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    れんこん

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    れんこん

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    第4回ベスティ♡ワンドロ用
    ラジオドラマの続きみたいなフェイビリです

    #フェイビリ
    phobility
    #ワンドロ

    ただでさえ広いエリオスタワー。
    基本的に移動はエレベーターを使うように出来ているけれど、俺から逃げて行った悪い鼠はあろうことか滅多に使われることのない非常階段の方へ走って行った。
    談話室のある階からひとつ下がるとビリーのイーストセクターのスペースがある階になる。
    ビリーは体力があるほうじゃない。無闇矢鱈に逃げ回るのは、ビリーよりもはまぁ普通の男並みの体力の俺相手だと悪手だ。
    ……つまりは早めに部屋に逃げ込んでしまおうとしているんだろう。

    「ビリー!」
    「っ、ふふ〜ん!捕まえられるなら捕まえてみなサ〜イ♡」
    「っは、何そのノリ、」

    完全にこちらを揶揄う口ぶりで、ああもうと舌打ちをする。ビリーは体力は無いけど身軽だからか、走るのは早い。
    ビリーがタン、タン、タンと小気味いい音を立てて階段を駆け降りていく音。……ああそうだ、ここなら誰もいないしちょっとだけならいいかな。
    いい具合に空間も狭いし、反響が効く。
    走るなんて面倒なことはなるべくしたくないしね。悪い鼠を袋の鼠にしてしまおう。
    ほんの少しだけ、ちょっぴりだけの能力をのせ、

    パチン

    といつものように指を弾くと、音の振動が狭い空間の非常階段内を反響してお互い波になって重なる。

    「っうわ!?ナニコレきもちわる〜い!?」

    軽快に走っていたビリーの足元が覚束なくなり、千鳥足で階段をゆっくりと降りていく。ちょっぴりズルだけど、勝手に写真を撮っていったビリーだから、これぐらいお灸を据える程度で許してもらえるだろう。……それにしても即座にへたり込んでしまわないのがさすがビリーという所だけど。

    「ハイ、捕まえたよ。」
    「オーマイガッ!?俺っちのハニ〜!!あれ?ぅええ?」

    ビリーの手元から滑り落ちたスマホを取り返してやると、ビリーはようやくへにょりとその場に崩れた。下に落ちてしまう前にその身体を支えてあげて、耳元で「お仕置き」と囁くと、ビリーのゴーグル越しの瞳がこちらを恨めしそうに見ているのを感じた。
    音を圧縮したものを反響させて三半規管を一時的に麻痺させるものだけれど、元々あちこち飛び回る能力のビリーには効きづらかったらしい。普通はしばらく動けなくなるものだけれど、ビリーの様子を見ていると顔色は良くないけれど多分すぐ復活するだろう。
    とりあえずこんなところで誰かに見つかって問い詰められたりでもしたら面倒だから、そのままビリーが向かおうとしていたイーストセクターの部屋へ連れていくことにした。



    ***



    「……パスワードは?」
    「え〜、そんなのタダで教えるワケないじゃ〜ん!」
    「……はい、キャンディあげるから。これ、ビリーの好きなやつじゃなかったっけ?」
    「ワオ、DJビームス!よく覚えてたネ〜?でもダ〜メッ♡そもそも情報屋のスマホを触れるだけでも超!貴重なんだヨ〜?」
    「へぇ、そうなんだ?」


    イーストセクターの面々は出払っていて、話を聞くと皆それぞれ出先で休暇を過ごしているとのことだった。殆ど訪れたことの無いそこは自分たちのセクターとは雰囲気がまるで違い、リゾートホテルの一室のような雰囲気。
    ビリーの部屋も初めて入った気がするけれど、こちらもそのイーストセクターの雰囲気に似つかわしい風合いで、意外な綺麗好きを謳う親友らしいと感じた。……隣のスペースは地面にいろいろ転がっていて、なんとなく自分の部屋の行くあてのないプレゼントを思い出してしまったけれど。

