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    shin1189

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    shin1189

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    イベント用その3。ネームレス仕様

    #FGO夢
    #パーシヴァル
    percival.

    パーシヴァル×男夢主 いつかの聖杯戦争※今後シリーズものとして書く予定のもの(その際はすけべ要素あり)をイベント用に先出ししているので尻切れ蜻蛉感がありますがご容赦下さい。



    「此度、極東の地にて聖杯戦争が行われる事となった」
    「……俺が此処に呼び出された理由、聞きたくはないですね」
     入室して顔を付き合わせるなり、向かいに座すロードの開口一番。此方は溜め息も吐きたくなる。

    「君を、時計塔枠に抜擢したい」
    「抜擢したい、ではなくて抜擢すると決めた、でしょう」
    「まあ、うむ。魔力装置たる聖杯を、其処ら辺の魔術師に変に使用される事を防ぐ為であるが。人理保障機関にいた君なら、英霊と縁も深かろう」
     目の前のロードは特に何かを揶揄した訳では無い。

     俺が勝手に、とある英霊――カルデアで特殊な関係性を持つに至った英霊を思い浮かべてしまっただけの事。
     彼はカルデアの解散時に座に戻っていった。カルデアに集った英霊の皆と同じく。
     だから、彼と俺の関係はとうに終わっているのだ。元より、英霊と魔術師。いくら俺が半分妖精で、人間よりは寿命が長いといっても、生きる世界がそもそも違っているのだ。

     ***

     数日後、飛行機から降りた俺は、極東の地に足を着けていた。結局断れ無かった、というか、ロードに呼び出された時点で決定事項であり、此方に拒否権等無かったんだが。
    「――――」
     右手に違和感を感じ見ると、令呪が浮き出ていた。まずは第一段階ならぬ必要最低限はクリア、と。
     そういえば、この列島の何処かに、藤丸が住んでいるのだ。賑やかながら平和が滲んでいる景色は、藤丸らしくて思わず笑みが溢れた。
     俺はこれからこの列島の一角で殺し合いをするんだが。そう云えばペペロンチーノも列島出身である――そう云う側面も有る土地なのだろう。

     潜伏先を数ヶ所見繕った後、早速召喚の準備に取り掛かる。聖遺物らしい物は何も支給されず、また用意するアテも無いまま来てしまった。つまり本当の本当に「カルデアでの縁」頼みの召喚になってしまったが、そもそもそんな縁も有るんだかどうだか……。
    「――天秤の守り手よ――――!」
     さて、一通りは決まり通りに実行したが、待てど暮らせど召喚陣には何も現れず。
     ほらやはり、俺みたいな半端者に応えてくれる英霊等いないのだ――。諦めと云うよりも、分かりきっていた事。
     脳裏を掠めた一人の男性の姿を振り払い、俺は魔術の痕跡を消して闇夜へと去った。

     時計塔代表のマスターにされてしまい、聖杯戦争に参加する事になってしまったが。何も、生死を掛けるつもりは無い。
     適当な場面でマスターを降りて、この地を脱出する。
     そういう腹積もり、だった。


     ――どうしてこうなった!!
     俺は現在、アサシンのサーヴァントに追われている真っ只中にあった。
     先程、夜間に出歩いていた民間人と、その魂を喰らい魔力を得んとするアサシンを見付け、それとなく民間人を助けた処、アサシンに捕捉されてしまったのである。
     民間人を助けるのは、半端者でありながら人間界に属し続ける己の矜持なので、俺の勝手に過ぎないんだが。

     己の敏捷を上げつつ、足止め魔術も行使しながら逃げ続けているが。サーヴァント相手、ましてやアサシン相手では到底撒けまい。
     ちっ、ここまでか……土台無理だとは解っていても、少し粘ってみたが……。

     俺は無様にも転ばされ、身を起こした処にアサシンの凶器が迫る。
     せめて、とアサシンを睨み付ける俺の視界を、斬撃の光が侵食していった――――

     痛みは、訪れなかった。
    「――――!!?」
     代わりに、刃を弾く音が響いた。
     風が頬を撫でる。どこか穏やかで懐かしいソレが止むと。

     目の前に、長身の、白銀の騎士が立っていた。


     彼は左腕の鎧と一体となった大盾を前に出し、アサシンの得物を受け止めていた。
     その力が拮抗していたのは一瞬で、彼は左腕を振り払って得物を弾き、流れる様な動きで右腕に持つ大槍を一払いさせた。

     その攻撃をアサシンは後退して躱し、やがて、分が悪くなったと見て去っていった。

     アサシンの気配が完全に離れてから初めて、彼は振り向いた。月を背にしたその動きが、妙に神々しく見えたのは――命を救われた事に依るものか。
     それとも――――

     "初めて"見た彼の表情は、先程迄の戦闘の為か険しいままだった。
    「貴方が、私のマスターか」
     彼は凛々しくも涼しい声で、そう、口にした。

    「――――」
     俺の方は、口を開けど言葉に成るものが出て来ない。魔術師たれど、命の危機に晒された直後は、只の人間だった。
     果たして彼は、このみっともなく尻餅を着いている俺を、どう思うのか。
     いや、俺の良く知る"彼"とは別の存在なのだ。普通に考えたらそうなのだ。それなのに、俺は。

