午前六時。日が伸びたミッドガルは爽やかな朝日につつまれていた。中心地にある某高級マンションのとある一室にて、二人の男は新しい日を迎える。
目覚まし用のアラームが鳴る直前に片方の男は目覚める。男はその黒髪をかき上げつつ、端末を操作してアラームを解除した。ベッドサイドの水差しからグラスに水を注ぎ飲み干すと、ふあと欠伸をもらす。
しばらく黒髪の男、ツォンは隣で眠る恋人の金糸の髪を、彼が目覚めないように撫でていた。
五分ほどその寝顔を堪能した後、ねぼすけの恋人にそっと声をかける。
「ルーファウス、」
そうツォンが呼びかけると、金髪の男はうっすらと目を開けた。
「もう起きなきゃ」
「......まだだ」
そう言って金髪の男、ルーファウスはツォンに身をすりよせた。
ブラインドから朝日がベッドに差し込む。白く照らされた裸体が、ツォンに昨晩の記憶を思い出させた。激しく求め絡み合い、二人とも気絶するように眠りについた。逃げようとする腰を離さなかったのは私のほうだ。久々に晒された白い裸体に、自分は思っていた以上に飢えていたらしい。
ツォンが猫を愛でるようにかりかりとやわく顎の下をかいていると、白い人は<>
その表情に曇りを感じ、ツォンは思わず尋ねた。
「嫌な夢でもみたのですか?」
「......いいや」
ルーファウスは未だ夢心地で感じたことがあった。
この季節が苦手だ。切り捨てた可能性の気配が感じられるこの季節はまるで<>を突きつけられているようで、厭気がさす。何もかも失敗でどんな時間も総て後悔に還るのに、彼がおしみなく手向ける愛を胸で感じる。今この瞬間は正解のはずなのに、
「そんなことはいい。きのうはよくも」
ルーファウスは朦朧とした目を開き、訴えるようにうめいた。いつもよく通る凛としたその声が、今はしゃがれていた。理由は散々私がきのう鳴かせたせいだ。
「かわいらしかったですよ」
しばらくすると、ツォンは上体を起こした。ベッドサイドに置いておいた水を口に含む。そのままツォンはルーファウスに覆いかぶさり、その口を近づけた。
「いやいや」
ツォンの意図を察したルーファウスがおもわず呟く。恋人の驚愕をよそに、ツォンは頬を水で膨らませ今にも零しそうな<>を近づけて来る。
ルーファウスはツォンの唐突な行動にそっぽを向いて抵抗していた。けれど、頬を膨らませたツォンが頬をほころばせ珍しくいたずらっぽい表情でキスをねだるものだから、ルーファウスは観念しその顔を正面に向け、そっと口を薄く開く。
唇が合わさるとゆっくりと少しずつぬるい水がルーファウスの咥内に入り込んでくる。ツォンはもったいつけて、ほんの少ししか唇を開かない。そのため、ルーファウスが<上から>流される水が気道に入り、咳き込むことはなかった。
親鳥と小鳥のように、口移しで咥内になまぬるい温度の水が運ばれる。ルーファウスは喉を鳴らして少しずつ水を運ぶ。私から受ける液体を体に取り込むために、健気に揺れているだろう喉仏がかわいらしくて、ツォンは見えないそれに触れて確かめたい衝動に襲われた。しかし、朝っぱらから噎せてしまうと可哀そうなので想像に留める。
水を渡し終えたツォンが口を離すと、透明の糸が渡った。ツォンは仰向けのルーファウスをのぞき込み、その唇の端からこぼれる水滴を拭く。
「おまえ......」
「もう起きましたか?」
「どうだか」
ツォンが笑みを深めて再度水を含もうとサイドテーブルに手を遣るが、ルーファウスはそれを制止する。むくりと起き上がったルーファウスはツォンに馬乗りになり、やや驚く彼を見下ろした。
「口開けてみろ」
言われた通りにツォンは口を開ける。ルーファウスも口を開け、その舌を伸ばす。舌を伝って、下唇から垂れそうな澄んだ甘露。ツォンはルーファウスの意図を理解する。ツォンはわずかな距離を保ったまま、甘美を受け取るために舌をめいいっぱい伸ばした。
ぽたりぽたりと垂らされるルーファウスの唾液をツォンは舌で感じた。次第にぷるぷると震える舌先の疲れは些事であり、その人からもたらされる透明が全てであった。
