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旅行の出発の日、つまり鶴丸と会った日から二週間後の午前9過ぎ。俺と山姥切は駅の改札口で待ち合わせた。そこに現れた山姥切は勿論あのメイド服…ではなく、初めて見る私服を着ていた。デニムのパンツにレース生地の半袖のブラウス。旅行鞄は思っていたよりもごく小さなものだった。1.5ℓほどのスーツケースがたったひとつ。別段遊びに行く訳ではないのだから、大荷物を持って来られても困るがそれでも女が遠出をするにはあまりに少なく思える。そういえばいつだったか、山姥切が俺の部屋へ泊まりに来た時も、あまりの身軽さに驚いたような。そんな記憶を辿りながら、俺と山姥切は改札を抜け、凡そ3時間にも及ぶ列車の旅路へと足を踏み入れた。
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