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    しおさば

    文アル。ぶらい、しらかば贔屓。
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    しおさば

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    sgdz (2025/6/19)
    はいゆう×あいどるパロ
    どるおたsgのdzクン語り

    こじらせリアコ男子 俺は、志賀直哉。俳優だ。今はドラマの撮影中。出番はしばらくないので、正直暇だ。なので恋人の話をする。

     俺の恋人は、俺と同じ事務所のアイドルグループ『ブライハ』で、あざとかわいい担当のオサムこと太宰治。一緒に暮らしている。事務所には認めてもらっているが、世間には知らせていない。知られてもいない。知らせるつもりもない。お互いがファンであると言うことだけは、世間に認知されている。今のところは、だ。

     『ブライハ』は、ファンサービスが元から多い。特に太宰はものすごくて、ライブなんかでは時間の限り笑顔で応えているらしい。まさに神対応というヤツだ。太宰に惚れたのも『ブライハ』がまだ事務所に入る前に上げていた動画サイトの配信で、視聴者への対応が面白かったからだ。当時、どれだけ太宰へ投げ銭を貢いだか。ちなみに、ここから太宰と恋仲になるまでの経緯は、長くなるので割愛する。
     その反動か、家ではニコリともしない。それどころか、常に怒っている気さえする。すぐ、俺に八つ当たりをしてくる。最初はその違いに戸惑ったが、それに快感を覚えるようになったのは、一緒に住むようになってすぐだったと思う。そのギャップが堪らないと感じるようになった。ツン九割のツンデレだ。はたから見たら、嫌われているのかと思うだろうが、俺は嫌われている気はしない。本当に俺のことが嫌なのであれば、太宰は家から出て行くはずだ。素直に俺に甘えることが出来ないだけなのだと、ふと気が付いた。それが太宰の、俺への愛情表現なのだ。可愛すぎる。
     このいつもと違う太宰の可愛さを、正直世に知らしめたい。俺は同担歓迎だ。もっと世間と太宰のことを語り合いたい。だが、太宰と事務所がそれを許さない。太宰は照れているだけだろうが、事務所が「オサム君は、『ブライハ』は、アイドルだよ。ファン皆の恋人じゃなくちゃ」と、俺一人の恋人だと公に言うわけにはいかない、と言う。アイドルの語源は、偶像だ。憧れの対象でなければならないので、事務所の主張は解る。このツンデレ太宰を独り占め出来ていると考えれば、まあ悪くはない。

     今日はそんな太宰の誕生日である。だから『ブライハ』で太宰の誕生日記念の生配信が予定されている。この日に仕事を入れたマネージャーを心から恨む。仕事を入れるなと俺は言ったが、「オサム君は生配信の仕事が入ってるし」と言い、俺に仕事を入れやがった。その生配信をリアタイで見たかったんだ、が。そばで待機しているマネージャーを睨みつけてやったら、ニヤリと笑ってきた。俺は大げさにため息をついた。
     仕事だからと、朝出掛ける前に太宰に香水を贈った。誕生日プレゼントだ。俺が愛用している物と同じ物。いつだったか、太宰が俺の匂いが好きだと言った。いつか太宰に贈ろうと、ずっと思っていた。そして今日、やっとプレゼントすることが出来たのだ。俺の前でその香水を使うことはないだろうが、仕事先では使ってくれるだろう。『ブライハ』の他のメンバーにからかわれて、顔を真っ赤にする太宰は、容易に想像することが出来る。
     そろそろ生配信の時間だ。チラリと時計を気にしたら、手元の時計を確認して、マネージャーが「呼ばれるまでなら」と、配信を見ることを了承してくれた。俺はガッツポーズをし、嬉々としてスマホを取り出した。『ブライハ』のファンクラブサイトから、生配信の動画サイトへ繋ぐ。イヤホンをしようとしたら、マネージャーも聞きたかったのだろう「一個よこせ」と言ってきたので、渋々イヤホンを片方渡した。イヤホンを半分こだなんて、太宰とやりたいシチュエーションではないか。なぜ、マネージャーとやっているのか。まあ、呼び出しが来たらすぐ気づくだろうから、いいか。

