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    rio_bmb

    @rio_bmb

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    MOURNINGけっこう前(6月か7月?)に書いてたけど新情報が出るたびにお蔵入りにせざるをえなかったモクチェズのラブコメ。読み返したら一周回って記念に供養しとくか…という気持ちになったのでお焚き上げです
    同道後のラブコメ「おじさんを好んでくれる子はいないのかなあ……」
     などとわざとらしく鎌をかけてみたこともあったのだが、あの時は正直なところ半信半疑だった。
     何せ相手が相手だ。都市伝説になるような詐欺師にとって、思わせぶりな態度を取るなんてきっと朝メシ前だろう。そう思うのと同時に、自分を見つめる瞳に浮かぶ熱が偽りとも思えなかった。
    (ひょっとして、脈アリ?)
    (いやいや、浮気って言っとったしなあ)
     その浮気相手にあれだけ心を砕く律儀者が、本命を前にしたらやはり相討ちも辞さないのではないだろうか。あなたと違って死ぬ気はないとは言っていたものの、刺し違えれば勝てるとなればうっかり命を懸けてしまいかねない。彼の律儀さはそうした危うさを孕んでいた。だからその時は脈があるかどうかより、ただ復讐に燃えるチェズレイの身を案じていたのだ。約束で縛ることは叶わず、己では彼の重石にはなれないのかとじれったく思ったのも記憶に新しい。
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    MOURNING喧嘩したくないモッさんと喧嘩したいチェズの小ネタ。会話のみ。モクチェズ?「モクマさんに折り入ってご相談が」
    「なになに? どしたのチェズレイそんな畏っちゃって。もちろん、おじさんにできることなら何でもするよ」
    「私たち、喧嘩してみません?」
    「そんなのお安い御用…………はい? なんて?」
    「喧嘩です。具体的には訴訟に至らぬ程度の口論や殴り合いを指すのだとか」
    「へえっ、裁判になったら喧嘩じゃないんだ」
    「そのようですねェ。司法を介入させず自分たちで解決できる範囲の諍いと言うことでしょう」
    「なるほどねえ」
    「というわけで、あなたと喧嘩をしてみたいのですが」
    「あっそこちゃんと戻るのね。俺、なんか最近お前さん怒らせることしたっけ……。ご、ごめんね?」
    「いえ、そうではなく。恥ずかしながら私は今まで喧嘩というものをしたことがなく、少々興味がありまして」
    「あ、あ〜。そゆこと。たしかにお前さん友達いな……喧嘩とかしたことなさそう」
    「フフ、謀殺や抗争なら得意でしたよ」
    「いや、そこは掘り下げんからね?」
    「おや、残念。では我々の喧嘩の内容について掘り下げましょうか」
    「なんだか乗り気だねえ。おじさんはあんま喧嘩したくない派なんだけども。まあ何でか喧嘩に巻き込まれ 963

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    MAIKINGボツにした文の供養 モクマがシャワーを浴びて戻ってきた時には、寝室の照明は落とされていた。
     怪盗ほどではないが忍者も夜目が利くのでフットライトのかすかな明りだけでも支障はない。起こさないようにとそっと気配を潜めて自分のベッドに腰掛ける。
     耳をすますと静かな寝息が聞こえた。薄闇の中で目を凝らし、相棒の寝顔をそっと盗み見る。冷たく整った美貌はどこか人形めいていて、しかしその皮膚の下には温かい血が流れていることをモクマは知っている。
     共に旅に出るまで、チェズレイの寝顔など見たことはなかった。
     オフィス・ナデシコを拠点にしていた頃は各々に個室が用意されていたからだ。時間が合えば食事を共にしたし、浴室も共用ではあったけれど、思えばチェズレイは部屋着姿すら他の仲間たちに見せようとはしなかった。
     朝、自分の部屋から出て、夜に自室へ戻るまで、彼は常に完璧な『チェズレイ・ニコルズ』を装っていたのだ。
     だからあの海辺で約束を交わした後も、同じ部屋で寝泊まりするなどとは考えてもみなかった。
     ナデシコに呼ばれてミカグラ島に戻るまで、モクマの暮らしぶりはかなり荒んでいた。根無し草のように二十年間放浪するあいだ、まと 1694