    とりあえずビリーをそのお気に入りらしいハンモックではなく、大きめのベッドに寝せて、そのふちに腰掛けてビリーのスマホをいろいろ弄ってみるけれど、そのロックは外れることがない。
    何度も暴こうとしてもダメだと返ってきて、まるで本人そのものみたいに意思を持っているように感じてしまう程。

    「ふっふっふ〜、隙アリ!」
    「は?」

    ビリーのスマホを弄るのに夢中になっていると、ぐったりしていたはずのビリーが側ににじり寄ってきていて、いつのまにか俺のスマホを手にしていた。やはり三半規管が異様に強いらしい、こんなに早い回復速度なのは素直に驚いたと同時に、厄介だなと頭の中でため息をついた。

    「ちょっ……、ビリー!あり得ないんだけど、返してよ」
    「 NO NO〜!DJが俺っちのハニーを強奪しちゃったんだから、おあいこデショ?」
    「どこがっ…、ほら、返しなよ…っ、」
    「きゃ〜ん♡ベッドで押し倒しちゃうなんてDJのえっち〜!」
    「あぁもう……。」


    すぐにビリーの手からスマホを取り返そうと手を押さえつけようとしたら、器用なビリーの手からすんなりかわされて思うようにいかない。結局ビリーの腕は取れずに、身体を抑え込む形になってしまい、ベッドに2人で転がる形になってしまった。ビリーは俺の下でふざけたような口調できゃっきゃと嬉しそうに笑っているけれど、それでいて絶対そのスマホを返そうなんて思ってもないんだなという隙の無さだった。
    ……まぁ、いいか。俺と一緒できっとロックのかかったスマホなんだから、何も出来ないはず……
    なんて思ってただため息をついて食えないビリーの髪の毛を手癖のままつんと引っ張るように指に絡める。

    「……んー、DJのカメラロール、結構写真少なめだよネ〜。たまにクラブとか場所の写真はあるけど、あとは殆ど欲しい機材とかレコードとかのスクショとか……。」
    「ちょっと待ってよ、何でロック解除出来てるの?」
    「オイラはミリオンの誇る情報屋だヨ〜?こんなことくらい朝飯前〜☆ていうか、DJのラッキーナンバーだよネ、これ。ハッキングするまでも無かったヨ♡」
    「……。」
    「ん〜、彼女たちとの写真とかもあまり無いネ〜、メッセージで山ほど彼女たちから送られて来てるのに〜?保存しとかないの?」

    ほら、メッセージまで見られている。
    やっぱり抜け目ないし、大丈夫大丈夫なんてぬかしていたけれど、なにも大丈夫でもなんでもない。まぁ、やましいような内容のものなんて別に無いけれど、流石にこの不躾な行動に対する対価は取っても良い気がする。
    せっかくこの姿勢に落ち着いてるのだから、首筋に思わせぶりなキスマークでもつけて、情報屋の噂を煽ってやろうかと思って顔を首筋に近づけたら……、

    「あ!?」

    びく、とビリーの体が一瞬固まる。どうやら何かに驚いたらしい。まだ唇すら触れさせていないのにどうしたんだ、とビリーの顔を見ると、その顔は薄ら赤らんでいるように見えた。

    「……なに?変なものは特にないでしょ?」
    「いや、なんでDJがこの写真を持ってるノ?」
    「え?何、どれ?」

    さっきまでずっと俺に背を向けるようにしてきていたビリーがこちらへ向き直って来て、俺のスマホを目前に突き出して来た。その様子は戸惑いと、焦りと、困惑?なんだかいろいろ混ざったような表情で少し面白い。

    「あぁ、コレ。」

    ビリーが突き出して来たのは……、被写体がビリーの写真だ。いつものゴーグルを少しだけズラし、滅多に晒されない蒼い大きな目が片目だけ覗いた写真。戦闘の最中のワンシーンであるそれは、一時期ビリーのファンの間でレアショットとして密かに出回っていたらしい。たまたま彼女のひとり……それもビリーから俺の情報をかなり買っていた子が教えて来て、送って来たものだ。

