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    れんこん

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    れんこん

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    第3回ベスティ♡ワンドロ用
    入れ替わっちゃったお話。

    #ワンドロ
    #フェイビリ
    phobility

    「は?」
    「あ?」

    2人同時につい口から出たのは気の抜けたような、本気で力の抜けるような、意味のない言葉。
    それだけお互いに驚いた。
    今、目の前にいるのは鏡に映ったような自分自身。この声すら、自分の身を通して聞く音と違って違和感を感じる。

    ……今日はお互いオフの日だった。
    DJはいつも通り夕方頃からふらふら起き出して夜遊びにくりだし、自分は朝っぱらから情報屋の仕事であちこち歩き回っていた。
    情報の集まる場所は遊び場が多く、必然的にDJとばったり出会す事もしばしばあった。
    たまにはクラブで怒らせてしまったおじさんたちに追いかけられている所を助けてもらったりなんだり、逆にDJが修羅場に巻き込まれているところをうまく逃したり、なんだかんだそのたびにお互い持ちつ持たれつな感じで2人で雑談でもしながら帰路につく、そんな事も結構あった。
    今日もそんな気ままな日常のひとつで、2人でだらだらと喋りながらタワーへの道を歩いていた所、突然前触れもなしに路地裏から何やら変な色の霧と共に甘い香りが漂ってきたかと思うと……この有り様。

    DJが俺で俺がDJで。
    ナニコレ、フィクションの世界?

    目の前の自分は呆然とこちらを見つめてくるし、自分もそうだ。お互いに困惑の視線で自分を見つめる妙な時間が出来上がってしまった。

    「…あー、あー……。」

    目の前の自分が喉を触りつつ声を出してなにかを確認している。音を操る能力故か、気になるのはまずそこだったようだ。

    「……あのさぁ、もしかして俺、ビリーになってる?」
    「うん、それで、多分俺は今DJになってるネ?」
    「……なにこれ。」

    2人してどうしようもなくて立ち尽くす。
    困ったようにさらりと頭を触る仕草はDJのもの。自分の姿でやっていてもあまりきまらない感じがするのが少し滑稽だ。
    路地裏の方をちらりと見たけれど、特に何もいるわけでもなければ、怪しい物もない。
    お互いちょっと恐ろしくなって、同時に互いの腕を引っ張ろうとしてその手がばちんとぶつかった。
    結局オレが手を引くと、DJは自分の姿の腕を取って、すいすいとその裏路地を抜けていく。
    向かう先はイエローウエストのなかではほどほど上品で清潔感のあるホテル。
    中に入ると俺の姿のDJが手慣れた様子で部屋を取って、そのまま腕を掴まれたまま部屋に連れてかれた。




    「……状況確認。」
    「ハーイ。俺っちフェイス・ビームス♡」
    「俺の姿でやめてよそのノリ。」

    ひどくテンションの低い自分の声はやはりなんとなく違う感じがする。お互いで何度見てもやはり、入れ替わっている。

    「アレだね、最近出てた新種のサブスタンスの効果〜。ヴィクターパイセンがそんな話をしてたってグレイが言ってたヨ。」
    「……俺も女の子に聞いたよ。恋人同士で入れ替わっちゃった子が居たらしい。1週間程度で解けたみたいだけど。」
    「じゃあ、このまま過ごしてれば効果は解けるのかな?正直タワーに帰って申告したらずっと検査されて治るまで軟禁されそ〜…。俺っちそんなのやだやだやだ〜!!」
    「まぁそれは同感。……出来れば誤魔化しながら解決に向けて動きたい所だけど……。」
    「そうだネ〜。あ、任せて!オイラ、DJの真似っこちゃんと出来るから♡」

    顔をつくって、いつもの彼の空気を纏って。
    演技は得意。彼の決め台詞をいつもの仕草と共に吐いてみせると、目の前の自分の眉がぴく、と釣り上がった。気に食わないけど認める、みたいなそんな空気を感じてふふんと鼻を鳴らす。

