、砂糖、カニカマ、キャベツ、油揚げ、たまねぎ、裂けるチーズ、しらす、ヒレカツ、オクラ、切り干し大根、ポテトサラダ。つまり、惣菜から調味料までいろいろ。それで、一日オフだったので、ひたすら食べた。もうお昼の二時くらいには、咀嚼に飽きたし、味が長くていやだな、と思ったけど、食べた。食べた。食べた。食べただけ。暑かった。クーラーの設定温度を、二度下げた。食べた。
     その時に買ったけど食べ忘れた豆腐が冷蔵庫にあった。ので食べた。麻婆豆腐にして食べた。恵の部屋に行って「豆腐ってどうやって食べるの?」と聞いたら、誠に不可解そうな顔で丸美屋のレトルト麻婆豆腐の素を渡されたので、それを作って食べた。箱の裏の説明書きに沿って作ったところ、五分でできた。それで、おしまい。
     外では生徒たちがきゃあきゃあ騒いでいる声が聞こえる。教室には誰も片付けていない過ぎた笹が飾られている。ヘタクソな折り紙と短冊が飾られている。早く誰か捨てなよね、と思いながら悟はそれを見ている。パンダが食べるだろうか? 
    「昔、花火したよね。七夕の日に」
    「……七夕だっけ?」
    「そうだよぉ、織姫と彦星みたいに一年に一回しか会えなくても、ウチら絶対仲仔だょって約束したぢゃん!」
    「それが嘘なことはわかる」
    「なんでよ、覚えてないなら言ったかもしれねえじゃん!」
    「約束はしてない」
    「は〜つれねぇ〜切な〜い……」
    「へえ。切ないの?」
    「切ないよぉ〜? ほら、ズッ友の一人は死んじゃったしさ……」
    「半年前にな。オマエが殺した」
    「うん。僕が殺した」
    「死体、どこにやった?」
    「さあ、忘れちゃった」
    「嘘ばっかり」
    「まあね」
     永遠なんてものを信じるほど呑気ではないが。
     まあ三十年くらいは一緒にいるんだろうと思っていた。
     漠然と。
     なんとなく。
     つまり僕の言う「ずーっと一緒にいようね♡」は三十年くらいの想定だったのに、実際には三年も保たなかった。ウケるよね。
     友達。
    「あの日さあ、俺、初めて花火したんだよね」
    「知ってたよ。君は分かりやすい」
    「マジでェ? 傑も知ってたかな」
    「だろうな。……あー、待って、ヤなこと思い出した」
    「何?」
    「なんか、『はしゃいでんの、カワイイよね』みたいなこと、言ってた。確か、あいつが」
    「……へー」
    「照れんなよ心底気色悪い」
    「辛辣〜。だってさー、人伝に聞くと、なんか、マジなんだぁって思わん?」
    「何でそんな人並みの感性持ち合わせてるんだよ」
    「まあ、人間だから」
    「そうだっけ?」
    「人間だよ〜、ザ!人類!って感じじゃん」
    「それはわからん」
    「えー?」
     ろうそくに火をつける。喫煙者が二人いるんだ、火には事欠かなかった。
     包装紙を破る。びりびりと。開けてから火つけるべきじゃね?って言ったら、まあ確かに、と言われた。そんなことばかりを覚えている。無駄なセロハンテープをひたすら剥がす。パッケージには、七色に光るだの煙少なめだの金色発色!だの書かれている。それらをやっと外し終わると、ハイ、と手渡される。受け取る。どちらが持ち手なのかよく分からず、傑を盗み見た。川岸の暗闇の中。ろうそくで照らされた横顔がきれい。
     ぢりぢりと、火薬に点火する。うわ、と小さく声が出た。なるほど、小さい花火だった。炎色反応により、鮮やかに光が燃える。銅にナトリウム、ストロンチウムが燃えている。自分の手元の花火にも火をつけた。光を掴んでいた。
    「硝子さあ、線香花火、好きだったの」
    「まあ、わりと」
    「最近した?」
    「してない」
    「じゃ、しようよ。僕と」
    「ええ、オマエと?」