     生配信が始まる。開始のあいさつもそこそこに、ロウソクに火が灯されたケーキが出される。手作りのようだ。定番のバースデーソングを歌い、終わったと同時にロウソクが吹き消される。『ブライハ』メンバーからのおめでとうと、太宰のありがとう。視聴者からのコメントと投げ銭が激流のように流れていく。さて、俺も貢ぐかとスマホを手に取った瞬間、画面上に表示される送金限度額最高の投げ銭。コメントを確認するために手元に置いていたのであろうパソコンを見て驚き慌てふためく『ブライハ』メンバーと、俺。『ブライハ』ファンとして、今回の生配信でどのファンよりも一番最初にやりたかったことだった。アカウント名は。
    「お前かいっ」
     隣にいるマネージャーを小突いた。俺から奪った片方のイヤホンで配信を聞きつつも、自分のスマホをいじっていたから、はっ倒そうかと思ったが、マネージャー自身のスマホで配信を見ているだけだった。マネージャーがケラケラと笑っていた。

    「ところで、オサムクンからいつもとちゃう匂いがするんやけど」
    「香水変えたん?」
    「うん。前からいいなって思う香水があって。でもちょっと高くて買うのためらってたんだけど。誕生日だからいっかなって、買っちゃった。やだった?」
    「ややないよ。ええ匂い」
    「でもどっかで嗅いだことあんだよな」
    「ワシも思った。どこやったかなあ」
     頭を捻って思い出そうとするメンバーたち。太宰自身が買ったということにしたようだが、その香水は俺が今朝誕生日プレゼントととして贈ったものだ。太宰はさっそくつけてくれたのだ。感無量だ。そして俺は、太宰以外の『ブライハ』メンバーとも面識がある。もちろんその香水をつけて、メンバーたちと会ったこともある。今の太宰はおそらく、俺の名前がメンバーたちから出てくるんじゃないかと内心ヒヤヒヤだろう。画面上では、いつもの営業スマイルを貼り付けているが。
    「あ」
     その匂いの元の出どころに気づいたようで、メンバーたちが同時に顔を上げる。太宰が揺らいだ。俺にしか感知出来ないほど、少し。
    「ケッケ。あかんて。マネージャーからめっちゃNG出とる」
    「ふはっ。めちゃくちゃ渋い顔して首振ってるし」
     画面外のマネージャーに、それ以上言うなと言われたらしい。もちろん、このマネージャーとも会ったことがある。俺の事務所の社員だからだ。むしろ、この『ブライハ』マネージャーの方が、メンバーより先に、太宰の香水は俺があげたものだと気づくだろう。とりわけ太宰のことに関しては敏感だ。
    「商品名はダメだよね、大人の事情で」
     心なしか、太宰がホッとした顔をしている。

    「ねえこの香水、オサム君が自分で買ったって言ってたけど、もしかしてナオヤがあげた?」
     隣のマネージャーが言う。ナオヤは俺の俳優としての名だ。あくまでも今はドラマ撮影の待機中。まさか、誰かが呼びに来るかも知れないところで、『ブライハ』のファン全開で、配信を見ているはずはない。青春映画を見ているような爽やかな顔で、推しのアイドルグループの配信を見ることなど造作もない。俺はマネージャーの質問には答えず、爽やかな笑顔を向けた。マネージャーが微妙な顔をした。

    「ワシも変えよっかな、香水」
    「なんなら、みんな同じのでいーだろ」
    「なんで、やだよ!?」
    「『ブライハ』の結束感的な」
    「け っ そ く か ん」
    「個性なくなるだろ!?」
     笑い混じりの会話。太宰が必死に抗っている。まあ嫌だろう、メンバーから俺と同じ匂いがしたら。正直、太宰から俺の香水の匂いがするのも、微妙だ。だが、この匂いが好きだと言ってくれたし、俺の前でこの香水はつけないと思ったから、プレゼントしたのだ。

     それから五分もせず、外からノックが聞こえ、ドアが開いた。もうすぐ出番だからと、スタッフから撮影現場での待機を伝えられた。

     俺はイヤホンを外す。名残惜しむように、絵文字のみのコメントと送金限度額最高の投げ銭を投稿し、配信を切って、仕事へと向かった。

     後から太宰に言われたのだが。アカウントは俺だと『ブライハ』メンバーにバレているので、配信中はスルーしたが、その絵文字の真意を知ろうと、配信後にメンバー内で大喜利が始まったらしい。そのままの意味なのだが。

    🎁👌
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