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    shakota_sangatu

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    shakota_sangatu

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    吸血鬼の能力により30年後に飛ばされた若ロナが30年後ドラと以下略のBパート。
    吸血鬼の能力により30年後からやってきたロナとドラとその後のお仕置き

    #ドラロナ
    drarona

    吸血鬼の能力により30年後からやってきたロナとドラと以下略 それは、あまりに雑すぎる導入であった。

    「フハハハハ、私の名は吸血鬼タイムトラベル、私の能力は、」
    「ソォイ!!!」
    「ぐはっっっっ!!!!」

     口上を述べている吸血鬼を殴り飛ばした、ロナルドの姿を極彩色の光に包まれる。
     吸血鬼が発光しているのだと解った瞬間、時計の秒針が進む忙しい音が周囲を包む。吸血鬼のなんらかの能力が発動したのだと、高等吸血鬼であるドラルクにとっては、その事実だけを知ることは容易かった。
     ただ、対処できたかと言えば、それは無理な話で。
     眩むという言葉に相応しい眩しさ、光の瀑布にドラルクは思わず目を瞑ってしまう。

     カチン。

     時計の針が進む、無機質な音が鼓膜を強請る。
     同時に襲ってきた産毛が逆立つような不快さは、フクマによって亜空間に引きずり込まれる感覚に近い。
     光線の前に手を翳して、なんとか目を開けたドラルクが見たものは、輪郭を失っていく赤い背中だった。

    「ロナルド!」

     ──、聞こえたのは、退治人たちの動揺。

    「ロナルド君!!」

     ──、それら続いて、吸血鬼もまた彼の名を呼び。

     カチリ。


     ──、返答は、帰っては来ない。
     何処からともなく聞こえる、忙しない秒針の音と。光の渦に包まれて、──、ロナルドの身体は、ずるりと、【 】に飲まれた。
     ゾ──、ッと、ドラルクの背筋が凍りつく。
     消えたと、そう感じたのだ……。【 】にロナルドが飲まれた時、ドラルクはロナルドが失われたとそう感じてしまった。──、あとあと振り返れば、実際にロナルドはドラルクの手の届かない場所へと旅経っていたのだから。そう感じたのも、嘘では無かったのだけれど。
     この時のドラルクは、ただただ呆然と立ち尽くし……。光と音が、周囲を晦ませた。

     カチカチ、カチカチカチ、カチカチカチカチ……。

     カチカチ、カチカチカチ、カチカチ……。

     カチカチ、カチカチカチ……。

     カチカチ。

     ───、カチリ。

     時計の針が、遠ざかっていく……。自分を中心に漂う百個以上の時計が、だんだん散り散りになって消えていくようなそんな感覚。
     世界を包み込んだ奇妙な感覚が人々に齎した若干の沈黙、目が眩み三半規管がうねる感覚に眩暈すらしていた人々が、唯一共有していた感覚は『目を開けてはいけない』というモノ。
     目を開けてしまえば、何か人知を超えたモノと目を合わせてしまいそうな。それと見つめ合ったが最後、何らかの世界の均衡を崩してしまう。そんな、奇妙な危機感を共有した人々はじっと目を瞑る。
     そうして……、時計の音が止み。吹き抜ける風が肌を撫でる、そんな正常な感覚を肌が感じた時に。──、声がしたのだ。
    「────、んぁ、なんだこれ?」
     不思議そうな男の声は、耳に馴染む低い響き……。良く知っている声でありながら、知らない誰かの声でもある。
     それは、ロナルドでありながら、ロナルドの声ではないモノ。
     奇妙な感覚に、その場に居た人々はゆっくりと目を開ける。眩んで、光が明滅していた視界の中で、知っているような、知らないような誰かのシルエットが浮かび上がる。
     屈強な男のボディライン……、その人物は、赤い外套を身に纏っていた。
     意志の強そうな形のいい眉、短く切られた銀の髪。
     目元に皺のある彫の深い顔立ちと、鮮やかなアクアマリンの眼差し。
     男ならば憧れる、厚みのある均整の取れた屈強な身体。
     エロチズムとダンディズムを内包した、魅力ある年嵩の男。──、これ以上ない表現で賛辞を述べてなお、僅かに放つ色香に思わず頬が染まる……。
     そんな男が、立っていた。
     ──、ロナルドは何処に行ったのか、この男がいったい誰なのか。
     知っているようで知らない、彼が誰か、問うまでも無かった。
    「あ──、みんな、若い?」
     その声を聞いて、疑う者はいない。
     突然の事態に巻き込まれて、自分達の前に現れていながらも。すぐに落ち着きを取り戻して、興味深そうに自分を取り囲む面々を眺める。
     これもまた、ロナルドであると。
     故に思う──、吸血鬼の能力により、今と未来のロナルドが入れ替わったのだ。
     そう、断定したのは、本人も同じだった。
    「──、───、はっ、そういうことかよ」
     彼は自分の顔面宝具レベルを分かりきっている、とても様になった麗しい形でにやりと笑う。──、そうして。
     次の瞬間、彼はドラルクの前に居た。
     残像を残し、ドラルクと触れ合いそうなほど近くに現れた未来のロナルドは。呆気にとられたドラルクに両手を伸ばして、華奢な身体をそっと抱き寄せる。
    「よぉ、ダーリン!!」
    「んなっ、」
     周囲からすればバレバレだが、交際を周りに知られないようにしていたのに。そんな努力を無に帰すように、未来のロナルドは愛しさを煮溶かした柔らかな声でドラルクを呼び。
     その身体を砂にさせることなく、ドラルクを両手で姫抱きにすると。
     呆気にとられたメンバーに、にへらっと笑いかけた。
    「じゃっ」
     そう言って、残像を残してその場から走り去る……。何か文句を言っているドラルクと、楽しそうな笑顔のロナルドを見送りながら。
     新横浜の愉快なメンバーは、その異常事態もまた、いつものことと割り切って。気絶した吸血鬼を回収し、めいめい散り散りになっていく。
     まぁ、なんとかなるだろう、誰かがそう呟いた。