    「えぇ〜、なんでなんで!?この写真が出回ってたのはオレも把握してたけど、気づいた直後にはいろんな手を使って揉み消したはずなんだけどナ〜?ていうか、なんでDJのスマホのカメラロールにあるの!?」
    「アハ、そんなに取り乱してるビリーって珍しいね。」
    「DJ!誤魔化さない!」
    「ビリーがそれ言う?大丈夫だから、なにかに使おうとか誰かに見せようとかした事ないよ。ビリーじゃあるまいし。」

    ならなんで、とビリーの口から紡がれて、次は俺の方が言葉に詰まった。
    ……なんで、俺がビリーの写真をわざわざ保存なんかしてるって。そんなの俺も知らない。
    好奇心といえばそうだけれど、一度顔は見たことはあったし、だからこんなの必要ないのに……わざわざ。無意識に。
    どくん、と心臓が音を立ててしまった気がして少しだけビリーと距離を置く。

    「……。」
    「……。」

    ビリーとちらりとお互いの視線を重ね合わせた。
    ゴーグル越しでも距離が近いとなんとなくそのレアな瞳の存在は感じられる。
    ……この間は、そういうコトだ。
    お互いがお互いの写真を勝手に所持しているのがわかった以上、立場は対等。さて、どうする?という意思表示。

    「……キャンプの思い出は消したくないんだよネ〜…?DJすっごくイイ顔してるし。」
    「ならこっちも消さないよ。」
    「 OK!それでいいから、約束して!その写真はDJが眺める以外に使っちゃダメだよ。」
    「……眺めないし。ていうか、それはビリーも。」
    「んもう、DJてば、俺っちに対して交渉持ちかけるとか……、さっすがベスティ!……って言いたい所だけど……。OK、契約成立デース。」

    お互い何も言わずにスマホを交換して、ようやく手元に馴染みの色が戻ってくる。そして、ほんの少しだけ操作をする。
    ここぞとばかりに少し取り乱した余韻の残るビリーの耳元で、わざとらしく囁いてやった。

    「……隠し撮りも程々に。」
    「!」

    ぱしゃり、と音が鳴って、スマホには取り乱したビリーの顔と、すぐ近くに寄った自分の顔。
    ビリーはすぐに悔しそうに顔を歪めたかと思うと、その手のハニーを持って俺に覆い被さって来た。




    2021年1月4日
    お題「スマホ」「追いかけっこ」
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    れんこん

    DONE第12回ベスティ♡ワンドロ、ワンライ用
    フェイビリ/ビリフェイ
    ほんのりシリアス風味
    目の前にひょこひょこと動く、先日見かけた忌々しいうさ耳。
    今日は見慣れない明るく所々にリボンがついた装束に身を包み、機嫌が良さそうに馴染まないタワーの廊下を跳ねていた。
    眩しいオレンジ頭に、ピンと立ったうさ耳はまだいいが、衣装に合わせたのか謎にピンク色に煌めくゴーグルはそのかわいらしさには若干不似合いのように思えた。胡散臭い。そういう表現がぴったりの装いだ。

    「……イースターリーグはもう終わったよね?」

    後ろから声をかけると、ふりふりと歩くたびに揺れるちまっとした尻尾が止まって、浮かれた様子のエンターテイナーはくるりと大袈裟に回って、ブーツのかかとをちょこんと床に打ち付けて見せた。

    「ハローベスティ♡なになに、どこかに用事?」
    「それはこっちの台詞。……そんな格好してどこに行くの?もうその頭の上のやつはあまり見たくないんだけど。」
    「HAHAHA〜♪しっかりオイラもDJのうさ耳つけて戦う姿バッチリ♡抑えさせてもらったヨ〜♪ノリノリうさ耳DJビームス♡」

    おかげで懐があったかい、なんて失言をして、おっと!とわざとらしく口元を抑えて見せる姿は若干腹立たしい。……まぁ今更だからもうわ 3591

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