Farmer's Market 青果店で緑のグリーンフラワーを手にしたその時だった。商店街の何処かに消えていったはずの師匠に手首を掴まれた。
「まさか君、ディナーにコールスローを出すのか? 」
「どうしてそうだと? これを使うならグラタンかもしれないのに」
「そのグリーンフラワーに合わせる食材は、寒がりコーンくらいしか家になかったからね」
ちっ、バレたか。なんて厄介な記憶力なんだ。今日は暑いから師匠の好みを度外視してでも、火を使わない献立にしたかったのに。
「冷たい料理で野菜をとるならアスピックはいかがかな。甘めの味付けだとさらに喜ばしい」
「アスピックだぁ? んな手間のかかる料理、徹夜と酷暑でバテバテの愛弟子に作らすモンじゃないでしょ」
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