    「――等と、意地悪を言うのは止そう」
     彼は一気に表情を崩し、人の良い笑みと表情で俺を見詰めてきた。
     身構えていた俺はただ呆気に取られてしまって。彼が、――――である予感がするのに、その予感は高まる一方なのに。今一つ上手く言葉も出せず、尻が地に貼り着いたままだった。

     彼は、そんな俺の様子にすら穏やかな笑みを向け、傍らに片膝を着く。
     そして流れるような動作で、俺の手を取り、唇で令呪に触れた。
    「召喚に応じ、参上致しました。遅参を御詫び申し上げます。我がマスター」

     全てがスローモーションのようだった。彼の一挙手一投足を目で追っているばかりだった俺は、この時本当に息が止まるかと思った。
    「っ!! 、ランサー……!」
     思わず真名を呼びそうになり、慌ててクラス名を口にする。

    「――はい」
     パーシヴァル殿が返してくれた笑みにより、俺の中でも全てが胸にストンと落ちていくというか、平常心と感覚が戻ってきた。

    「と、長居は不要だ」
     パーシヴァル殿は俺を横抱きするなり、闇の中を跳躍した。
    『どちらへ行けば良いかな?』
     念話で尋ねられ、俺はアジトにしているホテルの部屋を指示する。

     部屋に到着してから、まず俺は結界が破られていない事を確認した。
    「大丈夫です。此処なら会話をしても聴かれる事はありません」
    「うん、流石だ。だがもしもの場合も有る、常に緊張感は絶やさぬ様にしておこう」

    「それにしても……まさか貴方が……」
    「うん、私自身にも不思議で仕方が無いのだが……かつてカルデアで召喚され、君と出会った私が、本来の真名とは別個で座に存在し続けていたと云うか」
    「俄には信じ難いですが……」
    「君からの召喚要請に、何としても"私"が応えたくてね。遅くはなってしまったが、間に合って良かった」
    「なる、ほど……?」
     本人が言うのだから、そうなのだろうが……。色々と釈然とはしないが。

    「エーテル体だから身体を構成するソレは以前と異なるかもしれないが、私は正真正銘、貴方のパーシヴァルだ」
     彼の微笑みの前には、ただ納得しかなくなってしまう。迷いの無い、純粋で力強い微笑み。
    「全く、もう……卑怯なんですから……」
     俺はそう呟きながら、込み上げてくるものを堪えるのでいっぱいいっぱいだった。


    「――成程、時計塔から派遣されただけなのだと」
     気を取り直して、俺は聖杯戦争に参加している経緯を説明し、情報を共有した。
     時計塔の意向による参加である事、拠点はいくつか用意している事、結界も分かり難く張っている事、現在判明しているアサシンのサーヴァントについて。
    「私は魔術は得手では無いから、魔術戦は貴方に任せる事になるだろう。物理的な戦闘や対サーヴァント戦に関しては全面的に私が担おう」
    「それは、勿論……俺はアサシンに対してもあの様でしたし……足止めぐらいはできますが」
     かつて、カルデアでは多くの英霊と生活を共にしてきた。それで心の何処かに緩みがあったのかもしれない。先のアサシン戦で、サーヴァントが"兵器"であると、まざまざと思い知らされたのだ。

    「ふむ。聖杯戦争参加の理由は分かった。が……いっその事だ、勝利してしまっても構わないのだろう?」
     全く。何でこう、パーシヴァル殿は時々さらっと大胆な事を言ってのけるのだろうか。
     決して驕ってはいないが、確かな強さと自信があって。だからこそ率直に口に出せるのだろうが。
     そういうところですよ、本当……。

    「それは……そうでしょうが。当たり前ですが、言うは易し、ですし……そもそも、召喚に応じたと云う事は、貴方にも聖杯に掛ける望みが有るのでは」
     久し振りにパーシヴァル殿に振り回されて、懐かしいような、嬉しいような気がしてしまい、俺は咳払いをして何とか平静を保とうとするのだった。

    「確かに、私の願いか……貴方のサーヴァントとして召喚に応じる事、かな」
    「それだと既に叶ってしまっているじゃないですか」
    「そうだね。うん、貴方とより長くいられる事。あわよくば、優勝して末永く共にありたい。こんな所かな」
    「、それは……」
     夢を見過ぎている。そう簡単な事ではない……。

    「そう言う君は?」
    「っ、――――」
     言えるはずもない。同じだなんて。
     そういうのは俺の気質では無いと云うか、羞恥が物凄いし。それに、口に出してしまうとフラグになる可能性がある……この極東の地には言霊なんて言葉もあるのだし。

    「フフ、貴方も胸が高まっているんだね」
    「ちょ、勝手に読まないで下さいっ」
     パスを通じて感情が伝わってしまったらしい。うう、契約を結んでいる弊害に俺一人が振り回されている。
    「全てが分かる訳では無いが。今は降れ幅が大きかったからね」
     そう微笑みながら、パーシヴァル殿が近付いてくる。俺には彼の感情は一向に読めないのに。

    「折角再会できたんだ」
     腰を抱かれ、軽く口付けられる。
     酷く懐かしい、もう二度と触れる事の無いと思っていた感触。切なさでどうにかなりそうになりながら、俺はパーシヴァル殿の広い背にそっと手を伸ばした。
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