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    さけけ

    ルツォンル

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    さけけ

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    TR(R)

    甘党「カプチーノのトールと、ええとグランデバニラノンファットアドリストレットショットノンソースアドチョコレートチップエクストラパウダーエクストラホイップ抹茶クリームフラペチーノでお間違えないでしょうか?」
    「ええ。持ち帰り用の紙袋もお願いします。」
     ちょっと疲れ目のツォンとコーヒーショップのスタッフをルーファウスは見ていた。目の前の2人のやり取りにルーファウスは頭の中は?でいっぱいであった。頭のキレに関しては自負しているところだが、処理し切れない情報量にただ目を丸くするばかりであった。

    現在は平日の昼下がり。人材派遣サービス会社との交渉が早々にまとまり、ルーファウスは1時間と少しの時間ができた。そこでツォンに電話してかの有名なコーヒーショップに一度入ってみたいと言った。電話越しのツォンは今日の書類仕事は多いだの歯切れが悪いことを言っていたが、交渉がうまくまとまったご褒美がほしいなどとごねた。一度社に戻って、すぐ近くの店舗ならばという条件でなんとかツォンを連れ出したのだ。欲を言えば外で待ち合わせてみたかったが、セキュリティー上の問題もあるのだろう。


    「いま何と言ったのだ?」
    「グランデバニラノンファットアドリストレットショットノンソースアドチョコレートチップエクストラパウダーエクストラホイップ抹茶クリームフラペチーノ」
    「ふっははは!お前!そんな真面目な恰好でなんでそんなに滑稽なことを言うんだ!ミスマッチすぎて本当に面白いふははははは。」
    「楽しそうでなによりです。会計は経費に入れときます。」
    ドリンクを待っている間も私の主人はずっと笑い転げていた。普段の白い上着ではなく丈が長いコートを着てグラスをかけているせいで、一見したところでは彼がルーファウス神羅とは見えない。だが今の笑い転げているやわらかい主人の方が本当の彼なのだろうななどとぼんやりと考えた。

    「お前が甘党なのは知っているが、おい!見てみろ!あの抹茶っぽいのもしかしてお前のなんじゃないか?すごく沢山のホイップがのっているぞ!うわさらにチョコチップも入れるのか。甘すぎる!絶対に口の中がめちゃくちゃに甘くなりそうだな!ツォンお前あれ持って歩くのか?」
    「ちょっと大きな声出さないでくださいよ。恥ずかしい。ちゃんと紙袋頼んだので多くの人の目には触れませんよ。」

    小一時間前の交渉とはまるで人が違うのだろうなあと思いつつ、楽しそうな恋人を見れてオフィスから出てきてよかったなともツォンは思った。

    「お待たせ致しました!カプチーノとカスタマイズの抹茶フラペチーノです!」

    コーヒーショップから出て社に戻る道すがら案の定ルーファウス様の「飲みたい!」のご要望が。はいはいとカプチーノを出すと「お前もだ」などと仰られた。
    「ええ、さっきこれ持つのは恥ずかしいとか仰ってませんでした?」
    「そこいらのカップルみたいで楽しいなあツォン!」
    「ちょっと人の話を聞いてくださいよ。」
    これ以上は言えなくなってしまい、渋々フラペチーノを片手に紙袋を畳んだ。



    残念ながら社からすぐ近くの店舗であったため、すぐに重役用の社のエレベーターまで着いてしまった。エレベーターの中でコートもグラスも取って「ルーファウス神羅」に戻られるのだろう。ポーン、と上の階に向かうエレベーターが来た。

    「ふう、短い間のデートだったなあ。時間作ってくれてありがとう。」
    「いいえ、良い気分転換になりました。」

    エレベーターに一歩踏み出すルーファウス様とともに私もエレベーターに向かう。

    「あれ、タークスのオフィスに戻らないのか?」
    「デートですので。社長室までお見送りさせてください。」
    彼は私の意図に気づくのだろうか。きっと気づくのだろうな。


    エレベーターが閉まる。最上階までの時間は限られている。


    「ふふ」
    「何ですか」
    「なんでもないよ」

    そう言って私の主人は私の首に手を回した。私も彼の腰に手を回す。顔が間近に近づいて、彼の金のまつ毛を、美しい光彩をじっと見た。カプチーノのコーヒーのにおいが感じられた。ふっと笑ってその目を閉じられた。ほらねわかってた。
    唇がどちらともなく重なった。軽く触れるものから始まって、すぐに舌を味わう。彼をすこしきつく抱きしめる。匂いが、感触が、ルーファウス様そのものを感じさせた。ヘアセットを崩さないようにそっと頭を撫でた。

    「ふふあまかったよ。とても。」
    「ルーファウス様、お慕いしております。」
    「うん。俺もツォンを愛している。」



    残酷なほど早いエレベーターは昇っていき、すぐに社長室の階まで着いてしまった。彼を解放し上着を脱がせる。次に会えるのは、キスをできるのはいつになるのだろうか。そんなことを考える。


    「じゃあな。」
    「ええ。またお誘い待っています。」


    こちらを振り向いて美しく微笑んで彼は扉の向こうへ行ってしまった。バタンという重い扉の音が空間に響いた。そこに残された私の口の中にはかすかなカプチーノの風味しか感じられなかった。
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