     ──、馬に蹴られたくなかった、というのもまた、事実である。








     事務所へとたどり着いたロナルドは、やはり優しい手つきでドラルクを床に下ろした。どうすればドラルクが死なないか、知り尽くしている所作に、未来ではドラルクの方が受け身をしているのかと疑いたくもなったが。
    「ダーリン」
     ドラルクの肩に両手を絡ませ、まるで猫のようにゴロゴロと懐いてくる男は、自分の雌なのだという妙な確信があった。
     言うなれば、吸血鬼に、身も心も捧げた贄……。そんな物騒で、仄暗い感覚が喉に溜まり、思わずごくりと音を鳴らす。
     その音を聞いたロナルドの、青い目が愉しそうに笑った。
    「なぁ、──、ドラ公」
    「……、なんだね、」
     こてりと小首を傾げる、あざとい仕草は狙ってやっているのだろう。ロナルドが放つエロチックな雰囲気に呑まれそうになりながら返事を擦れば、年嵩の男はくつくつと喉を鳴らしながら片手でドラルクの顎を擽って。
    「ジョンは、町内会?」
    「……、ああ、」
    「デメキンは、住居スペースの方?」
    「そうだよ」
    「じゃあ、動かさなきゃな」
     ドラルクが何をしたいのか、分かり切った顔で男はそう言って。呆気にとられたドラルクをそのままに、扉を開けると水槽を抱えて戻ってくる。デメキンは、未来のロナルドに驚いた様子だったが、ドラルクの顔を見ると全てを察したように諦めて泡を吐いた。
     テーブルに水槽を置いたロナルドが、ドラルクの腕を引く……。そこは、今のロナルドとドラルクの城であるのに、未来のロナルドがいるだけで、まるで未知の空間のようになってしまっている……。不快感はない、あるのはやはり、雌が自分の為に場を整えたという優越感……。
    「ふはっ、」
     ドラルクを引き寄せながら、未来のロナルドは吹き出すように笑う。
    「悦い顔」
     番に対する独占欲、そんな感情が鎌首を擡げて……。気づけば、ドラルクはケダモノのような顔をしていた。
     牙を覗かせて、くるるっと喉を鳴らす……、糧を求める猛禽の顔になった男の顔に触れながら、ロナルドは心底から至福だといわんばかりの、甘く蕩けるような表情で吸血鬼を愛でる。
    「可愛いなぁ、ドラルク……、」
     それはまるで、赦しのベル……。一線を越えることを認め、内へと招き入れる導きの徴。
     腕の中へと招き入れられた魔性は、銀髪の男がそっと差し出した首筋に噛みついた。
     その筋肉質で、柔らかな肉に牙を埋めて、染み出した血をちろちろと舐める……。吸血鬼を、男は愛おしそうに抱きしめながら、くふくふと噛み殺すように笑い。
    「俺の男は──、こんなに、可愛かったんだなぁ」
     囁きには、愉悦の響きがあった。まるで、赤子をあやすようにドラルクの背中を撫でる仕草は、そこらの女よりもずっと淫靡で、甘やかすことに慣れているようだった。
     我を忘れて、必死に血を貪る吸血鬼に、ロナルドは何処までも慈しむ手つきで。髪を撫で、首筋を擽り、背中を揺すって……。
    「んっ、」
     ドラルクが牙をより深く突き立てた時だけ、彼は少しだけ甘い声で鳴いた。
    「おいおいダーリン、求めすぎだぜ」
     それでも笑いながら、未来のロナルドは成すがままにさせていた。まるでドラルクを満足させたいと、なにかの埋め合わせをしようとしているかのようで。
     なにが愉しいのか、ロナルドは血を吸われながら笑っている。
    「……、……、!?───!!??」
     徐々にドラルクの息が落ち着きはじめ、その眼に理性が宿ると……、吸血鬼はロナルドに牙を埋めていた自分自身が信じられないという顔で、ぎょっと目を見開いた。
     それは、衝動に負けた自分自身への驚愕と。大人しく血を吸われた、未来の番への尽きない疑問。
     かぱっと、牙を外せば……。血の滴がたらりと唇の端から垂れる。
    「お、終わった?」
     ロナルドの言葉に、ドラルクはふるりと震え……、片手で口を押えて砂になろうとした。けれど、砂にはなれない……。美味し血の活力が、ドラルクに力を与えていたからだ。
     そのかわり、よろめくように後ろに後退した吸血鬼は。
    「なんで……、」
     青ざめた表情で、未来のロナルドに、そう問いかけたのだった。
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