Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    清(せい)

    @sei_umi_00

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 16

    清(せい)

    ☆quiet follow

    タル鍾

    一年以上、顔を合わせる度に「今日も可愛いね」と言い続けたクラスメイトのメンズが
    最後の年の学祭で女装をしていたので、
    メンズも「かわいい」と言い続けると本当に可愛くなります。実証済みなので安心してください。

    かっこいいタルも先生も居ないのでそれだけはご注意を。

    #タル鍾
    gongzhong

    甘々と水の結晶「可愛いね」

    「………。」


    彼は事ある毎に 口癖のように言う。
    かわいい などと形容され、初めは大人の男に向かって
    それは些かおかしなものではないかと抗議をしてみたが、
    「かわいいんだから仕方ない 」などと理解し難い理由で一蹴された、



    湯浴みのあと髪を乾かす時、
    自分の髪なのに俺には一切手を触れさせず
    俺にやらせて と言って
    乾かし、櫛でとかして、と甲斐甲斐しく世話を焼いては
    「綺麗だね」「いい香りがする」などと成人男性に対して使うには到底似つかわしくない言葉を散々垂れ流す。
    そうして 、「かわいいね」と言われながら寄り添って眠るのが休日の日課になりつつあるのが自分でも可笑しくて笑える。


    食事中にひしひしと感じる視線にももはや慣れてしまった。
    「かわいいね」なんて言って細められた瞳が
    あまりに優しすぎて、何も言い返せなくなってしまったままもう長いことそのままにしている。


    挙げ句の果てには、
    「おはよう、今日もかわいいね。」なんて、
    朝の挨拶とともに繰り出されるようにまでなった。
    どういうつもりかわからないが、恐らく彼は気が狂っている。
    いつからか満更でもなくなってきてしまい、今更やめろとは言えなくなってしまった。







    明日は久々に、互いの休暇を合わせることができた。
    どこへ連れていこうか。そういえば香菱が新メニューを考えたと言っていた。

    講義が一通り終わって余った時間を、明日の予定を考えながら市井を歩く。
    ふと、視界に入った店の主と目が合う。
    愛想よくにこりと微笑んでちょいちょいと手で呼ばれて、吸い込まれるように店の敷居を跨いでいた。


    こじんまりとした小屋の中は甘い香りが漂う。
    ずらりと並べられたアクセサリーやオイルの類。
    引き入れるに俺を選んだのは誤りではないかと感じるほど、黒い服が場違いな煌びやかさだった。


    「ふふ、恋してはるやろ?かわいい顔して、全部書いてあったわ。」


    「む、…」


    ふふふ、と笑われた。
    考えていたことをずばりと言い当てられてしまい、そんなにわかりやすい顔をしていたかと顔に熱が集まる。



    「うちにお手伝いさせてくださる? 」



    お相手はどんな人?若い人にはこれが人気よ。
    肌は弱くない?あなたは普段こういうものはつける?
    お相手は?
    次々に投げかけられる質問に答えながら
    あれもこれもと並べられた香膏やオイルを眺める。

    「物は試しよ」そう言って、オイルを手の平に2滴、落とされた。
    髪に馴染ませてみて、と言われた通り
    指先で髪をとくようにオイルを馴染ませる。
    「香りがいいでしょう?これはあなたのその綺麗な髪を守るオイルよ。」と言う。

    いつも俺の髪を触っている彼は、喜ぶだろうか?と思案する間に、

    「この香膏はうちが配合したんよ、どうかしら?」
    と蓋を開けて待っている店の主から
    「人差し指で真珠大を掬って、そうそれくらい。
    手首にのせて広げて」
    とこちらも言われた通りに香膏を広げる。

