「おい、キース起きろ」
耳元でそんな声がしてくる。その声はブラッドの声のようでどこか少し高い。
「んん…」
だが、呼ばれる声よりも睡魔の方が勝っている。気のせいということにしてもう一度眠ることにする。
「おい、起きろ」
今度はそれに加えて頬の当たりをぺちぺちと叩かれている感覚がある。だけど、叩かれている範囲がすごく小さい。指で叩いているのかというくらい。さすがに違和感があってまぶたをあげる。そこにいたのは
「ブラッド?」
小さいが確かにブラッドの姿をしている小人と表現するのが正しい存在がそこにいた。あまりにも信じがたい状況に思考が止まる。
「何をぼーっとしている」
もう一度呼びかけられてはっとする。それから頬をつねる。痛くない。ということは…これは夢だ。それならこの状況も理解できる。だが、どうしてこんな夢を見ているんだ?願望という可能性は捨てる。
「いつまでそうしているつもりだ」
また声をかけられる。起きてからまったく動き出そうとしないオレを不思議に思ったのだろう。小さな目でオレの顔をじっと見ている。その様子を見ているうちに邪な感情が出てきた。頬をつねっていた手で小さいブラッドをつつく。その衝撃で小さいブラッドは尻餅をつくように転ぶ。
「何をする」
声を荒げて文句を言ってくるが怖さはない、むしろかわいい。どんどんいたずら心が沸いてくる。尻餅をついたブラッドの足の裏をくすぐってやると肩をびくりとさせた。
「やめろくすぐったい」
くすぐったそうに身じろぎをしている姿に興奮した。エロいことをしてやりたくなってくる。さすがに自分の思考をヤバいとは思った。だけどもう止められない。夢の中だし、まあいいだろう。くすぐっていた指を動かして敏感な所を軽く押す。
「ひあっ?」
ブラッドが甘い悲鳴をあげる。直感的にやばいと思った。このままだと何をしでかすかわからない。理性と欲望がせめぎ合う。
「キー…ス…」
ブラッドが甘い声で名前を呼ぶ。もう駄目だった。頭の中で何かが切れる音がした。その瞬間、視界が変わる。ほんの一瞬まばたきをしたすきに。頬をつねってみると今度は痛い。今度は現実だ。意識が浮上するにつれて、体が熱を持っていることに気づく。その熱は冷めそうにない。さっきの夢のせいだ。夢の中での自分の行いのせいだ。
「はぁ~~~~~~~~~」
ため息が出る。あんな夢を見た自分が嫌になる。持て余した熱をどうしたらいいのか。さっきの夢を思い出すとまた興奮してきた。仮にこの話を誰かに聞いてたらドン引きしてた。つまり、今自分にドン引きしてる。
「あぁ~~~~~~~」
本当に今回はなんていう夢を見たんだろう。自分の見た夢に嫌になる一方でどこか楽しんでいた部分があったことが嫌だ。それでもさっきの夢をまた見たいと思っている自分がいることに気づいてまたため息が出た。