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    kira2starlb1

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    kira2starlb1

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    そのうち好き要素全部詰め込んだヴァイ墓になる予定
    途中で晒さないとダメだやっぱ(呆れ)
    今後何が出てくるかわからない以上今書かないとやばいのはわかってる

    ふかいふかいもりのおく。
    それは大きな山の迷い込んだ道の先にある木々で生い茂った暗くて静かな自然の優しさ。
    ふらふらとした足取りで前へ、前へと進んでいく。
    服のあちこちを枝に引っ掛け、髪の毛に葉をくっつけ、切り傷まみれの男は木漏れ日の中の小さな小屋にようやく辿り着いたのだった。
    しかし慌ててはいけない。
    トントン、誰かいますか、と礼儀を欠かさずに声をかける━…

    「………ぁ…」

    思わず漏れた恍惚とした安堵の溜息から抜け落ちるように、男はそのまま地面へと崩れ落ちる。
    ドアを開けた家主は男に少しばかりの関心を寄せ…おい、と声をかけた。

    「人間が、何故こんな所に?」

    「呼んで…いたからだ、木々が…自然が、私を…」

    痩せ細った体、怪しい呂律、力をなくしていく四肢に…そして、小さく光を宿したその瞳を見て彼が病気であることを、家主は一目で見抜いた。
    大きくため息を一つだけついて、男をひょいと担ぎ上げる。
    そしてそのまま家の中へと迎え入れ…ドアは、閉められた。
    そしてそのあと一陣の風が吹いた、物語の始まりを告げるように。





    男が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった…と、与太話にはよくある光景に思わず目を見開く。
    慌てて起きあがろうとしたその体は大きく軋み、体のあちこちが悲鳴を上げ凄まじい痛みが走る。
    思わず呻くと、何かに気づいたかのような足音がコツ、コツ、と近寄ってきた。
    窓の外は深い夜が訪れているようで、安易な恐怖が身を包む。
    その音に酷く恐怖を抱き、音の方向から目が離せない。

    死刑宣告のように近づくその音の持ち主は…比較的身長の高い、人間であった。

    「起きたか」

    まともに手入れもされていないような無造作に伸び、邪魔になったから切ったかのような不揃いの髪の毛、酷く曲がった背中、痩せこけた体にギョロリと髪の間から覗く不気味に赤い瞳。
    ボロ切れを纏ったかのように服とも呼べないような、布。
    人間と言うには、あまりにも全てが整っていなかった。
    けれど、不思議と恐ろしいとは思わなかったのは敵意が見えなかったからだろうか?

    「死んでいないようで、残念だ」

    皮肉に微笑む口元はずいぶん長いこと笑っていなかったのだろう、引き攣っていた。
    思わずぽかん、とその顔を見つめる。
    そして、自分の口端を指でぐい、と押し上げてみると…目の前の男は意図に気付いたのか慌てて口元を押さえた。

    「笑うな」

    「いや…笑ってなどいないが」

    「…笑えてすらいないのか、僕は」

    随分と幼い口調だと思った。
    見た目に合わない、と言うべきだろうか。
    御伽話に出てくる化け物のような外見をしておきながら、笑顔について真剣に悩む姿を見せるこの男は何者なのだろう。
    彼を見つめる瞳は、その奥を覗いてみたくなった。

    「私は何故ここに?」

    笑顔の練習をする男に問いを投げかける。

    「今にも死にそうなお前がここを訪ねてきた、それだけの話だ。…はぁ、僕の仕事を増やす気か?」

    そう言い残すと、彼は踵を返して灯りのついた部屋に戻ろうとした。
    まだ聞きたいことがたくさんあるというのに。
    痛む体を無理やり引き伸ばすかのように手を伸ばし、喉から声を出す。

    「待ってくれ!」

    体の向きは変えず、そのままに。
    隠れていない瞳が、顔が、こちらを向いた。

    「あ……そうだな、私は…いつまでここにいられるだろうか?」

    すると、赤い瞳は大きく見開かれ…心底呆れたかのように細められた。

    「好きにしたらいい」

    何故だかその言葉にひどく安堵してしまって、全身の力が抜けていく。
    存外ふかふかなベッドに体を預け、痛みながらも脱力していく四肢に神経を委ね…ふ、と意識を手放した。
    いつの話だったか、ずっと昔にもこういったことがあったような…と幼少期の記憶が思い出されそうになったのを、脳の奥深くが咎めるかのように眠りに落ちる。

    そしてその安らかとは言えない、苦悶に満ちたかのように眉間に皺を寄せた寝顔を眺めるものが、ここに一人。

    触れるわけでもなく、心配するわけでもなく、ただ夜が明けるまでじっ…と見つめるその存在の柔らかな赤を孕んだ眼差しはまるで子供のようであった。
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