「わし様とシュードラの少年」古代インドさっぱり分からないけど、妄想するの楽し〜!!
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ドローナ教室はクル族全体に教えていたそうなので、ある時、シュードラの少年を垣間見たわし様。
彼がもぐもぐと美味しそうに立ち食いしている団子に興味を示して話しかける。
「それ、うまそうだな」
突然クシャトリヤに話しかけられた少年は平伏して。これは露店で買ったものでクシャトリヤが食べるものではない(古代インドでは給仕をした者の身分が食べるものより低いと食べるものが穢される)と訴えるが、まあわし様が聞くわけがない。
わし様はおまえの食べている分を奪ったりしないから、その露店へ連れて行けと強請る。
止めようにもこの王子様すでにお付きの者を巻いてきているのである。(でないとシュードラと直接会話することなんてありえない)
そんなクシャトリヤとしての姿では露天に連れて行けないと訴えれば、わし様は近くの川でごろごろ転がって泥だらけになり、これでクシャトリヤに見えないだろう!と満足そうにするし。
お金をお持ちでは無いですよね?(王子様は個人の財布など持たない)と訴えれば、細工のついた指輪を外して、これで足りるだろ?と言う。
多すぎです!と泣いて訴えて服の飾りで妥協してもらって、自分の手持ちと換金したが。よく考えなくても貰い過ぎでは?少年は訝しんだ。
連れて行け、連れて行けと強請られて、これがバレたら一族みんな連座で死ぬな…団子を食べていただけなのに。と鬱々とわし様を露店に連れて行く少年。
テンションあがりまくりで大騒ぎするわし様、泥だらけの子供がまさかクシャトリヤだとは思わず雑に会話する露店の店主に胃液吐きそうになりながら団子を買う少年。
それを見ていたわし様がわし様もするー!とさっき換金したお金で団子をふたつ買ったので、団子は合計よっつになった。
どう考えてもクシャトリヤの舌に合わない団子。余ったら家に持って帰ろう。これが最後の食事かぁ、と遠い目をした少年の横で、わし様は躊躇なく団子にかぶりついた。
「!、!??」
「…不味いだろ、吐き出していいぞ」
どうせ死ぬなら敬語なんて使わなくていいやーな少年の言葉にわし様は団子をゴクリと飲み込んだ。
「……おもしろい味がする」
「だろうな」
疲れ果てた少年に構わず、わし様は目を輝かせて店主を見た。
「こんな味は初めてだ!!素晴らしいな!褒めてやる」
子供の戯言に店主が笑ってひとつおまけしてくれたのを、わし様は嬉しそうに頬張ります。
「こんな味、食べたことなーい!」
キャッキャと本心から喜んでいる様子のわし様に少年は呆然とします。
「うまいのか?」
「いや、不味い」
「不味いのかよ!!」
思わずつっこんだ少年にわし様は笑います。
「味は確かに不味いが。…こうやっておまえ達と同じものを食べているのが楽しいのだ」
シュードラと同じものを食べて楽しいというクシャトリヤが他にいるでしょうか。
少年の脳が焼かれた瞬間でした。
その後、わし様を無事に連れ帰った少年は、なんやかんやいいつつもわし様に仕えることになります。
他の家臣にシュードラだと馬鹿にされても、わし様がたまに団子などを強請るのでこっそり差し入れをしたりしました。
カルナが来た時は、口数少ないスータとクシャトリヤのわし様の橋渡しもしました。
クルクシェートラの戦いにはシュードラなのでついていけませんでした。
馴染みの露店の店主が最近買っていかなくなったな、と言うのに彼は力なく微笑みます。
もう王宮には入れません。差し入れをする人はいないのだから。