風のマント「ねぇ、本当に飛ぶの?それで?」
通称“ドラゴンの角”と呼ばれる双塔の南塔側最上階。吹き抜ける海風を全身に受けながらアレンが風のマントを装着していると、後ろからカインが不安げに問いかけてきた。
「そうだけど。」
アレンは首だけ軽く後ろに捻って「それが、何か?」と言わんばかりにさらりと答える。
「そうだけど。じゃなくてさ、アレンはそれで本当に向う岸まで行けると思う?それ、ただのマントだよ。」
ただのマントというよりは、ただのマントよりずっと薄くて軽い羽のようなマントをカインはしげしげと見つめている。
「ただのマントじゃなくて『風のマント』。これを使えば向う岸に飛んで行けるって、カインも聞いてただろ?」
アレンは身につけたマントをふわりと翻しながら後ろのカインに向き直った。眉尻を下げたカインは心なしか髪までしなしなと垂れ下がってみえる。
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