妄想「某地下通路を突破するカウラヴァ一行」「6番まで来たか」
怪しい特異点無限地下通路に閉じ込められていたカウラヴァ一行。
やっとだと疲れたようにドゥリーヨダナがつぶやくと、アシュヴァッターマンがその背中を手を置きます。
「あと少しだ。旦那」
「そうだな」
そう言って、すたすたと歩き出すカルナをドゥリーヨダナさんは追いかけます。
「まてまてカルナぁ!また変なエネミーが出たらどうする!!」
突如現れたエネミーをカルナが攻撃したせいで初めからやり直しになったのをドゥリーヨダナは忘れていません。
あの時は5番まで進んでいたのに、それまでの苦労が水の泡になったのです。
攻撃といえば、アシュヴァッターマンは意外にも異変に攻撃せず、よたよたとしか進めないドゥリーヨダナを引っ張って逃げることに専念していました。
今も意味なく壁にぶつかって進むドゥリーヨダナを引き寄せています。
カルナいわく「プレイヤーが未熟なのだろう」という話でしたが、他のふたりには理解出来ませんでした。
そんな三人が案内板を過ぎて角を曲がると、飽きるほど見た通路が広がります。
ポスターとドア。昭明と黄色の誘導ブロック。白いタイルは規則正しく奥まで伸びています。
その中央。
人影が立っていました。
彼が振り返ると同時にドゥリーヨダナが叫びます。
「パーンダヴァカラーのカルナなど異変に決まっておるわ!!!」
その言葉に色の薄い髪を撫でつけ、青と白の服を纏った青年は薄く微笑みます。
くるりと、引き返そうとするドゥリーヨダナの襟首が掴まれました。
「カルナ?」
「異変ではない」
答えてカルナはそのままずるずるとドゥリーヨダナを引きずって行きます。それに驚いた顔をしたアシュヴァッターマンが続きました。
「わし様の知らないところでこんな格好をしおって!カルナの浮気者ー!!!」
叫ぶドゥリーヨダナとその後ろを着いていくアシュヴァッターマンを青と白のカルナは目元を緩めて見送ります。
3人は角を曲がり、すこし進みました。
案内板は7番になっていました。
次が最後です。
通路に入ります。白いタイルの空間にはまた人影が立っていました。
「異変だな」
一目見てドゥリーヨダナが告げます。そのまま踵を返したドゥリーヨダナさんに異変と呼ばれた青年が声を上げます。
「我が王」
ドゥリーヨダナは振り返らず、赤い髪褐色の肌の異変と目があったアシュヴァッターマンが凍りつきました。
ドゥリーヨダナは今までと逆にアシュヴァッターマンの手を引きます。
「行くぞ、我が戦士。これでクリアだ」
「我が王」
異変が再びドゥリーヨダナを呼びます。
その声色にアシュヴァッターマンの顔色がだんだんと色を帯び、そのまま真っ赤へと変わりました。
「てめぇ!!!」
言葉にならない声を叫び異変に掴みかかろうとしたアシュヴァッターマンをカルナとドゥリーヨダナが両脇から抑え込みます。
「離してくれ!旦那!!!」
「離したら脱出出来なくなるだろうが」
「無限に彷徨いたいとは俺には理解出来ない願望だ」
ずるずるずるずる後ろ向きで引きずられていくアシュヴァッターマンには、動かない異変の青年がずっとドゥリーヨダナを見つめているのが分かります。
ドゥリーヨダナの言う通り、明らかに彼は異変でした。
でも、彼はアシュヴァッターマンのひとつの姿でもあるのです。
3人は角を曲がりました。
落ち着きを取り戻したアシュヴァッターマンが自分で歩くと言ったので、3人は肩を並べて案内板を見ました。
8番でした。
通路を進みます。白いタイルの空間には誰もおらず、ポスターとドア、昭明と誘導ブロックが並んでいます。3人は通り過ぎました。
出口です。
おめでとうございます。あなたは異変を全て見破りました。