    「……はいはいっと。問題は俺がビリーの真似を出来るかってコトだけど……。あ、そっか。俺今ビリーなんだよね。」
    「ん?」

    先程までオレらしからぬ深刻な顔をしていたDJが、突然すたすたと鏡の目の前まで歩いていったかと思うと、おもむろにゴーグルを外した。




    *****



    「あっ!ちょっとDJ、そんな簡単に!」
    「アハ、かーわいい顔してるよね、ビリー。子供みたい。」
    「ゔぅっ!?DJ馬鹿にしてるデショ!?」

    まるで俺らしからぬテンションで後ろで慌てたように騒ぐビリー。鏡の中のビリーは本当に童顔で、いつもの胡散臭い空気感がまるでない。なんというか、迫力不足という感じか。
    鏡の中であえてニコッと満遍の笑みを浮かべてみせる。なんだ、これはこれで「使える」んじゃないの?女の子って結構可愛げのある男とか好きだしね。

    厄介だと思っていたけれど、謎ばかりのビリーに「なる」なんてちょっと面白いよね。
    ネクタイを解いて、シャツを弄ると何やらキャンディやらトランプやら沢山バラバラと転がり出て来る。いつもこんなものこんな所に隠してたんだ。

    「うわぁ!企業秘密!!やめてヨ〜!」
    「イヤ♡」

    珍しく慌てたビリーが掴みかかって来たので、えい、と試しにいつもの感じで能力を使ってみると、いつもの音波の代わりに慣れないグリーンの糸がそのままぐちゃぐちゃと放出されて、目の前の俺…ビリーを拘束した。……そっか、能力も交換されてしまったんだ。

    「うぅ!?DJ、自分の身体に対して無茶苦茶がすぎるよぉ〜!!」
    「まさか出来るって思ってなかったから……。……うーん、簡単にはビリーみたいに綺麗に拘束って出来ないモノなんだね。」
    「変なところで感心してないでヨ〜……。」

    動けないことですっかりしおらしくなってしまった自分の姿のビリーを横目に、このビリーの体をあちこちを観察してやる。なんとなく興味のままスラックスを寛げて下着の中まで見てやると、さすがのビリーもなにやってるの!と声を荒げて俺の姿のまま怒りか恥ずかしさの為かわからないけど、顔を真っ赤にした。ふふ、オモシロイ。自分の顔なのがちょっとザンネンだけど。

    「アハ、ごめんね、調子に乗っちゃった。」
    「も〜、DJのえっち!俺っちもおんなじコトしちゃうヨ!?」
    「え?別にいいけど?」
    「えぇ〜、ソコは嫌がってよDJ〜!」

    お互い姿形はあべこべなのに、交わす会話は変わらない。能力を解いてビリーを解放すると、俺の姿のビリーはぷんぷんとわかりやすく怒ったような見せつつ隣に腰掛けて来た。
    そして先程の慌てた表情と対照的に挑発するような表情を浮かべて見せた。

    「DJがそれ以上意地悪するなら、今からすぐタワーに帰って、ブラッドお兄ちゃんに甘えんぼしちゃおうカナ〜?」
    「はぁ?」

    聞き捨てならない言葉を吐いて、俺の身体で変に作ったようにクネクネとされて、素直に不機嫌を示して見せると、ビリーは冗談冗談怒らない♪といつもの調子で楽しそうに言う。どうだか。
    なんだかんだお互いの体をお互いで人質に取っているようなモノだ、とこの時思った。

    「まぁまぁ、ホントに冗談はここまで!俺っち絶世のイケメンになれてウレシ〜けど、DJは困っちゃうでしょ?とりあえず俺っちの力でなるべく早く治す方法を探すから、協力してネ♡」
    「アハ、困るのはこの姿で俺に勝手されたくないビリーでしょ?……まぁこれ以上は変なことしないよ。」
    「変なコトってなぁに?なんかヤラシ〜♡って、それは置いといて!とりあえず俺っちの真似っこ!出来る?」
    「あまり期待はしないで。まぁでも悪いようにはしないよ。」