昨晩もこの人の唾液を堪能したのに、今はルーファウスの体で作られ、自分にもたらされる体液を、ツォンは我を忘れて切望していた。一滴一滴、舌に落とされる液体。この液体を取り込むことができるのは私だけという優越感。私の体に溶けゆくのが惜しい。
永遠とも思えるひと時。痺れを切らしたのはツォンの方からであった。昨日の執着といい、私は自覚しているよりよほど<>飢えていたらしい。気はずかしさは置いてきたものの何かを紛らわすかのように、舌をその人のものに触れるために、体を伸ばす。
舌をすりあわせて、やわらかく唇を重ねる。私が知りえない幻覚に責め立てられたこの人を慰めるように癒すように。
あなたが素直に心中を吐露しないのは、私が及ばないせいなのか。あなたの悪い夢から守って差し上げたいとさえ思う。この人の熱に浮かされている感覚。そんな心地をあなた以外の誰かによって感じる自分はとても想像できない。
優しく甘いキスの最中に、ルーファウスはツォンの既に芯を持っている陰茎をぎゅうと握った。思わぬ刺激にツォンはびくんと体を震わせる。
「ちょっと」
そうツォンが抗議してもお構いなしにルーファウスは続ける。ふん、いい気味だ。陰茎を握るルーファウスは竿をスライドするように動かし始めた。
「昨日あんなにしたのに」
「生理現象ですから」
照れ隠しなどではなく、本当に男につきものの生理現象だった。ツォンはルーファウスの手を退かそうとする。時間の限られた朝の時間に中途半端に体に熱を籠らせるのは得策ではない。
ルーファウスはつまらなそうに、ツォンの陰茎をしっかりと握りしめる。
「私のせいではなくて?」
「そうでもあります」
ルーファウスはふんと鼻をならす。ツォンの回答に<>したルーファウスが亀頭をいじるとその硬さを増す。ツォンの有り余る精力を見せつけられて、ルーファウスの胎が疼いた。
ツォンは中心部分を握るルーファウスの手から離した。ルーファウスが観念したかと思いきや、いきなり<左>胸のかざりに刺激が走った。ツォンがぎゅうとひねったのである。思わずルーファウスのあられのない声がもれた。
「やめてください」
そのままツォンは色素の薄い乳首を弄り続ける。優しく掻いて<>
ルーファウスは腰をシーツにこすりつけた
「そっちこそ」
ルーファウスはそう言いつつも、ツォンを責めるための手管を中止する兆しはなかった。
二人は昨夜の続きを始める。まだ眠いから仕方ないと言い訳をして。
両者に<>る熱は誤魔化せないほど昂り始める。互いを責め立て
相手の快感をもたらしているのはまぎれもなく自分であるという事実に、二人の心は充足し、<>し、そして紛れもなく興奮した。
ルーファウスの胸を性感帯に変えたのはツォンの度重なる愛撫によるものであった。ルーファウスも最初はただくすぐったいだけであったが、共寝のたびにしつこく愛撫を施すことにより紛れもない性感帯に変化していったのだ。今のルーファウスはシャツに擦れるだけで甘い痺れが走るときがあるほどに淫らに「開発」されてしまった。
もぞもぞと動くブランケットを剥がして、その下半身を露わにした。
案の定、細腰は悩まし気に揺れていた。自分がいたずらに乳首をひねっただけで腰をくねらせるその人の姿は、まさに淫靡そのものであった。
恍惚とした表情でこちらを見つめるルーファウスに、ツォンは下衆な笑みを隠すのに苦労する。この貴き人が自分の手練手管で乱れている様以上に、私は甘美な光景を知らない。
「胸だけで」
「誰のせいだ」
そう言うルーファウスは胸で拾う性感に苛まれ、ツォンを追い立てるために刺激することが疎かになりつつあった。
ツォンは飽きずに桃色の飾りを転がし続ける。先程までルーファウスはツォンの手を避けて身をくねらせていたのに、今は徐々に胸を押し付けるように愛撫を請う。ぎゅうと握られたシーツの皺が彼が感じる性感のもどかしさを表していた。シーツに押し付けられた陰茎はたらたらと涎をこぼしているのだろう。
「ツォン、舐めて」
「どこを?」
調子に乗るなと言わんばかりに陰茎を強く握られる。いだだだと笑って謝りつつ、彼を座るように促し自分はその隣に上体をやや緩く起こして寝そべった。
