三時のおやつ・
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「ご馳走様でした」
「ゴチソウサマデシタ!」
スピーカーから軽やかな音楽が流れるここはワンダーランドのセカイ、金髪の少年が作り出した摩訶不思議なワールド。ここに最初に生まれた、紺色のコートを身に纏うKAITOは手に持っていた箸を置いては、ポケットからハンカチを取り出し、自分と、うさぎのぬいぐるみの口元を拭う。
「シミニ、ナラナイ?」
「大丈夫、綺麗になったよ。確か、リンとレンと練習する約束をしていたね。そろそろ時間じゃないかな?」
「ホントダ! ボク、イッテクル! オイシイアイス、アリガトウ、KAITO!」
ぬいぐるみは急いで花壇から飛び降り、KAITOーーもう一人のKAITOーーに礼を言っては小さい歩幅でパタパタ走っていく。
「はーいどういたしまして〜!」
にこにこと手を振るKAITOは、白ベースにビビットな赤と青がスタイリッシュにデザインされたTシャツを着ている。
「二人っきりになったね、KAITO!」
「っ、にやにやしないで。それより、今日もcrase cafeのアイスの試食をさせてくれてありがとう、美味しかったよ! そっちのMEIKOにも宜しく伝えてくれるかい」
アイスクリームが入っていたケースは蓋をされて、元の持ち主の手へ戻る。
「うんうん! ボクもこの味気に入ってるから、そう言ってもらえて嬉しいよ! これなら新作として出しても大丈夫そうだね! あっ」
「? どうかしたかい… っ!」
言葉が終わらないうちに、ケースを受け取ったKAITOが立ち上がる。その理由を掴めないまま視野に影を作られ、ようやく理解が追いついたのは、右頬に落とされたちゅっという小さいリップ音が耳に入った頃だった。
「っ!!」
時は既に遅し、と言うけれど、それでも反射でキスされた所に思わず手をつけた。
「ついてたよ、アイス」
「お、しえてくれたら、ハンカチで拭けるから……!!」
周りにぬいぐるみやミクたち、もしくはセカイの持ち主の子たちがいないかきょろきょろ見回りながら、真っ赤になったKAITOはそのまま手のひらを外に向けては顔を隠した。
「へへ、折角のチャンスをハンカチに渡したくないから教えなかったんだよね〜 それじゃあボクはストリートに戻るから、また今度ね、KAITO」
「……っ 今度来る時は事前に連絡して」
どこからともなくワープ通路を空中に出したKAITOはそれを聞き、入れかけた足を引いた。
「連絡したら、KAITOの部屋に行かせてくれる?」
「……そのつもり、だよ」
「わかった!! 絶対連絡するよ!」
じゃあね〜! と満面の笑顔で手を振りながら通路に飲まれるKAITOを見送り、「座長」に戻れるよう、頬をぱっぱっと軽く二回叩いた。
「……ん……まだ熱いかな……」
生憎、それでも頬の熱は引かなかったので、メインステージに座長が戻るのは、もう数分先のこととなった。