風のメノウ 前編 イチゴ飴のお代にね、お金じゃなくて、上等な矢羽根になりそうな鷹羽を渡していったお兄ちゃんがいたんだよと、屋台の店番を手伝っていた緑羽のリトの少女が言った。
それはきっと祖先の霊が風の化身となってお祭りを見に来たのでしょうと、父親の吟遊詩人は微笑んで、勇ましげな曲で手風琴を鳴らした。
◇
天変地異から一年が経った春は、リトの村を瞬く間に過ぎ去った。
「おみず流すよー!」
弾む声と共に頭上から落ちてくる水飛沫を、チューリはぶるりと大きく頭を振って払った。撥水性の高い羽毛から滑り飛んだ水飛沫が、あちこちの緑の若葉にまで乗っかって、ここにだけ雨が降ったみたい。あちこち隙間に潜り込んでホコリだらけにヨレていた羽毛が、しゃっきりと引き締まる思いがした。
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