    甘い香りがするけれど、果実のように自然に香って甘ったるくない。

    彼は………どんな反応をするんだろうか。


    「いい香りだ」

    「ふふ」

    「2つとも貰おう…あ、」

    「どないしたん?」

    「財布を取りに行っても良いか?近くだからすぐに戻る。」

    呼び込んだのは私だからと試供品としてプレゼントするという店主を、俺が気になってしまうからと制止し、
    一度財布を取りに戻ってきっちり支払いを済ませた。


    品物を入れてもらい、受け取った紙の袋を手に
    日が落ちて港から入り込む冷えた風に
    髪を撫でられながら歩く。

    果たして彼は、どんな顔をするだろうか。
    いいね と言っていつものように優しく笑うのか、
    それとも、驚いた顔をするのだろうか。
    慣れない事をしたものだから、からかう様に笑うか…
    いやいや、彼奴はこういうことをからかったりする人物ではない。


    今夜は任務が終わったら部屋へ来ると言っていた。
    いつもと違う反応が見れるかもしれない。
    そんな期待から足取りは軽くなる。











    任務終わりに訪れた彼の顔には若干の疲れが滲んでいた。

    読みかけの本に栞を挟んでそっと閉じたあと、
    だるそうに横たわる彼を踏まないように、ソファに腰掛けた。
    胸に手をついて顔をのぞき込む。


    「随分お疲れだな、大丈夫か?」


    「うん、ここへ来たら一気に力が抜けちゃったかも。ははっ」



    腰に腕を回されて、髪に触れる。



    「なんかいつもと違う」


    …気づいた……が、

    予想していたものとは違う、訝しげな眼差しを向けられた。


    「駄目だったか…?」

    「誰と居たの?」


    起き上がって怪訝な空気を隠そうともせず、
    触れた髪に視線を落とす。
    その瞳には明らかに怒りが滲んでいた。


    口調こそいつも通りだが、
    ワントーン低くなった声と僅かに感じる殺気に焦る。




    「待て、これは……、お前が…」

    「…ん?」

    「いつも……髪を触るだろう?
    だから、気にいると思っ…」


    気に入って欲しかった。
    この明るい髪の男が口から出す「かわいい」の基準はわからないが、
    いつものように、かわいいだとか言って、笑って欲しかったのだ。

    尻すぼみになってしまった言葉を放置して口を噤む。



    「………俺のため?」


    疑われた不安と、羞恥心で心臓がうるさい。
    こくり、と頷くのが精一杯で顔を見れずに目を伏せた。
    向けられていた殺気は引っ込んだようだ。


    「はあ~、ごめん、誰と居たのかとか誰から貰ったのかとか考えて嫉妬しちゃった。」


    ごめんね と言って引き寄せられて
    ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、潰されそうな苦しさが嬉しく思ってしまうのだから俺も随分と絆されたものだ。


    「若者が好みそうなもの、を選んでもらったんだが
    気に入ったか?」


    「うん、いい香りだね。けど、次は俺も一緒に行っていい?俺に選ばせてよ。」


    「ははっ そうだな。次はお前に任せよう。」


    「何もしなくても鍾離先生はいい香りだし、綺麗だし、かわいいし。でも、俺のためにやってくれるなら、嬉しいなぁ。」



    けらけらと笑う顔が優しくて、買ってよかったと安堵した。


    「せんせーがかわいくて興奮してきちゃった」という彼の言葉の通り、押し付けられた熱。
    その後、彼の言われるがままに 流されに流されて
    それはそれは濃密な時間となった。

    翌日は考えていた予定はすべてなくなり、立てなくなった俺を甲斐甲斐しく世話を焼く彼と過ごす時間は、ゆったりとしていて香膏の香りよりも甘く、甘ったるいと感じる程であった。

    ………まあ、好き勝手させて許してしまっているので、
    1番甘いのは俺なんだろうな…。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕💖👍👍👍💖💞💞💞🇱🇴🇻😭❤❤💒👍👍👍💖💖💖😭👍💖💖💖😍👍💖💖💖💴🇱🇴🇻🇪🔷🔶😭🙏💖🍌
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works