導かれた体位からツォンの意図を察したルーファウスは、にやりと口角を上げる。どうやら胸を吸いながらペニスをしごかれたいという要望だ。そんな赤ん坊じみたプレイにルーファウスも興味と高揚を隠すことはしなかった。
ツォンは私を依存させ従属させたがるくせに、傅いて従属したがる。セックスの序盤はやたら脚にまとわりついて、時には足の甲にキスを落とし指の間さえも舐めとる。そんな姿に心が掴まれている私も手遅れなほど、相当この男にまいってしまってる。
「ほら」
そう言ってルーファウスが体勢を変えた上で再度胸を差し出すと、ツォンは嬉しそうに吸いついた。ちゅうちゅうと片方の乳首を舌で転がす一方で、舌が届かないもう片方の乳首には触れずに焦らすように乳輪の周囲を撫でまわす。ルーファウスは手を伸ばして、ツォンのすっかり育った陰茎を射精に促すようにしごきあげる。
赤ん坊のように乳をしゃぶっているのに、みだらな行為に耽っている。このひどく倒錯した光景に、<>ような衝撃が起き抜けのツォンの頭にじわじわと広がる。
後光のように朝日につつまれた神々しい裸体を惜しみなく晒しつつ、快楽に歪む表情と熱を求めてけぶる青がひどくアンバランスであった。聖母のような慈愛を放つのに、娼婦のように淫蕩に悦楽を求める私の恋人。
ツォンはルーファウスの<>に夢中で胸をむしゃぶりついた。
ルーファウスは愛する男が自分の胸に吸いついている様を潤む目で見ていた。昨晩も胸は散々弄られたが、朝日の中が差し込む部屋の中ではっきりとした視界をもって眺めるツォンが己の胸に執着する姿は格別であった。<>
徐々にエスカレートしていく刺激は直接的な刺激を渇望させる。ルーファウスの腰はその意思に反し、再度くねり始める。すっかり硬く張りつめたペニスからこぼれるカウパーがツォンの腹を伝った。
「ツォン、もう」
ツォンは先程から主張するルーファウスの陰茎にそっと触れる。張りつめた亀頭を刺激して、昨晩のように色めいた声をもう一度聞きたい。
軽くスライドすると熱に浮かされたようにその頬が紅潮し始める。ツォンがその亀頭を指頭でなぞると、ルーファウスの背がしなりツォンの口から乳首がこぼれた。そのままツォンは上体を起こし、ルーファウスを組み敷く。
「じかん」
「もう少しだけ大丈夫です」
ルーファウスの後孔に手を遣ると、昨晩散々抽送したためそこは既に緩かった。それでもツォンはローションとともに指を差し込み、ナカを広げる。
ぐちゅぐちゅと鳴り響く指でかき混ぜる音も、更なる性感を期待する二人の体温も、爽やかな朝の空気に不釣り合いであった。しかし、数分後あるいは十数分後に待ち受ける快感を夜まで先延ばしにするという選択肢を、二人は持ち合わせていなかった。
ルーファウスはツォンの首に手を回し、催促する。
「もういいから」
ツォンは自身に手を遣り、ゆっくりと挿入する。ぬぷぬぷとツォンの陰茎はルーファウスのアヌスに難なく飲み込まれていった。
「っつう...イイ...」
ツォンが腰を艶めかしくこねるように揺らすと、ルーファウスから声が漏れる。
やはり明るい中で間近で感じるこのひとの色香はあまりに目に毒であった。ツォンは数時間前には散々放出したのに、猛る下半身をぐっと抑えることは難しかった。弱いところをかすめただけで<>に鳴き、よだれさえ垂らして舌足らずに自分を求める様にツォンも応じる。
「そんな、エロくて、大丈夫なんですか?」
「いきなりなんだ」
「
そう言ってツォンはストロークを中断して、白く細い首に顔を埋める。やや抵抗するルーファウスをよそに、ツォンはそのまま舌で皮膚を食んで内出血を残した。シャツを着て、あの襟が立ち上がったジャケットを着れば、あまり目立たないであろう。それでもこの人は抵抗する。私という伴侶がいるにもかかわらず、だ。
「ちょっと」
ルーファウスの手に体重をかけて、上からのしかかり押しつぶすようにピストンすると
ルーファウスは容赦ない抽送に背筋が泡立つ心地であった。
快感でスパークしかけている
普段包み隠されているツォンの暴力性が
「
ミッドガルがあわただしく目覚め始める数刻前