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    ネオン(どシコりシコ太郎)

    @neon_ug

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    ここをFGOの帝都騎殺/龍以のえっちな作文とか絵とかを格納するキャンプ地とする🏕️すけべな人だけ通りなさい

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    ・カルデア時空のリョイ
    ・坂本が指フェラをするというお題だったがどうしてこうなった?

    #帝都騎殺
    #龍以
    dragonTo

    透明なゆびさき男の背を見るのが好きだった。
    いまとなっては職業柄、不用意に他者に背後を取らせない彼の、長着だけを纏う背筋。
    カルデアベース内、食堂敷設のキッチンとは違う、ちいさな給湯室。その片隅で規則正しく動く腕がぴたりと止まるまで、坂本龍馬はその背中を飽かず、眺めていた。

    「以蔵さんやか。こんな時間にどうしたの」
    「…………おまんか」

    男は振り向きもせずに答える。いつもより低い位置、首の後ろでひとつにまとめた癖毛が項をすっかり隠してしまっている。

    「気安ぅ声かけなや」
    「そう言わないでよ。丑三つ時に人影があったら気になるだろ」

    以蔵の腕は、止まったままだ。龍馬は音もなく歩を進め、その隣に並んだ。

    「……どうも眠れんち思うて」

    この幼馴染に掴まれば最後、拒絶が意味を為さないことを知っている。以蔵は隣に立つ男に一瞥もくれず、自分の両手、ついさっきまで刀の代わりに包丁を握っていたそれを、じっと眼差していた。

    「なんぞ酒とつまみでも……」

    言葉がとろとろと、ゆるく、無機質な色で流れる。龍馬がその視線の先を見れば、左手の人差し指、爪の横辺りにひとすじ、赤い亀裂が入っていた。

    「あれま、ゆび、切っちゃったのかい」
    「おん……」

    この偽物の肉体はなかなか使い勝手が良いと、以蔵は思っていた。存在を繋ぐためにやらねばならぬことはほとんどない。余分なことをする分には問題ない。まさしく、都合のいい身体。

    「…………」

    その身体から、灼々とこぼれ落ちる赤い雫が指を伝う。鈍い痛み。
    体内を巡る血液のようなものも、この痛みも、本来このエーテルで編まれた不出来な傀儡には不要なものではないのだろうか?
    その一点だけは、未だに以蔵の腑には落ちなかった。

    「痛むの?」
    「いや……ん……ちっくと、ばぁじゃ」

    質問の答えを耳に入れる前に、龍馬は以蔵の左手を取っていた。
    いつか外つ国の騎士が姫君にしてみせたような、相手に最大の敬意を払うときの仕草で、無骨な男の手に触れる。そして中指から小指までをきゅうと握りこんで、まっすぐ伸ばしたままの人差し指に引かれた赤に、恭しく舌を押し付けた。

    「…………」

    常には声をかけられることすら厭う素振りをする男は、なぜか呆けたように唇を薄く開いて、何の言葉も吐き出せずに立ち尽くす。やっと正面に見た幼馴染が、自分とおなじ長着一枚に黒髪を下ろして、昔のようないでたちでそこにいたからだろうか。それとも他の――ああ、赤い。
    自らの流した血液擬きなぞ比べ物にならないほどの、真っ赤な、生きた粘膜。
    それが、自分の指に押し当てられていると認識した瞬間、以蔵は軽い眩暈を覚えた。

    「…………」

    傷口から皮膚をはだけるように蠢く舌が、熱い。
    痛いと思ったのはほんの一瞬だけで、指を食む唇の柔らかさ、中に侵入はいりこもうとする執拗な肉の微動にぼんやりと思考が霞む。

    「おい……」

    こんなわずかな血潮では魔力の足しになるはずもない。美貌の宝具ならまだしも、この男が傷口を舐めてそれがすぐに塞がるわけでもない。

    「…………」

    この行為には、恐ろしいほど意味がない。
    それなのに、以蔵はその指を握る手を、吸いつく唇を、とめることができない。

    「龍馬……」

    名を呼ばれて、漸く男は落としていた瞼を持ち上げた。色気のない蛍光灯に照らされて、黒々と光る瞳がまっすぐに以蔵を射る。
    透明無色、無味無臭、人間のかたちをした、人間ではないもの。
    それが、ぱくりと大きく口を開く。そして以蔵の人差し指を静かに、その中に迎え入れた。

    「…………」

    先程までぬるぬると這いまわっていた舌の、真ん中あたりに指の腹で圧をかける。脱力した肉がふわ、と質の良い布団のように柔らかく反発し、従順に異物を包み込む。
    ――色の無い男の、口の中が温かいのが、不思議だった。
    以蔵は指をすっかり咥えられながら、その熱のことを考える。
    あつい。
    触れた粘膜のすべてがじんわりと時間をかけて、膚を浸食していく。
    この男にも、血も涙もないようなこの幼馴染にも、もしかすると自分と同じ、赤い血のようななにかが流れているのだろうか。
    それならば、喉元を掻き切って見てみたい。
    この男の流す赤い赤い、流体を。
    確かめてみたい。
    濡れる喉元の灼けるようなあつさを。
    以蔵が眩む視界にそんなことを思っていると、不意に龍馬のくちびるが抱きしめていた指を開放した。

    「もう、いたくない?」

    男が、指とくちびるを繋いでいた銀糸の、とろりと顎に滴るのを気にせず聖人みたいに笑う。

    「はあ?」
    「昔よく、以蔵さんがしてくれただろ」
    「むかし?」
    「おーの、忘れてしもうたかえ」

    じい、と覗き込む瞳の奥は真っ暗で、やはり見ることがかなわない。

    「……そがなん、サーヴァントちゅうもんには、要らん記録なんじゃろ」
    「ふふ」
    「あん? わやにしちゅうと、斬ってまうぞ」

    以蔵が右手にするりと携えた包丁を音もなく、容赦なく、長着から覗く龍馬の首筋にぴたりと宛行う。

    「良いよ、それで以蔵さんの気が済むなら」
    「はあ?」
    「以蔵さんは」

    極めて嬉しそうに破顔した男は、軽く会釈でもするような気安さでもって、その刃を自分から受け入れた。

    「わしを斬るのが、しょうまっこと好きやきなあ?」
    「…………」

    切れ味の悪い据え付けの包丁でも、その首筋の皮いちまいをうすく裂くこと程度は出来るらしい。
    ――ああ、赤い。
    傷口からこぼれた体液は、もったりと重力に従って鎖骨を濡らす。

    「以蔵さん」

    名前を呼ばれるだけで、なにをしなければならないのかがはっきりとわかる。
    以蔵は力が抜けて、刃を取り落とした手を男の肩口に乗せると、そっとその燃える首筋に、震える舌を這わせた。

    [了]
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