憑いているのは……?里を出て二十数年になるが、外界の技術の進歩は目覚ましいものがある。
出奔した先で便利な道具に触れるたび、モクマは目を瞠ったものだ。
そして今もその便利な道具に助けられ、大切な仲間と定期的に連絡を取り合えている。
『……で、ですね、署内の人間の間で噂になっているんですけど、遅くまで残業していると必ずどこかから呻き声が聞こえてくるんです……僕もこないだ残業してたときに聞いてしまって……』
分割されたPC画面の向こう側でルーク・ウィリアムズが落とし気味の声で囁く。
モクマは神妙な面持ちのルークにどう返したものか、といつものへらりとした笑みを崩さぬまま考える。
『……なんだそれ。寝ぼけてんのか』
と、モクマが返答する前に、分割されたもう一方の画面に表示されたアーロンが呆れた様子を隠しもせず言い放つ。
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