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    はれゆう

    @kaokanah ちょっとあまりにアレな絵/漫画を流すことにした えっち・・・だからあんまりみないで・・・・・※3は朔間零朔間凛月羽風薫3名の左右めちゃくちゃで挿入があるので精神が強いひとだけ見てください

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    はれゆう

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    ふせったーのヤツの移動
    (凛月とナッちゃんがお話してるやつ)

    ##零凛

    「俺にも塗ってよそれ」

    目の前のボルドーじみた口元に向かって告げると、口元の主は驚いたようだった。
    「何、そんなに驚くこと?ナッちゃん」
    「いいえぇ、失礼したわね?凛月ちゃんってこういうの興味ないのかと思ってたから」
    背の高い、生物学上「彼」と呼ばれるその人物は大げさに踵を返し、
    どれが似合うかしらとメイクボックスの中を弄る。それを塗ってと言ったのに。
    「それに興味があるっていうか、行為に興味があるの。
     朝からナッちゃんずっといつもと雰囲気が違ったから、それを塗るとなにか魔法でもかかるかと」
    俺はメイクルームの青いパイプイスに寄りかかって魔法使いのように手を振った。パイプがギシギシと音を立てる。
    天下のKnightsのメイクルームにこんな錆びたイスを設置するなんてどういう神経なのか。
    後でエッちゃんに文句を言いに行こう。もっと睡眠に適したL字のソファーでも置くべきである。

    そう、今朝ESの入り口で出くわしてから鳴上嵐はずっと様子が違った。
    普段より艶のある、愁いを帯びた、湾曲な比喩を避ければ動作が遅くて、言動すら緩慢だった。
    月ぴ~に言わせれば「今日のナルはぬるぬるしてるな」だそうだ。隣に立っていたス~ちゃんは笑いを堪えていた。
    思い当たる事と言えば、いつもより口元がすこし茶色めいていた事くらい。

    緩慢でぬるぬるな人物は「魔法ね」と言いながらくるりと回った。黒くて四角いケースを手にしている。
    金色の淵のついた紅い紅いクレパス。どうやら俺に似合うヤツを見つけたらしい。
    ギシギシのパイプに俺は座らされて、鏡と対面する。見慣れたいつもの自分の顔。可愛い。
    「もちろん魔法はかかるわ。今日はね、落ち着いた大人のイメージでメイクをしたの。だからアタシは今日は落ち着いた大人の鳴上嵐なワケ」
    はぁ、とあまりにも適当な魔法論に苦笑いした。可愛いけど閉じて、と口を噤まされる。
    彼はいくつかのリップブラシを手慣れた様子で持ち替えて、暖かい手で俺の顔を捉えた。
    さっきの紅いヤツとは違う、何かを塗られていく。多分下地とか、そういうやつかな。
    凛月ちゃんはブルベ冬だから~等と謎の呪文を唱えてはきらめいたパッケージを転がすその姿が可愛らしかった。

    アイドルだし、メイクをされるなんて別段珍しくもないけれど。
    強いて言うなら俺はリップを塗られる瞬間が一番好きだった。
    自分の口元より明るい紅が、じんわりと顔色を変える。リップブラシの細かい毛先が口先を撫でているようで心地いい。
    その後、すっかり忘れて唇を舐めてしまう事が大半だが。味は苦くて好きじゃない。
    舐めなければいいのに、といつも怒られるが、これは子供の頃からの癖だから治らない。

    (そう、じゃあ魔法がかかるとすれば、俺はこの後何に変わるんだろう)
    人の好きなものを尋ねるのは、あまりにも容易だ。相手は喜ぶし、いくらでも話してくれる。
    自分のことを話すのがあまり得意じゃない俺にとって、一番得意な会話術だった。
    現にナッちゃんはとても上機嫌で俺の顔を撫でまわしている。コミュニケーションとしては上々だ。
    そういう狙いを持った会話だと、そう思っていた。
    が、微妙に違和感が消えない。
    なんでこんなこと言ったんだろう。
    自分の中に何か見ないようにしている事があるような。そんな気がした。

    「ああ、でもそうね」
    そんな表情を察してか、ナッちゃんはふいに立ち上がって俺の口を優しく拭った。
    え、今どんな色が塗られてたかちゃんとみてないんだけど・・・。
    困惑しきる前に、彼は端正な顔でまっすぐ俺を見た。綺麗な表情だ、と思った。
    俺は知っている。綺麗な顔のヤツが綺麗な表情をする時は、大抵碌な事を言わない。

    「凛月ちゃんはどんな自分になりたいの?」
    「は?」
    「魔法をかけたいって事でしょ?自分に」

    どんな?自分に?
    相手の趣味を尋ねていたはずが、自分のことを聞かれて動揺した。
    一体全体突然なんの話だというのか。
    別に俺は、俺の事が好きだし。今の俺の事を、誰よりも肯定しているつもりだし。多分。
    春から頑張って、既に充分なりたい自分になったはずだった。
    「変わった」って、ま~くんだってセッちゃんだって俺に言った。
    そう、だから、変わりたいなんて今更、どこかの誰かじゃあるまいし。
    向かい合わせた鏡の俺と、目が合った。何かがずっと、足りないような顔をして。

    「・・・愛されるような、俺になりたい」
    心のどこにも見つからない言葉が漏れ出でる。思わず首を垂れた。
    心のどこにも見つからなくても、自分の口から出た言葉だ。誰よりも意味を理解した。
    俯いているから、顔は見えないけれど。ナッちゃんがどんな顔をしているか手に取るようにわかった。
    それなりに長い付き合いだ。こういう時にナッちゃんが茶化したりしないことをよく知っている。
    誰に?なんて、いっそ茶化してくれたらいいのに。言葉の真実なんて、誰にも伝わらなくていいのに。

    優しい掌が俺の事を撫でた。ナッちゃんはこれを言うと怒るけれど、俺より大きくて安心感のある手だ。
    「ふふ、凛月ちゃん、魔法は本当にかかるのよ。
     誰もが祈りを信じれば、それは魔法に足り得るの。
     だから大丈夫よ、きっと凛月ちゃんが愛されたい誰かは、必ず凛月ちゃんを愛してくれるわ」
    俺にはその言葉こそが魔法のように聞こえていた。
    或いは、タチの悪い催眠術か。
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