掌編習作君はきっと知らないだろうね。人間の子供はキャベツから生まれてくるんだよ。
そう言って彼はおもむろにしゃがみ込み、畑に並んだ、程よく育ったキャベツを一つやさしく撫でた。
「海外産コウノトリの話をするために俺をこんなところへ連れてきたわけ?」
俺は目の前に広がる一面の緑を見渡した。なだらかな丘の斜面は見事にキャベツで覆われ、地平線まで続いている。
俺が呼び出しを喰らったのはつい今朝がたのことだ。最寄り駅まで出てきたらそのまま軽トラに乗せられ、3時間かけてこの山間の農村まで連れてこられた。このくらいの嫌味は許されるだろうと思った。
俺の言葉を受けて、彼はいたずらっぽく笑った。
「今年はすごく出来がいいんだよね」
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