    一応これでもビリーの「ベスティ」?だから、謎ばかりのビリーでもそこそこの事は他の人よりはわかるつもりだから。と、本人には言わないけれど胸の内でふふん、と勝手に得意になってみせた。




    *****


    「……あのさDJ?悪いようにはしないって言ってたよネ〜?」
    「してないでしょ?」

    あの日から3日後。例のホテルにまた再び集まって、同じ部屋に入った。
    ゴーグルをし続けてるのが嫌いなのか、目の前の自分は悪びれもせずにその、ほんの少しだけコンプレックスの幼顔を晒してとぼける。普段は一応付けてくれてたようだけれど。
    こちとらDJの普段の行動から、いつもなんとなくで放たれる言葉から、全部余す事なく完璧に再現して来たというのに。複数の女の子も怪しまれないように把握できるぶんだけ当たり障りなく対応をしていたし。さすがにDJの技術だけは無理だったから、それだけはいつもの揉め事解消スキルで回避して来たけれど。
    目の前の自分の姿の首元にはまだ新しいキスマークが目立って、普段身につけないようなネックレスまでされてる。まるでこれじゃ普段のDJそのまんまじゃん!

    「も〜……、そんなんで、イーストの面々には怪しまれなかったの〜?ホラ、同室のグレイとか〜。」
    「グレイ?あぁ、情報屋の仕事の一環で演技の練習をしてるんだって言ったらすぐ信じてくれたよ。」
    「変なところ頭が回るよねDJ〜…。」

    それとこれとは別じゃない?と、首元のキスマークを指さすと、ああ、コレね。と意味ありげに笑われてげんなりした。……まぁもうわかってるけど。色恋沙汰もいつもは面倒って言ってるコトが多いのに、ただオイラを揶揄うのが楽しいだけみたい。ホントに悪い男!

    「はぁ……DJってなにか女の子でも誘うフェロモンでも出てるの〜?俺っちの姿なのにぃ!」
    「アハ。安心してよ、してないから。これは勝手にされただけ。ビリーって童顔だからか漬け込まれやすいみたい。」
    「そーゆーコトじゃないんだけどナ〜?」

    まぁでもDJなりにうまくやってくれたらしい。
    情報屋のお仕事はオンラインで承れる分だけ取って、簡単なモノはDJに電話対応してもらっていたけれど、俺っちの口真似もわりと出来ていた。
    ……まぁとりあえずお互い上々ということで、今度はDJに驚いてもらう番だ。

    「まぁいいや!俺っちのコミュニケーション能力は伊達じゃないからネ!DJが引っ掻き回した分もすぐ取り返しちゃう!……それより、分かったから!」
    「何?これを戻す方法?まだ3日しか経ってないけど……。」
    「それを調べるのがプロのお仕事!俺っちの情報収集能力を侮らないでネ♪」
    「……それで、何?どうしたらいいの?」
    「うーんとネ、ちょっと耳貸してDJ。」

    自分に耳打ちするなんて変な感じ。
    でもこれからしなくちゃならない事はもっと変なコトだから慣れておかなくちゃネ。
    ぼそぼそ、と耳元で囁くと、俺の姿のDJは若干引いた顔をした。

    「……キス?」
    「YES!マウストゥマウスのネ。……さすがの俺っちもちょっとうげ〜ってなっちゃった。」
    「なんでそんなコト……。」
    「サブスタンスの効果で粘膜と粘膜を……って。詳しい理屈は説明が面倒だろうから省くけど……。まぁとりあえず、自分とキスして♡ってコト。」
    「自分自身と……ねぇ。」

