マリアンヌは歌わない「祖国は歌がお好きなんですね」
そう言ってくれたのは誰だったか。遠い遠い、誰も知らない自分と彼女だけの[[rb:歴史 > きおく]]。
「そんなんじゃないよ。だって人間が歌うから、生き写しの俺も歌うだけさ」
「そうなんですか?でも、私の目には祖国が楽しそうに歌をうたっているように見えました」
そんなことを言われたから、そんな風に見える?と笑ったのだったっけ。
所詮、自分たちは人の形をした紛い物だ。だけどそんな『俺』を、まるで一人の人間のように扱う娘に、体中にほんのり血潮が回っていくのを感じたのだ。彼女の存在が、己を己たらしめる。
「祖国は私の知らない歌をたくさん知っておられるのですね。宮廷では、そのような歌が流行っているのですか?」
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