    「何。イヤなの」
    「イヤってほど嫌じゃないけどさあ、寝たい」
    「ハーヤダヤダ。つまんない大人になっちゃって。少年少女の心を忘れたらだめだよ」
    「忘れちゃいないよ。体力がない」
    「あー、まあ、そうね。そうか」
    「ハァ……一回だけね」
    「わぁい、硝子ちゃんだいすきー!」
    「私はおまえキライ」
    「うわ、ひっど」
     あの日最後に灯した線香花火を思い浮かべる。三人で、しゃがんで、ろうそくから線香花火に火をつけた。風で揺れないように、肩を寄せ合ってならんでいた。なるべく、静かに停止を保っていると、次第にぽっ、ぽっ、と光が弾ける。一瞬の閃光。散々遊んだ221本のススキ花火は残らず燃え尽きて灰になっている。それを横目に、火を囲んでいる。「黒体輻射」と悟が呟くと、傑が「何?」と聞く。応えずに黙っていた。暑いが、風が涼しい。涼しい風で火種が揺れる。揺れる。揺れる。
    「あ、」
     呆気なく、ひかりは音も立てずに落ちた。ちょっといいやつ買ったのになあと傑が嘆いている。硝子は煙草に火をつけた。暗闇の中で、ろうそくと、硝子の煙草の火だけが燃えている。ひかりは地面に落ちるとすぐに消えていた。悟が「またやろうぜ」と言う。傑は「次は馬鹿みたいに高いやつにしよう」と言っている。硝子は煙草を吸っている。夏。七夕。地面ばかり見ていた、最初で最後の三人の花火大会。
    「ねー。硝子」
     窓の外を見たままで言う。日が暮れてきた。それを呪力の濃度で感じている。可視光線は閉じたまま。
    「何」
    「僕、緑内障かも」
    「そうか。支障は?」
    「ないけど」
    「だろうな。早く病院行けよ」
    「えー、硝子ちゃん治せないの?」
    「無理。早く眼科行け。進行するぞ」
    「ま、見えるけどね」
    「だろうな」
     夕暮れで山の縁が光る。それを、知識で知っている。ずっとここにいたから。ずっと、この学校に。
     線香花火は呪われてないから、六眼では見えない。ただ、薄く蔓延る呪力の合間に、影のような花が咲く。煩雑な情報量の中、スッと縫う黒い花。悟だけしか見たことのない花火の影。それも案外嫌いではない。だから、たとえ可視光線が見えなくなったって、本当に支障はない。ない。ないけど。
     なくなっても仕事にも生活に支障はないけど、でも、なくなったら、寂しい。
     光。
     花火。
     友達。
     親友。
    「硝子……」
    「何」
    「お腹痛くなってきた」
    「バーカ。豆腐はやばいって」
    「反転で治るかな」
    「やってみれば」
    「んー……。あ、治ったわ」
    「チッ」
    「舌打ちした?? なんで?? 怖い」
    「自業自得なんだからもうちょっと苦しめ」
    「えーやだよ。痛いの嫌いだもん」
    「いい歳して……」
    「僕いくつだっけ?」
    「知らねえ」
    「えー?」
     丸い飴玉みたいな太陽を、まぶたの裏で見ている。それがぱっと弾けて、光になる。樹木のように枝を伸ばして、すぐ消える。よくできたホログラムみたいな炎が、手の中で燃えている。そして落ちる。音も立てずに落ちる。耐えきれなかったように落ちる。火の玉。
    「硝子ー、高い線香花火、買おーね」
    「期待してるよ」
    「任せとけって」
     もう痛くない腹が、空いているように感じた。ちっとも空腹じゃないのに、お腹すいたなあと思った。笹、食えるかな?とちょっと血迷った。あのバカを殺してから、半年以上経ったフツーの日のことだった。光。花火。煙草。友達。ろうそく。夏。
     親友、


    おわり
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