今日も今日とて、明日さえもその体は幼かった。
女性としての丸みは不完全で、形取りは固い青々した蕾のよう。
それでも鳴柱の劣情を煽るには十分であった。小さな膨らみに手をやれば、甘ったるい声で春雷のように鳴く。春情を嫌がるように、誘うように。
いったい誰が彼女にこんなことを教えたのだろうか。そして自分はどこでこのように女性に触れることを学んだのだろうか。
「気持ちい……?」
「き、きかないで…ぁん…」
その顔をみれば欲情に溺れているのは分かるだろうが、それでも聞きたくなるのは何故だろう。
もう一度問えば、うなずいてくれる従順さに、合間の嬌声がたまらない。
二人にはこういった手段でしかお互いを分かり合うことが出来なかった。柱になった鬼狩りの少年と、彼が狩る鬼から人へ戻った少女。
どんなに愛して、言の葉を重ねて視線と視線を重ねても、それだけでは物足りなくなる。
心変わりを疑心することはない。だが、このような状況ではこうやって実感しあえるのは肉体的快楽のみだ。
「生きてて良かった」の一言より、熱く交わされた口付けのほうが雄弁に感情を物語る。
想いを乗せて彼女の唇を奪う。慣れたもので柔らかな舌の淫靡な食感に酔う。
「……ん!」
彼女の弱く、恥ずかしいところに触れる。
眉根は寄せられているが、その足は閉じられることはない。かといって開くわけでもなかった。ごくまれにその足が淫らに開くときもある。ごくまれなそれに、善逸は充実感を覚えていた。
欲に溺れ、我を忘れる禰豆子。
清純そうに見える──事実、おぼこではなくなったがいつまでも清純である──彼女は、彼の下では女になる。
善逸はそれが不思議でならなかった。蝶屋敷で三人娘と明るく話す彼女と鳴屋敷にひとり忍んでやってくる彼女はまるで別人のよう。
鳴屋敷以外で二人きりになったとしてもそんな雰囲気にはならないのに。それが屋敷に一歩踏み入れると一転する。
それを禰豆子に指摘したことはないが、それを言うのなら善逸とて同じだ。
寝所の褥で、性急に荒々しく彼女の体を蹂躙する自分と、平隊士の前で刀をひっさげている自分と、同期と一緒にいる時の自分はどうしても一致しなかった。可笑しなことに鬼が目前にいたときの方が、今の自分に近しとさえ思っていた。
禰豆子が鳴屋敷に出向くのは、禰豆子を屋敷に招くのは毎日ではない。
なんとなく、人気のないところで落ち合って口づけを一度でも交わすと、どちらともなく。
ただ確実に禰豆子を屋敷へ呼び寄せる時があった。
それは任務に出向く夕方と、帰還した早朝。この二つ。しかし、朝夕には差異があった。
夕方の行為は荒々しく、回数をこなす。早朝は朝の帳と蹴飛ばさないようゆっくり情熱的に時間をかける。
こんないい加減な関係をいつまでも続けていられない。だけども、籍を入れてしまえば彼女は我妻禰豆子になってしまう。
蝶屋敷の片隅で、今はまだ日柱の妹として生きていなくてはならない禰豆子に鳴柱は静かに口づけた。