単純で、純粋な 時計が11.29 00:00の表示にかわる。
その瞬間を盛大に祝ってやりたいところだが生憎と愛しいSleeping Beautyは俺の腕のなかですやすやと気持ち良さそうに寝息をたてている。
先日の大会で若手の追い上げをはねのけて表彰台の真ん中に立ち、グランプリファイナルの出場を決めた勇利は昨日もファイナルへむけての練習に励んでいた。
ベテラン中のベテラン。
たったいま三十一になった勇利は相変わらず大きな怪我もなく、体力は……昔より少しはおちたかもしれないけれど、その分をカバーする磨きつづけた技術で頂点を譲らずにいる。
元々、音楽の体現に優れ、表現力には定評がある勇利ではあるが、そこにたゆまぬ努力で身に付けてきたジャンプを組み込み、そしてそのステップは世界中を魅了してやまずにいる。
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