    キスくらいどうってことないし、DJなら尚更だと思うけれど、さすがに自分自身にそれを向けるとなると少し気が引けてくるのはお互い様らしい。
    はぁ、とお互い溜息をつきつつ見つめ合うのもなかなか珍しくて、やれやれと肩をすくめた。

    「とりあえず目を閉じよっか。」
    「そうだネ。はいっ!閉じたヨ〜。」
    「俺も。」

    基本的に行動にあまり躊躇いが無いのが俺たちベスティスタイル。まぁ何でも無い事みたいに話しつつも内心少しだけ動揺はある。手探りでDJの……ほんとは自分自身に手を伸ばすと、腕に触れた。DJも真似するように俺の……DJ自身の肩に触れて、お互いゆっくりと顔を寄せていく。
    見えなくてもキスは出来る。お互いの顔を掌で包むようにして、探るように近付いて。
    近づくとどちらのかわからないけど、馴染んだような香り。DJの手に顔を寄せられて、ふにゅり、と唇が触れた。
    ……えーっと、粘膜の交換なんだからこれだけじゃダメなんだよネ。
    控えめに口を開けるとこちらからアプローチを仕掛ける前にするりと舌が絡んできて、つい怖気付く。顎に添えられた手は動くことを許してくれない。慣れてるその動きに翻弄されてしまうのは何となくちょっぴり悔しいけど、とりあえずこれで良いはず。戻っているか確認しようとして離れようとすると

    「んんぅ!?」

    がっしりと後頭部を抱き抱えられてそれは叶わなかった。舌先を吸って、口内を柔らかく撫ぜられて、弱いトコロを刺激されて。
    明らかに官能を煽るように動くそれに、もう!と目を開けると、綺麗なピンク色がこっちをまじまじと見てきた。意地悪。

    「っ……、ぷはぁっ、こ、こんなに濃厚じゃなくても良かったのにィ!!」
    「アハ、気持ちよかった?」
    「……むぅ……。」

    ここ数日何度か鏡で見てきた気怠げで色っぽい顔がやけにしっくりくる表情で楽しそうに笑っていて、元に戻ったのをまざまざと見せつけられた。
    最初はガセかと思ったけれど、ホントに戻っちゃった。……なら、とっておきの情報で、目の前でふふんと得意げにしてるDJにちょっとだけ仕返ししてあげよう。

    「ね、DJ。このサブスタンスの入れ替わりってね、触れた人全員がなるようなモノじゃないんだって!」
    「へぇ、そうなんだ。……あぁ…。まぁたしかにあの場で入れ替わったのって俺たちだけだったね。」
    「そーそー、さっすがDJよく覚えてたネ!それには条件があってネ。」
    「なに?」

    自分に戻ってなんとなくご機嫌なDJに手招きをして、その耳元でこっそり囁く。……あぁ、自分の懐かしい声。やっぱりこうでなくちゃネ。

    『仲が良い、相性の良い相手じゃないと発動しない』

    一瞬ぴくりと眉が上がって、なんともいえない顔でこちらをチラリと見た後、DJは気まずそうにそっぽを向いた。

    「ほら〜、言ったでしょ?DJは鳩さん、俺っちは豚さん♡相性はバッチリ⭐︎」
    「……はぁ。」

    いつもいつもそんなに仲良かったっけ、なんていうDJに仕返し。わざとらしく投げキスをするとはいはいと面倒そうに返され……たのも束の間。
    すぐにその顔はいたずらを思い浮かんだ子どものようになる。
    あっ、という間に頭の後ろに手を回されて、引き寄せられて。

    「……キスの相性も良さそうだったね?またしちゃう?」
    「……さっすが『ベスティ』……。」

    何度目かの苦笑いを覆い隠すように唇を塞がれて、長年慣れ親しんだ久々の自分の腕で、この可愛くなくて可愛い『親友』の背に腕を回した。



    2020年12月21日
    お題「交換」「冗談」
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    れんこん

    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
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    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

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    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

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